マネジメント

第41回の経済界大賞には澤田秀雄・エイチ・アイ・エス会長が選ばれた。観光立国を目指す日本にとって、旅行業界の果たす役割は大きい。現在は、訪日外国人観光客を誘導するエイチ・アイ・エスだが、インタビュー実施の頃は、日本人を海外へ誘うアウトバウンド主流の時代であった。(『経済界』1991年7月9日号)

エイチ・アイ・エスが驚異的に成長した理由とは

澤田秀雄(さわだ・ひでお)エイチ・アイ・エス社長(当時)〈1951~〉大阪府出身。高校卒業後、ドイツ・マインツ大学に留学。帰国後、エイチ・アイ・エスの前身であるインターナショナル・ツアーズを創業。格安航空券の販売で海外旅行を身近なものにした。近年では、ハウステンボスの経営再建に成功するなど、多方面で活躍中。

澤田秀雄(さわだ・ひでお)エイチ・アイ・エス社長(当時)〈1951~〉大阪府出身。高校卒業後、ドイツ・マインツ大学に留学。帰国後、エイチ・アイ・エスの前身であるインターナショナル・ツアーズを創業。格安航空券の販売で海外旅行を身近なものにした。近年では、ハウステンボスの経営再建に成功するなど、多方面で活躍中。

 「好きな旅行を仕事にすることができて幸せですよ」と言う澤田社長。

 かつて、澤田社長は西ドイツに留学していた。その4年の間、春休みなどを利用して通訳のアルバイトで稼ぎながら世界中をまわっていたという。その経験をいかして帰国後、知人、友人に海外旅行の案内を始めたのが今日につながっている。

 「口コミで広がりましてね、結構儲かるようになったんですよ。当時の海外旅行者数は、欧米人が旅行者全体の15%くらいを占め、日本人はまだ2、3%程度にすぎなかった。で、これはまだまだ伸びるだろうと……。それにアフリカの毛皮などを輸入する貿易業をやろうと思っていたんです。ところが、そちらは輸入禁止になりましてね」

 旅行クラブを株式会社として法人化し、旅行代理店の資格を取得して正式にスタートしたのが1980年の12月。趣味が起点になり、常に“お客さま”の立場で考えざるを得ないという原体験がベースとなっているだけに、「一般の旅行業者とはスタートの発想が違う」と言う澤田社長の言葉には説得力がある。

 ちなみに、設立後10年を経た90年10月期の売上高は235億円、社員数も430人を数える。申告所得も7億円を超えて、前年度の2倍以上に増大、業界順位も20位から8位に急浮上している。薄利多売と言われる旅行業界にあってはまさに驚異の成長力である。

 その成長のポイントを、「まずひとつは、情報ネットワークを取り入れたこと。8年前に近畿日本ツーリストに続いて業界2番目に、米国の大手航空会社のネットワークに加盟、航空券のほかホテル、レンタカーなどの予約もすべて瞬時にコンピューター処理できるようにしたんです。もうひとつは、海外への店舗展開(香港、ロサンゼルス、サンフランシスコ、ニューヨーク、ロンドン、シドニー、ゴールドコースト、パースの8支店)で、常に新鮮な情報が仕入れできるようになったこと。それで、万全なアフターケア体制を確立できた、この3点でしょうか」と語る澤田社長である。

 “旅行業者”らしくない業者が考えたことは、「第一に、企業としては顧客、社員、そして設備・内容が良くなること」、そして「時代の変化に適応したオリジナル商品の提供」だったという。学生、会社員、ファミリーなど年齢、客層の違いに合わせて個性を強調したオーダーメード商品を開発、次々とヒット商品を生み出している。その結果、ここ3、4年は売り上げも倍増の勢いで50億円、90億円、160億円、そして前述の235億円と急上昇してきた。しかし、澤田社長は「湾岸戦争でちょっと伸びは抑えられましたが、ちょうどいいチャンスです。社員のおごりも抑えられたし、反省することもできた。この機会にお客さま本位の組織固めを行い、内部の充実を図って、次へのバネにしたいと考えています」と冷静な発言をする。

 そして、最後に一言こう述べた。「もっと、旅行商品の品質・内容を良くして、利益が上がる業界にしていこう、ということを業界全体、業界各社に訴えたいですね。過当競争で、値下げとともに品質を下げていくのでは、業界の発展はあり得ません。もっと、大手企業にはリーダーシップを発揮してほしいですね」と熱弁を振るう。

 旅行業界に新風を吹き込む若きリーダーには多くの期待が集まっている。

 

