マネジメント

天才数学者が説く健全な「情緒」を育てる必要性

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(いずみや・なおき)1948年生まれ、京都府出身。72年京都産業大学法学部法律学科卒業後、アサヒビール入社。工場倉庫課、労組役員などを経て、86年広報部へ配属。広報部長、経営企画部長、経営戦略部長などを経て、2003年取締役に就任。04年常務取締役、09年専務取締役を歴任し、10年代表取締役社長兼COOに就任。11年に持ち株会社制への移行に伴い、アサヒグループホールディングス社長に就く。

 泉谷氏が挙げるのは、岡潔氏の随筆集『春宵十話』(毎日新聞社、1963年発行)である。

 天才数学者と呼ばれた著者だが、同書はお堅い解説本の類ではなく、「人」に対する深い洞察にあふれた1冊だ。取り上げられているのは「教育」「宗教」「芸術」と、一見数学とは何のかかわりもないようなテーマ。しかし、いずれも根底に「情緒」に対する正しい認識がなければ、道を外れていくことを示唆している。著者は専門分野の数学についても、「自らの情緒を外に表現することによって作り出す学問芸術の1つ」と、位置付ける。

 学生時代に出合って一気に引き込まれ、もう50年以上も『春宵十話』と付き合っているという泉谷氏は、同書についてこう語る。「『人間の中心は情緒である』とし、まずは『情操』をしっかりさせることが、良い『情緒』を育むことにつながると説いています。人の感じ方は経験とともに変わっていきます。当時、10代であった私の心に染み入ったのと同じように、今の私もその言葉に多くの気付きをもらっています」

 情操については、例えば、キリスト教がインスピレーションを軸にしているのに対し、仏教が情操を軸にしているとし、「情操が深まれば境地が進む」という独自の見解につなげていく記述などは、思わず唸ってしまう。

 泉谷氏は「原理原則の本を読んで考えることが、自分自身の考えを練り上げることにつながります。この本には、そのヒントがたくさん詰まっています」と言う。物事の本質を深く探究する基礎を教えてくれる本だ。

 ちなみに、同書は毎日新聞社からは既に絶版となっているが、光文社から文庫版が発行されている。

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