政治・経済

 金融庁が小売店のレジや宅配業者を現金自動預払機(ATM)代わりにして、銀行預金を引き出せるサービスを年内にも解禁する見通しになった。金融とITの融合に対応した規制緩和を通じ、地方や郊外でのATMの少なさを補い、外出が難しい高齢者らに対しても利便性を向上することを狙う。

 現金の引き出しには、買い物の支払いと同時に金融機関の口座から代金が引き落とされる「デビットカード」を使う。例えば、スーパーマーケットのレジで、買い物ついでに現金も引き下ろしたい際に、店員にそれを伝えれば、暗証番号を入力するだけで、買い物の支払いと現金の受け取りができ、その分口座から預金が減る仕組みだ。利用手数料は店側の負担になる。

 日本ではなじみがないが、実はデビットカードが普及する欧米では「キャッシュアウト」サービスと呼ばれ広く利用されている。金融庁は昨年12月末に金融審議会の「決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ」の報告書の中で、規制緩和の方向性を打ち出した。

 金融庁はレジ以外にも宅配業者やタクシーの支払い時などでも、携帯型端末を活用して銀行預金を引き出せる仕組みを想定する。自宅や車内などで現金が引き出せれば、外出やATMを探し回るのが難しい高齢者らにとっては朗報だ。

 年内にも関連政省令を改正し、キャッシュアウトを解禁する方針だが「実用化に向けては、業界の実務的な意見を聞きながらどんなルールが必要か詰めるべき点が多い」(幹部)という。例えば、ATMと違って、レジに入れることができる現金や宅配業者が持ち歩ける現金には限りがあることから、引き出し限度額の設定なども必要になってくる。

 みずほ銀行は2017年度からのサービス開始を準備するなど、早くも規制緩和に対応する動きもある。同社は銀行のキャッシュカードをそのまま使って買い物ができる「J-デビット」に注力しており、規制緩和を「追い風」と受け止める。

 だが、一方で「デビットカードの利便性を高めてもそれほど期待できない」(関係者)との指摘もある。日本では個人消費に占める決済手段の割合は、クレジットカードは14〜15%、デビットカードに至っては1%未満にとどまり、いまだ現金決済が過半を占めるからだ。カードの加盟店にとっては、新たなサービスが集客を後押しする可能性もあるが、店の手数料負担のほか、店員の負担増や防犯上のリスク増加などの課題も山積しており、サービスが根付くかには不透明感も強い。

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