政治・経済

法人向けに力を入れるソフトバンクのPepper

 現在、パーソナルロボットの進化にはめざましいものがあり、次々と商品化されている。その代表は2014年6月に発表された「Pepper(ペッパー)」だろう。ソフトバンクグループ傘下のソフトバンクロボティクスがフランスのアルデバラン・ロボティクスと共同開発し、製造は中国のフォックスコンが請け負っている。Pepperは人型の感情認識ヒューマノイドロボットで、高さ121cm、重量29kgと人間の子供の7歳児くらいの大きさだ。

 Pepperの販売は、法人向けマーケットに力を入れている。2014年12月1日からネスレ日本が家電量販店の一部店舗にあるネスカフェコーナーで、Pepperによる接客を開始したのを皮切りに、みずほ銀行、リクルートテクノロジーズ、ガリバーインターナショナルらも接客に導入。ソフトバンクグループは6月にグループ会社cocoro SBが時給1500円でPepperを貸し出すロボット人材派遣サービスを提供すると発表した。さらに同グループは法人向けモデル「Pepper for Biz」を発表。Pepper for Bizは一般販売中のPepperをベースに、受付や声かけなどビジネスに活用できる法人向けアプリケーションを標準搭載しており、月額5.5万円でレンタルできる。導入のためのコンサルティングや独自アプリケーションの開発、追加サポートサービスなども提供する予定だ。

世界で注目を集める卓上型のファミリー向けJibo(ジーボ)

 一方、マサチューセッツ工科大学(MIT)のメディアラボでメディアアーツと科学を教えるシンシア・ブリージール准教授が創業者兼エンジニアとして開発を進めているのが、パーソナルアシスタントとしても機能する一般家庭向けロボット「jibo((ジーボ)」である。jiboは卓上型のファミリー向けロボットで、人型ではなく、ロボットの顔面にあたる半円形のディスプレイにスタンドが付いた形状になっている。大きさは約28cm、重さは約2.7kg。ディスプレイが感情を表現し、カメラと音声認識によって、対面した人が誰なのかを判断して会話をしたり、写真やビデオによる生活シーンを記録したりできる。さらに、秘書役としてスケジュールの管理などをサポートする能力も備えている。jiboが従来のロボットと最も違うのは、jibo側から人間側に話かけることがあることだという。これまでのロボットは人間側から話しかけてロボットがそれに答えるのが基本的な関係性だったが、jiboのコアとなるコンセプトは利用者となる家族と「親しい関係」(social rapport)を築くことにあるという。

 家庭用のPepperの販売価格が19万8000円(税抜)なのに対して、jiboは自立して動ける機能が付いていない分、本体価格は749ドルと安価に抑えられている。クラウドファンディングサイト「indiegogo」でプレオーダー(一般販売よりも早くjiboを入手できる)を受け付けたところ、7,422件もの申し込みを獲得し、約371万ドル(約4.5億円)を集めたことで注目を浴びた。jiboに対しては、11社のベンチャーキャピタルや企業が総額で3,860万ドル(約47億円)の出資を行っており、日本の電通とKDDIも各々が運用するベンチャーファンドを通じ、KDDIが数億円程度、電通が約3.7億円を出資した。

オープンソース採用で安価な自立型ロボットBUDDY(バディ)

 一方、仏BLUE FROG ROBOTICS社が開発する「BUDDY(バディ)」は、自立して動くことができるファミリー向けパーソナルロボットだ。jiboのような家族を認識して特定のコミュニケーションができる機能に加え、電化製品のコントロール、特定の人に伝言を残す、メールの読み上げなどのパーソナルアシスタント機能、プレイリストの作成と音楽再生機能、ホームセキュリティ機能などがある。子どもの家庭教師、ホームセキュリティ、高齢者介護の役割までも拡張することを視野に入れて開発されている。特徴は顔面の表情が豊かでキュートなこと。販売はindiegogoを通して行われているが、価格はBUDDYの基本型となるクラシックエディションの価格は649ドル、デベロッパー版が749ドルとjiboと同程度、自立型のPepperに比べてかなり安価な設定となっている。身長560mm、重量5kgとボディがPeppeより小さく軽量であるのに加え、ロボットの内部で使われるソフトウェアにオープンソースで普及しているものを積極的に採用して、価格を抑えることに成功した。オープンソース技術の活用は、販売価格を抑えることだけでなく、外部のエンジニアでもロボットを改良、進化させていける大きな利点があると同社は考えている。

高機能型やキットによる組立型も

 そのほか、日本でも富士ソフトが開発した「Palmi(パルミー)」、DeAGOSTINIの「Robi(ロビ)」、プレンプロジェクトの「PLEN.D(プレン・ディー)」などもある。
 「Palmi(パルミー)」は富士ソフトが高齢者福祉施設向けに開発した「PALRO(パルロ)」と呼ばれるロボットをベースにファミリー向けに最適化したもので、踊ったり歌ったり、通りがかる人を見つけては話しかけたりといった機能のほか、ネットワークに接続してニュースや天気情報などの情報を取得してくれる。価格は29万8,000円(税抜)。

 「Robi(ロビ)」は本来、DeAGOSTINIの雑誌「週刊ロビ」を購読し、毎号に付属してくるパーツを組み立てていくために開発されたものだが、組み立て作業が面倒な人向けに完成品を販売している。複数の性格が用意されており、性格によって話す言葉も変化するという。価格は19万8,000円(税抜)。

