国際

チームと年功序列を重視意思決定プロセスに納得

 第2次世界大戦後、インドと日本が戦争の傷跡から立ち上がって70年近くがたつ。日本は戦後復興に、インドは勝ち取った独立に向き合わなければならなかった。両国とも対処すべき課題がいくつもあったが、それをやり遂げた。そして両国は助け合い、この数十年で互いの結び付きを強めてきた。

 多くの日本企業がインドに進出している。両国の経済交流が増すにつれ、日本企業に対する信頼度も高まってきた。一方、インドは日本企業にとって好ましい進出先であるとの統計や調査もあるように、日本企業のインドへの期待感は大きい。日本人や日本企業はインド人が日本にどのような印象を持っているのかを知りたがっている。インド人の日本企業への好印象は次の4点に集約される。

 (1)日本人のチームワークにインド人は深い感銘を受ける。企業とは巨大なチームだ。こうしたチーム文化を、インド企業は激しい競争の中でなくしてしまったと感じている人たちもいる。インド企業の中にはチームワークに重きを置いているところもあるが、多くはない。チームワークは製品の品質にも影響する。企業内の調和を欠くインド企業の製品は品質を落としがちなのはそのためだ。日本人はチームを重要視するが、一方で年功序列の価値観も持っている。日本人は目上の者を敬い、成果があれば上司や先輩に華を持たせる。インド企業もまた、こうした価値観を重く見ており、日本人の年功序列の考え方に安心感を覚えるのだ。しかし、日本の企業人はチームが第一で個人はその次と考える。彼らは言う。個人や年長者が仕事を完成させるわけではない。チームが行うのだと。こうしたチームが個人よりも優先するという考えにインド人は心底感銘を受けている。

 (2)インド企業はよりプロフェッショナルになり、各種の基準を守るようになってはいるが、インド人は結論を急ぐ傾向がある。結論を急ぐと何かと重要な事実や選択肢を見逃し、間違った決断を下しがちだ。運や偶然に恵まれでもしない限り、こうした見逃しが企業の利益、もしくは企業のイメージを損なうことになる。意思決定に十分な時間をかけるインド企業もあるが、この決定が覆されない保証はない。正式な会議で決定されたことでも、誰かがそれに異論を挟むことがある。より良いものにしたいという気持ちからなされることもあるが、単に発言者が存在感を示したいがために行われることもある。そうなると、企業は心理的駆け引きや社内での主導権をめぐる競争に振り回されることになる。インド企業と違って、日本企業は決定を重視する。確かに決定までに時間はかかるが、いったん決まれば、全員がそれに従い、覆そうとする者は滅多におらず、実施段階では能率的に物事が進められる。だから、日本企業は決定までは後れを取るかもしれないが、総合的に見ると効率的だ。当初はイライラを覚えるインド人も多いが、最終的には納得するようになる。

全力投球と礼儀正しさも多くのインド人が感銘

 (3)インド人は、日本人は何でも熱心に行うと考えている。日本人は自分の国をとても愛している。国だけではなく、自らの考え方、仕事、コミュニティーを愛している。日本人は、ひとたび仕事を引き受ければ、結果を出すまでやり抜くと考えられている。日本人の仕事に対する姿勢は全力投球である、と。一方、インド人の仕事に対する熱心さは低く、それが彼らの生産性を低いものにしている。そのため、製品の品質やサービスも低下する。インド人は、日本人が何かを行うときの熱心さは驚異的だと感じている。

 (4)日本のコミュニケーションスタイルは礼儀のお手本のようだ。不愉快な内容をやりとりする場合でも、礼儀正しさが失われることはない。これがインド人が日本企業を好む理由である。一方のインド企業は権威を振りかざし、ぶっきらぼうな応対をすることが多い。日本では否定的なことを伝える場面でも、感じの良い笑顔で対応される。これに、多くのインド人が感銘を受けている。

 効率性、品質、効果的な時間管理で知られる日本ブランドをインド人はこれからも信頼し続けるだろう。日印の経済交流が強化され、インドでの高い需要を見いだした日本企業にとって、品質の高いサービスは至上命題であった。日印が双方の市場、人々、企業において、何世紀にもわたって両国の間に築かれた信頼関係をさらに発展していくことができれば素晴らしい。この関係が今後も強化され、戦略的、経済的な成果へとつなげられるかは、今後を見守る必要がある。

