政治・経済

観光を九州の基幹産業に

―― 九州経済の現状をどう見ていますか。

麻生 財界人の多くが、20年間続いたデフレ脱却の雰囲気を肌で感じています。数字がいまひとつ伴っていない感はありますが、リーダーのメンタル面が明るいので、今後は数字に反映してくると思います。

―― 九州の中で福岡の一極集中が懸念されています。

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(あそう・ゆたか)1946年生まれ、福岡県出身。69年慶応義塾大学法学部卒業。その後、英オックスフォード大学ニューカレッジを卒業。大沢商会を経て麻生セメント入社。79年社長、2000年会長就任。96年より九州経済連合会理事を務め、13年より現職。

麻生 結論から言えば、まずは尖るところが尖っていくしかないでしょう。国としてもすべての地域にばらまく余裕はないですし、リーダーがビジョンとやる気を持ち、リターンが大きそうなところに集中して支援していくことになると思います。その意味で、福岡市は非常に強いですね。インバウンドに関して言えば、博多港に寄港する外国船社が運航するクルーズ船の数は、2014年に99隻でしたが、15年に245隻になりました。今年は400隻を超える寄港予約が入っているとのことです。15年の補正予算で、博多港の岸壁拡張工事に7億円が付きましたが、博多はこれからも伸びていくでしょう。

―― 九州財界によるPRも奏功しているのでしょうか。

麻生 われわれがセールスプロモーターとしてどれだけ役立っているかは分かりませんが(笑)、地理的に中国や韓国に近いことが有利なのは確かです。訪日観光客約2千万人のうち、船を利用する人が約112万人いて、その40%以上が博多港にやって来ます。中国から1〜2日かけて観光客がクルーズ船でやって来て、九州の博多、長崎、鹿児島に寄港するというケースが増えています。

―― 観光客がもっと九州で回遊するために、どんなことが考えられますか。

麻生 例えば、19年に開かれるラグビーワールドカップの12会場のうち、九州は3カ所が指定されています。大会は3週間ぐらいあるので、その間に九州を巡った人たちが評判を広めて、20年の東京オリンピックでも九州で過ごしてくれる人が増えるという流れができないかと考えています。

 九州観光推進機構の石原進会長は、観光を基幹産業にすると仰っています。確かに数字を見るとそれだけの規模があります。14年1〜12月に九州を訪れた外国人は167万人で、1人15万円使うとすれば2500億円程度になります。これが7割増しになり、1人25万円使ってもらえるようになると、7千億円規模になります。このインパクトは大きいですよ。

―― 宿泊施設の不足が深刻なようですが。

麻生 かなり深刻です。ホテルによっては、客室占有率100%のときもあるようです。一方で旅館の占有率は低いので、その魅力を発信していかないといけません。奥座敷と呼ばれる地方の旅館のサービスレベル向上を図って、「東京より面白い、九州に行こう」という評価が定着してほしいと思います。

―― 外国人にとって奥座敷的な雰囲気は魅力だと思いますが、なかなか人が来ないのは交通インフラなどの問題でしょうか。

麻生 それもありますし、泊まるなら朝食と夕食を必ず付けなければならないといった、旅館ならではの決まりごとが多いことも理由です。どれだけお客さまに合わせて、柔軟なサービスを提供できるか。あとは地方創生とも絡む話ですが、若者が地元に戻って、旅館の経営を引き継いでいく動きが出てきてほしいですね。農業も同じですが、次世代が地元に帰ってくるための仕掛けを、現役世代のわれわれがどうやってつくっていくかが課題です。

官民の一体感が九州の強み

―― 農業と言えば、香港の小売業者のデイリー・ファームと組んで、現地で九州の農産物の直売を始めました。手応えは。

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麻生 非常に順調です。昨年11月末に4店舗で始めましたが、今年1月には16店舗に増えました。デイリー・ファームは香港だけで300店舗を持っていて、日本から直送するということで、最も目に付く売り場に九州直販コーナーを作ってもらっています。物流に関しては日本郵船に手を挙げていただき、コストを空輸の約10分の1にできました。空輸より日にちはかかりますが、コンテナの鮮度保持技術によって新鮮なまま届けることが可能となっています。物流コストが下がったお陰で、富裕層だけでなくアッパーミドル層も買えるようになりました。農家にとっても小売業者にとっても、ウィンウィンの良い関係が築けています。

 こうしたチャンスを九州からつくっていくことで、国も動いていくことになるでしょう。九経連は、「九州から日本を動かす」というミッションを掲げています。他の地域にはないまとまりが九州にはありますし、危機感を持ってしっかり実績を出していきたい。

―― 九州には、さまざまな要素があるので、可能性は広がりそうですね。

麻生 九経連の会長になって、一番うれしかったのはわれわれの先輩たちが官民一丸となれる土壌をつくっていただいていたことです。九州7県と沖縄県、山口県を加えて9県の知事と経済4団体のトップが一堂に会する九州地域戦略会議というものがあるのですが、そこでさまざまな問題を協議することができます。例えばインバウンド促進のために、Wi-Fiや多言語対応ソフトの整備を行おうといった話が、その場でついてしまうのです。そうした素地があることが、九州の強みです。

責任感を持って結果を出す

―― 地域振興に向けて、各自治体は今後どう取り組んでいくべきでしょうか。

麻生 自分たちの町をいかにつくるか、自ら考えて行動することが必要です。例えば、私の地元の飯塚市は真剣に医療や教育レベルを上げようとしていますし、そうした努力を行っていけば、人口も減らないのではないでしょうか。それには、リーダーの思い入れや使命感が大きく影響します。

―― 会長就任から2年半たちましたが、その間、目に見えた変化はありましたか。

麻生 九経連の事務所の職員が九州から日本全体を動かそうと意識するようになり、責任感を抱いて仕事をするようになったと思います。

―― 今後の抱負を。

麻生 私はビジネスマンですから、掛け声だけでなく実績がないと満足しません。これまでの実績として、香港での農産物の小売りが始まったり、インバウンドが増えたりしましたが、もっと実績を出さないと駄目だと思います。ここで九州が伸びなければ、日本が終わるという意識でやっていくつもりです。だから1日1日が大変です。

(聞き手=本誌編集長/吉田 浩 写真=有森弘忠)

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