政治・経済

人口流出に歯止めを

―― 九州経済の現状をどう見ていますか。

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(ぬき・まさよし)1945年生まれ、福岡県北九州市出身。68年九州大学経済学部卒業後、九州電力入社。企画部、広報部などを経て、2007年取締役常務執行役員、09年代表取締役副社長、12年代表取締役会長。11年より福岡経済同友会代表幹事、14年より九州経済同友会代表委員を務める。

 大都市圏は緩やかな回復と言えますが、周辺地域については必ずしも良いとは言えません。人口動態を見ると、ここ数年でかなりの人口が九州から転出しており、厳しい側面があると考えています。7県のうち、福岡県は唯一人口が増えていますが、他の6県を含むと2万人以上の転出超過となっており、その大部分は首都圏に出ていっています。

―― 打開策は。

 地方創生は経済界の大きなテーマですが、即効性のある手段としてはインバウンド促進と起業支援の2つが挙げられます。企業誘致もありますが、なかなか難しい部分があります。

―― 大企業の内部留保は増えていますが、以前ほど地方に拠点を立てて、人を雇うという動きは鈍くなっています。

 東日本大震災の直後は、福岡にも企業や人材がかなり移動してきましたが、現在は海外に出ていくケースが増えています。九州でもいろんな特区を設けて経済の活性化を図っていますが、人口流出を食い止めるほどではありません。地域の発展を促進するためには、単に工場を誘致しても駄目で、本社機能や研究開発のような機能を持ってくる必要があります。「良質な職場」をつくらないと人はとどまらないですね。

―― そのために九州のどのような魅力をアピールしますか。

 まずは地理的にアジアに近いということ、そして地震・津波などの自然災害も比較的少ないといった点です。九州は今のところ、電力も安定供給できていますし、労働力も豊富です。企業にとっては魅力的ではないでしょうか。

東京オリンピックに向けプロジェクトを提案

―― インバウンドを加速させるために必要なことは。

 現在でも、九州の魅力ある文化、気候、温泉、食べ物などが外国人を呼び込んでいます。さらに知名度を上げてリピート客を増やすために、最も効果があるのは4年後の東京オリンピック・パラリンピックでしょう。文化庁はリオのオリンピックが終わる今年の9月以降、4年をかけて東京オリンピックに向けた文化プログラムを組む予定ですが、それに乗る形で九州を積極的にPRしていきたいと考えています。ロンドンオリンピックの例で言えば、4年間で17万7千回の文化プログラムを実施して、4千万人を集めた実績があります。それにならって、日本でも今後20万件の文化プログラムを実施し、5千万人を集めようとしています。

 文化を発信する1つの例として紹介しますと、オリンピックに出場する200カ国をイメージした着物をつくって展示していくというプロジェクトが、久留米の呉服屋さんを中心に取り組まれています。まずは、今年5月に北九州で行われるG7のエネルギー大臣の会合の場で、会合参加国の着物をつくって披露する予定となっており、そうした動きをわれわれもバックアップしていきます。また、私は福岡県文化団体連合会という団体の会長を務めていますが、そこにもさまざまな技能をお持ちの方がいるので、海外に向けたプロジェクトを提案できないかと考えています。

―― インバウンド促進とともに、宿泊施設など受け入れ態勢の整備も課題です。

 宿泊施設の不足は大きな問題です。九州全体でホテルの部屋数は9万3千ほどですが、昨年の段階で稼働率が7割くらいまで上がっています。一方で、旅館の稼働率は4割を下回っており、旅館をもっと活用できないかと思っています。民泊も検討しなければならないでしょう。九州新幹線が開通して、各地から福岡までのアクセスが便利になったので、沿線上に宿泊施設をつくっていくことも考える必要があります。あとは、富裕層を呼び込むために、シンボルとなるような5つ星のホテルが欲しいという話が、九州の財界から頻繁に出ています。

―― 中国から福岡へ寄港するクルーズ船が相当増えているようですが。

 来ていただいた人たちに、いかに九州を回遊していただくかが大きなテーマです。交通システムの整備をはじめ、Wi-Fiの整備や多言語対応なども進めています。課題は、九州に来ていただくために、海外の人々にそうした情報をどう発信するかです。九州では官民が連携して九州観光推進機構や九州地域戦略会議といった組織を設けており、そうした場を利用して取り組みを進めているところです。

企業マネーが回る環境づくりを

―― 福岡と他の地域で格差が開いていく懸念はないでしょうか。

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 一番確実な解決法としては、道州制を進めるしかないと思います。州政府をつくって、中央の許認可機能が地方に分散すれば、企業の本社機能も当然分散していくでしょう。ただ、道州制の議論は現在は停滞しているので、今できることは九州の中で力を持った都市が成長して、その影響力を周辺地域に波及させることです。

 また、地域の活力を維持し、住民をケアするという観点から、どれくらいの市町村が必要なのかを考えるべきです。平成の大合併によって、日本の市町村の数は1700程度に減ってしまいましたが、これは欧米諸国と比べると非常に少ないのです。その状態が本当に有効なのか、きちんと検証するべきではないでしょうか。

―― 新たな産業振興の取り組みは。

 一番注目したいのは、医療用も含めたロボットの分野です。九州にも開発を手掛けているメーカーが立地しているので、これから大きく成長してほしいと考えています。また、スタートアップではさまざまな芽が出ているのですが、そこへの投資、すなわちリスクマネーが十分に供給されていないという問題があります。銀行もベンチャーへの投資にお金が回るように考えていただいていますが、今後は大手企業が多角化の一環としてベンチャーに投資するなど、企業マネーがベンチャーを支援する動きがもっと出てきてほしいと思います。

―― 現状はそうした動きがまだ不十分だと。

 日本全体の問題点として、監視と規制が厳しくなり過ぎて、上場企業がなかなか思い切った投資ができないということがあります。この状況をなんとか克服しないといけません。企業が持っているお金を有効に使いきれていないことが、20年間続いたデフレの大きな原因ではないでしょうか。

(聞き手=本誌編集長/吉田 浩 写真=有森弘忠)

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