 PLEN.D(プレン・ディー)は運動神経抜群のロボットだ。組み立てキットになっているが、ドライバー1本で組み立てることができ、ユーザー自身で組み立てながらロボットの構造を学べるところに魅力がある。

パーソナルロボットが家族や同僚に

 1999年にソニーが販売した犬型ロボット「AIBO(アイボ)」は玩具の位置づけだった。しかし現在のパーソナルロボットは、ペットのように親密な関係を構築できるだけでなく、生活を豊かにし、秘書的な役割を果たすパーソナルアシスタント機能を備えている。いずれも現在の機能は初歩的なものかもしれないが、それでもPepperが既に企業の接客ロボットとして導入されているように、単純な労働を担えるほどに進化している。各社はさらに便利で、高度な機能へと進化させていくべく資金を調達し、研究を続けている。
 パーソナルロボットが今後さらに進化していくためには、メーカーが単独での開発ではなく、外部のエンジニアや開発会社にも参加してもらい、プラットフォームを構築することが必要になるだろう。スマートフォンのプラットフォームが、iPhoneとアンドロイドの2種類に集約されたように、将来的には、パーソナルロボットの規格も何種類かに統合されて、各メーカーは、その規格に準じた上で個性的なロボットを開発し、ユーザーが必要な機能をオプションのパーツやアプリとして自由に組み込めるような使い方になるのかもしれない。パーソナルロボットが犬や猫と同じように家族の一員となり、やがては職場の同僚となる日はもう目の前に迫っているのだ。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

永濱利廣

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

[連載] 深読み経済ニュース解説

日銀による追加緩和決定の影響は!?

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

ワンマンシリーズ(7)稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第19回)

ワンマンシリーズ(6)三和の法皇・渡辺忠雄〈3〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第18回)

ワンマンシリーズ(5) 三和の法皇・渡辺忠雄〈2〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

ワンマンシリーズ(4) 三和の法皇・渡辺忠雄〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第16回)

ワンマンシリーズ(3)住友銀行に残る堀田の魂魄

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

「日本初」にこだわる男のユニークな発想とビジネス――佐野秀光(情報通信ネットワークグループ社長)

「損して得を取る」事業モデル  不動産登記情報を扱う「登記簿図書館」をご存じだろうか。 かつては法務局でしか取得できなかった登記簿情報がオンラインで簡単に取得でき、かつ、法務局では対応できないさまざまなサービスを提供するというものだ。保有登記情報は全国2450万件、会員数9500社を誇る。 この登記簿図書館を…

支持政党なし

外国人を中心に需要が高まるソーシャルレジデンスで快走―オークハウス

独自のプラットフォーム戦略で、外食産業の新たなスタンダードを創造する――きちり社長 平川昌紀

新社長登場

一覧へ

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

創業から95年、海外に進出してから50年以上たつ国際派企業の高砂香料工業。合成香料では日本最大手であり、国際的にも6%以上のシェアを持つ優良企業だ。 100年弱の歴史を持つ合成香料のトップメーカー ── まず御社の特徴をお聞かせください。 桝村 1920年創業ですから、2020年に100周年を迎える…

桝村 聡

「ネット広告が変わってもクライアント本位の姿勢は変わりません」--バリューコマース社長 香川仁

「最新情報を発信、人と企業の働く環境を良くしていきます」--マンパワーグループ社長 池田匡弥

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

20150609_INNOV_P02

デザイナーズ家具のEC販売で業界の“常識打破”に挑戦――リグナ社長 小澤良介

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 教育部門と…

大学の挑戦

創立100周年を控えて「世界に貢献し、インパクトを与える人」の育成に努めます――西南学院大学・K.J.シャフナー学長

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

企業eye

一覧へ

社員の人間力を武器に5期連続増収を果たす投資用不動産会社――パートナーズ

パートナーズは全国の中古投資用不動産の売買仲介を手掛けている。2011年の創業以来、5期連続増収を達成。吉村社長は業績好調の原動力を「社員の人間力を養い、顧客満足度の向上に取り組む姿勢にある」と語る。── 数ある投資用不動産会社の中、独自の強みについて。吉村 当社では、社員の人間力を徹底的に磨きな…

企業eye

クラウドソーシングを活用した動画制作やオンライン動画制作プラットフォームを提供――Crevo

海外ビジネスの第一線で活躍した2400人のエキスパートを擁し、日本企業の海外事業を支援。

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界9月号
[特集]
人材恐慌 この危機をどう乗り切るか

  • ・企業が脅える人材恐慌最前線
  • ・人材不足の処方箋 働き方改革でどう変わる?
  • ・加藤勝信(働き方改革担当大臣)
  • ・神津里季生(日本労働組合総連合会会長)
  • ・中田誠司(大和証券グループ本社社長)
  • ・若山陽一(UTグループ社長)

[Interview]

 松本正義(関西経済連合会会長)

 2025大阪万博で関西、日本は飛躍する

[NEWS REPORT]

◆第4次産業革命に走る中国、遅れる日本 松山徳之

◆格安スマホに対抗しauが値下げ これから始まるスマホ最終戦争

◆減収続くも利益率は向上 富士通・田中社長の改革は本物か

◆破綻からわずか2年 スカイマークが好調な理由

[政知巡礼]

 野田 毅(衆議院議員)

 「社会保障の安定した財源は消費税しかない」

ページ上部へ戻る