政治・経済

東芝が原発子会社ウエスチングハウス(WEC)の減損の開示の不備を受けて釈明会見を開催した。逆風が続く中で、これまでの体制を改めるために、原発事業について詳細に情報を公開。そこから浮かび上がってきたのは、原発事業への期待と自信だった。文=本誌/村田晋一郎

原発事業の詳細情報開示64基の新規受注を目指す

 東芝の不正会計問題が終息しそうにない。構造改革から次の成長戦略の道筋をつけるべきところだが、いまだに一連の問題への対応に追われているようだ。過去の決算で開示していなかった原発子会社のウエスチングハウス(WEC)の減損が適時開示基準に該当することを指摘され、11月末に釈明会見を開くことになった。さらに一部株主が旧経営陣に損害賠償を求める訴訟を起こしたほか、東芝側からも旧経営陣に対する訴訟を起こし、一方で東京証券取引所からは過去最大規模の課徴金を課される事態となっている。

 そんな中で、WECの釈明会見をしたことから、思わぬ形で東芝のコア事業である原発事業の将来展望が明らかになった。東芝では、減損は意図したものではなく、あくまで認識の違いであることを主張。ただし、不備を認め、今回の開示に至った。その際に、「今後は従来の開示姿勢を改めて、積極的な開示に努めていく」(室町正志社長)との方針から、WECについてかなり詳細な情報開示を行った。

 具体的には、原子力事業をWECの燃料事業、サービス事業、建設事業、国内の建設事業、サービス事業に分類。それぞれに東芝がWECを買収した06年から15年上期まで売上高、営業利益、EBITDAを公表した。さらに開示の不備が指摘された12年度、13年度については減損テストの詳細数字を明らかにした。その先については14年度以降の減損テストの前提となる15~17年度の各年度の詳細予想および18~29年度の平均数字の予想を提示した。

 説明会見に訪れたマスコミ、アナリストの中には「社内資料」並の詳細な情報開示に驚く声も少なくなかった。もともと原発事業は、国家安全保障にかかわるだけに、情報開示は容易ではない。今回、東芝がこれだけの開示をしたことは、積極的な情報開示の姿勢を示すだけでなく、原発事業の有望性をアピールし、原発で稼いでいくという意気込みを示したとも言える。実際に東芝が示した将来展望は一見すると強気に映る。今後29年度までの15年間で64基の原発の新規受注獲得を目指すという。

原発の収益安定性を強調世界需要の高まりを睨む

 原発事業は新規プラントの建設が注目されがちだが、今回、東芝はプラントライフサイクルに言及した。プラントを新規建設した後に、プラントをメンテナンスしていく運転サービスがあり、並行して燃料を供給するビジネスを展開。最後は廃炉ビジネスがある。

 特に強調しているのがサービスと燃料のビジネスで、原発は建設後40~60年は稼働するため、稼働する限り運転サービスの需要は発生し、長期的な安定収入となる。また、燃料は、自社炉だけでなく他社炉にも供給。WECの軽水炉向け燃料シェアは30%だが、そのうちの20%が他社炉向けとなっている。

 廃炉ビジネスについても。初期につくった原子炉が今後廃炉を迎えるため、需要拡大が見込まれる。既に欧州を中心に受注・施工が始まっているという。

 日本では原発への否定的な意見が根強く、東芝がぶちあげた64基の受注獲得には否定的な見方もあるが、こうした見方をダニエル・ロデリック・WEC社長は一蹴。世界的には地球温暖化対策でCO2削減の観点から原発は不可欠との認識だという。ドイツは再生可能エネルギーを積極的に導入しているが、再生可能エネルギーでもCO2排出量を増加させており、ドイツの自動車メーカーが原発のない自国から、原発を利用できる米国に工場を移転している事例を紹介。長期的視点に立った上で原発の需要の伸びを強調した。

 世界では400基の新規プロジェクトがあり、現在の燃料シェアが30%であることを考えると、64基の受注獲得は不可能ではないように思える。近年、新規建設が進まない間も燃料ビジネスでのシェアを拡大し、市場における信頼を高めていると、ロデリック・WEC社長はプレゼンス拡大に自信を見せる。

 今回、開示された計画が示すのは、やはり東芝は原発で稼いでいく会社ということだ。現状で営業利益率10%以上が期待できるのも半導体のNANDフラッシュメモリと原発しかない。

 一方の半導体については、CMOSセンサー事業をソニーに売却することを決定、また白色LED事業からは撤退する。ディスクリートやロジックで人員削減を予定するなど、NANDフラッシュメモリに集中する方針だ。資金調達のため、NANDのIPO検討を匂わせたが、自社から完全に切り離すことは否定した。NANDで提携している米サンディスクが米ウエスタンデジタルに買収されるなど、NAND事業の先行きも決して安心できないが、半導体は室町社長の出身母体だけに社内のサポートへの期待からも、NANDはしばらく稼ぎ頭であり続けるのではないか。

 結局のところ、メモリと原発の2つが再建においても柱となる。不正会計に手を染めた田中久雄元社長は、就任当初この2本柱依存からの脱却を訴えていたが、現状はこの2本柱に頼らざるを得ない状況にある。この2本柱で足場を固めることが再建の第一歩だろう。

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