関連記事

好評連載

グローバルニュースの深層

一覧へ

2015年の中国リスクと新時代の到来

[連載] グローバルニュースの深層

グローバルニュースの深層

[連載] グローバルニュースの深層

原油事情に関するロシアの分析

[連載] グローバルニュースの深層

プーチン露大統領の内外記者会見

[連載] グローバルニュースの深層

中間選挙後の米国を展望する

[連載] グローバルニュースの深層

中国を制するものは世界を制す

変貌するアジア

一覧へ

鴻海によるシャープ買収のもう1つの狙い

[連載]変貌するアジア(第37回)

変貌するアジア

[連載]変貌するアジア(第36回)

SDRの一翼を担う人民元への不安

[連載]変貌するアジア(第35回)

「3不社会」韓国の「3放世代」

[連載]変貌するアジア(第33回)

開催意義不明の日中韓首脳会議

[連載]変貌するアジア(第32回)

朱立倫の総統選出馬と台湾海峡危機

津山恵子のニューヨークレポート

一覧へ

CESの姿が変わる花形家電よりもネットワークに

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第20回)

津山恵子のニューヨークレポート

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第19回)

米・キューバ国交回復のインパクト

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第18回)

クリスマス商戦に異変! 店舗買いが消え行く

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第17回)

教育の機会格差解消にNY市が動き出す

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第16回)

米中間選挙で共和党が圧勝 16年大統領選はどうなる!?

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

「日本初」にこだわる男のユニークな発想とビジネス――佐野秀光(情報通信ネットワークグループ社長)

「損して得を取る」事業モデル  不動産登記情報を扱う「登記簿図書館」をご存じだろうか。 かつては法務局でしか取得できなかった登記簿情報がオンラインで簡単に取得でき、かつ、法務局では対応できないさまざまなサービスを提供するというものだ。保有登記情報は全国2450万件、会員数9500社を誇る。 この登記簿図書館を…

支持政党なし

外国人を中心に需要が高まるソーシャルレジデンスで快走―オークハウス

独自のプラットフォーム戦略で、外食産業の新たなスタンダードを創造する――きちり社長 平川昌紀

新社長登場

一覧へ

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

創業から95年、海外に進出してから50年以上たつ国際派企業の高砂香料工業。合成香料では日本最大手であり、国際的にも6%以上のシェアを持つ優良企業だ。 100年弱の歴史を持つ合成香料のトップメーカー ── まず御社の特徴をお聞かせください。 桝村 1920年創業ですから、2020年に100周年を迎える…

桝村 聡

「ネット広告が変わってもクライアント本位の姿勢は変わりません」--バリューコマース社長 香川仁

「最新情報を発信、人と企業の働く環境を良くしていきます」--マンパワーグループ社長 池田匡弥

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

20150609_INNOV_P02

デザイナーズ家具のEC販売で業界の“常識打破”に挑戦――リグナ社長 小澤良介

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 教育部門と…

大学の挑戦

創立100周年を控えて「世界に貢献し、インパクトを与える人」の育成に努めます――西南学院大学・K.J.シャフナー学長

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

企業eye

一覧へ

社員の人間力を武器に5期連続増収を果たす投資用不動産会社――パートナーズ

パートナーズは全国の中古投資用不動産の売買仲介を手掛けている。2011年の創業以来、5期連続増収を達成。吉村社長は業績好調の原動力を「社員の人間力を養い、顧客満足度の向上に取り組む姿勢にある」と語る。── 数ある投資用不動産会社の中、独自の強みについて。吉村 当社では、社員の人間力を徹底的に磨きな…

企業eye

クラウドソーシングを活用した動画制作やオンライン動画制作プラットフォームを提供――Crevo

海外ビジネスの第一線で活躍した2400人のエキスパートを擁し、日本企業の海外事業を支援。

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界4月4・18日号
[特集]
紙メディアの未来

  • ・青木康晋(朝日新聞出版社長)
  • ・一木広治(ヘッドライン社長)
  • ・村野 一(デアゴスティーニ・ジャパン社長)
  • ・嶋 浩一郎(博報堂ケトル社長・共同CEO)
  • ・高井昌史(紀伊國屋書店会長兼社長)
  • ・消えたB2Bメディア コントロールドサーキュレーションの功罪

[Special Interview]

 吉永泰之(富士重工業社長)

 「守りに入らず攻め続けるためにスバルへの社名変更を決断した」

[NEWS REPORT]

◆三越伊勢丹、ヤマト運輸……人手不足が労組を動かす

◆攻めの農業の象徴 農水産物輸出1兆円は大丈夫か

◆“豪腕”森信親・金融庁長官の続投濃厚で戦々恐々の金融界

[著者インタビュー]

 手嶋龍一(作家、ジャーナリスト)

 稀代のスパイはインテリジェンスセンスを磨く最高のテキスト

ページ上部へ戻る