【温故知新】の記事一覧はこちら

 
経済界 電子雑誌版のご購入はこちら!
雑誌の紙面がそのままタブレットやスマートフォンで読める!
電子雑誌版は毎月25日発売です
Amazon Kindleストア
楽天kobo
honto
MAGASTORE
ebookjapan
 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

銀行交渉術の裏ワザ

一覧へ

融資における金利固定化(金利スワップ)の方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

銀行交渉術の裏ワザ

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)

定期的に銀行と接触を持つ方法 ~円滑な融資のために~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)

メインバンクとの付き合い方

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)

銀行融資の裏側 ~金利引き上げの口実とその対処法~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)

融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける

元榮太一郎の企業法務教室

一覧へ

社内メールの管理方法

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

企業法務教室

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)

タカタ事件とダスキン事件に学ぶ 不祥事対応の原則

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)

ブラック企業と労災認定

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)

電話等のコミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)

女性の出産と雇用の問題

本郷孔洋の税務・会計心得帳

一覧へ

税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」

[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

税務・会計心得帳

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)

グループ法人税制の勘どころ

[連載] 税務・会計心得帳(第17回)

自己信託のススメ

[連載] 税務・会計心得帳(第16回)

税務の心得 ~所得税の節税ポイント~

[連載] 税務・会計心得帳(第15回)

税務の心得 ~固定資産税の取り戻し方~

子育てに学ぶ人材育成

一覧へ

意欲不足が気になる社員の指導法

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

子どもに学ぶ人材マネジメント

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)

子育てで重要な「言葉」とは?

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)

女性社員を上手く育成することで企業を強くする

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)

人材育成のコツ ~部下の感情とどうつきあうか~

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)

人材育成 ~“将来有望”な社員の育て方~

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次なるステージを駆け上がる日本電子「70年目の転進」–日本電子

 最先端の分析機器・理科学機器の製造・販売・開発研究等を手掛ける日本電子(JEOL)は、ノーベル賞受賞者を含むトップサイエンティストや研究機関を顧客に、世界の科学技術振興を支えてきた。足元の業績は2019年3月期で連結営業利益、同経常利益、同最終利益がいずれも過去最高を更新。かつては技術偏重による「儲からない…

独自開発のホテル基幹システムで業務効率化と顧客満足度を向上–ネットシスジャパン

逆転の発想で歴史に残る食パンを 生活に新しい食文化をもたらす–乃が美ホールディングス

新社長登場

一覧へ

森島寛晃・セレッソ大阪社長が目指すクラブ経営とは

前身のヤンマーディーゼルサッカー部を経て1993年に創設されたセレッソ大阪。その25周年にあたる2018年12月に社長に就任した森島寛晃氏は、ヤンマー時代も含めて通算28年間セレッソ一筋、「ミスターセレッソ」の愛称を持つ。今も多くのファンに愛される新社長が目指すクラブ経営とは。聞き手=島本哲平 Photo=藤…

森島寛晃・セレッソ大阪社長

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

イノベーターズ

一覧へ

非大卒就職マーケットの変革に挑む元教師の挑戦―永田謙介(スパーク社長)

日本企業の年功序列と終身雇用が崩壊に向かう中、制度を支えてきた大学生の新卒一括採用の是非もようやく議論されるようになってきた。一方、高校卒業後に就職する学生のための制度は旧態依然とし、変化の兆しがほとんど見えない。こうした現状を打ち破るべく、非大卒就職マーケットの改革に挑戦しているのがSpark(スパーク)社…

起業家にとって「志」が綺麗ごとではなく重要な理由―坂本憲彦(一般財団法人立志財団理事長)

勉強ノウハウと法律知識で企業の「働き方改革」を促進する―鬼頭政人(サイトビジット社長)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2020年5月号
[特集] 巻き込む力
  • ・高岡浩三(ネスレ日本社長兼CEO)
  • ・唐池恒二(九州旅客鉄道会長)
  • ・河野 仁(防衛大学校教授)
  • ・入山章栄(早稲田大学大学院・ビジネススクール教授)
  • ・出口治明(立命館アジア太平洋大学学長)
  • ・中竹竜二(日本ラグビーフットボール協会理事)
  • ・時代も国境も超えた普遍のリーダーシップを学べるベストブックス
[Special Interview]

 小林喜光(三菱ケミカルホールディングス会長)

 イノベーションを起こすために「人間とは何か」を問う

[NEWS REPORT]

◆零細企業でも活用できるインターネットM&A最前線

◆業界再編はあるのか 日本製鉄、巻き返しへの一手

◆技術研究所を解体してホンダは何を目指すのか

◆新型コロナウイルス治療薬 なぜ日本企業は創れないのか

[特集2]

 経営者に贈る「イロとカネの危機管理」

ページ上部へ戻る