政治・経済

自民党の“公募議員”への真摯な取り組みが形骸化

 「個人の素行についてのチェックが難しいと痛感している」

 自民党の谷垣禎一幹事長は、議員辞職した不倫騒動の宮崎謙介前衆議院議員(35歳)が党の「公募」議員だったことを記者会見で指摘され、そう本音を漏らした。それはそうだ。わずか数百字の論文と面接で、その男の「オンナぐせ」など見分けることができるはずはない。

 宮崎氏は妻である同じく自民党の金子恵美衆議院議員の妊娠中に、グラビア・タレントを選挙区である京都の自宅マンションに連れ込んでいたことが週刊文春にすっぱ抜かれたのだった。

 ところが、「公募」議員のスキャンダルはこれにとどまらない。昨年、安保法制に反対する若者を「戦争に行きたくないだけ」と稚拙に批判したかと思えば、未公開株をめぐる金銭トラブルも発覚し自民党を離党した武藤貴也衆院議員も「公募」だった。

 そもそも「公募」は、自民党の党改革の一環として始めたもの。自民党の政治家は2世や官僚出身者が圧倒的。そこで、有能な人材がもっと政治に参加できるように、「公募」制度を導入して、開かれた自民党をアピールするようになったのだ。

 自民党が初めて「公募」したのは2004年のことだ。党改革に熱意を持って取り組んでいた世耕弘成参議院議員(現官房副長官)を、私は密着取材していた。選挙違反事件で現職の自民党議員が罪に問われ系列の市議らが逮捕されるなど壊滅的になった埼玉の選挙区で、次に手を挙げる者はいなかった。そこで世耕氏は「実験的に公募をやろう」と提案。安倍首相が当時党改革を指揮していた。初めてということもあって、応募論文に何人もが目を通し、面接も何回も段階的に回数を重ね、選挙では選対に中堅議員からベテランまでが入り、当選後も派閥などが徹底して面倒を見た。

 しかし、あのときの「公募」への真摯な取り組みは完全に形骸化しているのではないか。その後の実態が浮かび上がったのが今回の騒動だろう。

 かつて党改革を進めていた中堅議員の1人は言う。

 「04年と言えば、議員の年金未納問題で、参院選で自民党が大逆風のとき。改革は、ピンチのときや、下野したときなど苦しい立場のときに前へ進む。しかし、政権に戻り一強などと言われるほど強くなると、緩みや驕りで改革は鈍くなる。公募も選び方やその後の育成など手を抜いているんじゃないか」

 自民党ベテラン議員は、こんなふうに説明する。

 「昔は、もし自民党に公認して欲しければ無所属から這い上がって来いというのが常識だった。自民党から出たい人は、自分でお金を用意して、後援会を作って、時間をかけて地域をコツコツと回り、選挙で現職を破ったら初めてそこで『よくやった』と公認してもらえる。選挙区でそうやって回っているから、活動を通じてどんな奴か、人物像がおおよそ分かっていた」

 だが、今の公募制度では「経歴や論文など一瞬しか人物を見ることができない。自民党の「公募」は、書類審査・論文・面接が中心で「都道府県連」も選考にかかわる。京都には谷垣幹事長や、伊吹文明前衆議院議長などもいる。大ベテランが自ら「個人の素行までは……」などと言うぐらいなら、今後も第2、第3の「不倫議員」が出てくるだろう。

自民党活性化のためにそれでも“公募議員”は必要か

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イラスト/のり

 自民党は今夏の参院選でも「公募」をウリにしている。比例候補について「公募」したあと、さらにネット投票で選ぶ「オープン・エントリー」といった試みだ。「公募」と「ネット」を使って政治家を育てるという、いかにも時代にあった開かれた政党をアピールしたいのだろう。

 しかし、この「オープン・エントリー」方式で決まる比例候補はわずかだ。「1人。無理して2人にできるかどうか」(自民党選対幹部)だという。そもそも、全国の自民党比例候補は25人前後になりそうだと見られ、現在既にそのうち少なくとも23人が現職や組織団体の推薦で決まっている。

 党幹部は、今回の宮崎氏や武藤氏のような人選ミスが起きないために、今後の改善策として「当面は面接を増やすなどしかない」などと話しているが、一方で「世襲が多い中で党活性化のために公募はやはり必要だ」と訴える中堅若手議員などは、「幹部らの制度への対応や改善策は手ぬるい」と批判してこんな改革案を示している。

 「例えば書類選考や面接だけでなく、公募してきた何人かがその選挙区で一定期間街頭演説をやったり党員の間を回って膝詰めで議論したりして、最後は党員による予備選挙で最終候補を選ぶのはどうか。訴えやその人物がより分かる。それくらいの制度改革で『公募』への本気度を見せるべきだ」

 

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