文化・ライフ

前回は、島田さんの壮絶な海外体験をお聞きしました。その後、日本に戻ってからの社内改革のご苦労や、リーダーの条件などについて、今回は伺いました。

「朝の来ない夜はない」と自らを鼓舞

佐藤 海外で経験を積まれた後は、米ハーバード大学に留学されましたね。

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(しまだ・せいいち)1937年生まれ。東京都出身。61年東京大学法学部卒業後、三井物産入社。三井物産本社取締役情報産業本部長、副社長CIO(最高情報責任者)などを経て日本ユニシス社長に就任。そのほか住宅金融公庫総裁、住宅金融支援機構理事長などの要職を務めた。現在は日本ユニシス特別顧問、津田塾大学理事長などを務める。

島田 1993年にインターネットが商業解禁される前の86年、今はICTと呼びますが、ハーバードでITに出合いました。ウォーレン・マクファーレン教授の講義を受け、これからはITが分からないと経営ができない、という考えに感銘を受けたのです。ITは単に決算書などをつくるための道具ではなく、経営の中核になるものだと。実はその前にメキシコで投獄されていた時、やることがないので本を300冊読んだのですが、その中にマルチメディアの本も含まれていました。その後、ハーバードの大先生に出会ってITを勉強する機会に恵まれ、非常に運が良かったと思います。

佐藤 ただ、誰もITはおろか、パソコンも分からない時代でしたから、帰国後はご苦労されたとか。

島田 情報産業開発部長になってから3年間は何をやっても社内で稟議が通らず、92年に本部長になりましたが、全然利益が出なくて、「島田は何やってるんだ」と言われるわけです。自分は楽観主義者ですが、事業は赤字になる、投資した会社もダメになるで、本当に大変でした。ただ、そこでナポリやメキシコでの経験を思い出し、「朝の来ない夜はない、何とかなるさ」と考えることができたんです。

 例えば、今では日本で最大の衛星放送会社となったJSAT(現スカパーJSAT)という会社をつくった時は、三井物産としても多額の投資を行ったのですが、なぜ商社が衛星通信会社をやるのかと反対の声もありました。でも、事業をやらないと会社の将来はない。創業以来の中間業者型のビジネスモデルから、事業型のビジネス中心に転換していく必要があったのです。その改革をしたから総合商社は生き残れました。その後も50代で経営企画部長として、60代で経営企画専務として2度改革の場面に立ち会えたことは幸せだと思っています。

佐藤 出社前に体が動かなくなるほどのプレッシャーを抱えていた時、奥様の励ましが大きかったのだそうですね。

島田 今考えるとワイフに助けられましたが、一生頭が上がらなくなりましたね(笑)。

嫌になっても繰り返し言い続けるのがリーダー

佐藤 華やかな経歴の裏には大きな苦労があったのですね。

島田 偉そうなことは言えませんが、困難を一つひとつ乗り越えていくのが人生ではないでしょうか。2001年に日本ユニシスに来た時も、ITもハードからサービスへの大きな転換期でした。でも、技術者にはプライドが高い人が多いため、社長が変えろと言うだけでは変わらない。それでも危機感を共有するために「そんなことやっていたら会社が潰れるぞ」と、必死になって繰り返し言い続けたんです。三井物産の時もそうでしたが、何度でも繰り返す。それで下の人も、社長は本気だと感じるわけです。そして、言い続けるだけでなく実行することが大事です。住宅金融公庫でも、津田塾大学でも、同じようにやってきました。

佐藤 島田さんが考えるリーダーの条件とは。

島田 まずはビジョン。組織が向かう方向を描く能力です。そして実行のためのプランを、自分だけでなく社員と一緒に作り、実行する。PDCA(Plan・Do・Check・Actionという事業活動の「計画」「実施」「監視」「改善」サイクルのこと)の歯車を回すという能力が、非常に重要だと思います。



2016308_SANSAN_P02対談を終えて

柔和な笑顔からは想像できないほど、過酷な経験を重ねてきた島田さん。これからも尊敬する経営者として、人生の師として、指導を仰ぎたいと思います。

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