政治・経済

遠くから見ていると政治家として分かりにくい印象もある民主党代表の岡田克也氏。しかし、それは融通の利かない堅物だからではなく、何事にも筋を通す姿勢からくるものだった。今回は、政治家として過ごした日々のハイライトについて語ってもらった。(※この対談は2月後半「民主・維新合流」発表前に行われました)

民主党の勢いを削いだ郵政選挙

德川 1993年に小沢一郎さん、羽田孜さんは宮沢内閣に対する不信任案に同調、その後離党して新生党を結党します。岡田代表も新生党に参加されましたが、新党さきがけ、という選択肢はなかったのでしょうか。

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(おかだ・かつや)1953年三重県四日市市生まれ。東京大学法学部卒業後、76年通産省(現経済産業省)入省。90年自民党公認で衆議院初当選。現在9期目。93年自民党離党、新生党結党に参加。その後新進党を経て、98年民主党結党に参加。政調会長、幹事長を経て2004年民主党代表に就任。09年の民主党政権樹立にともない鳩山内閣で外務大臣に就任。菅内閣での幹事長、野田内閣での副総理・行革担当相を経て民主党下野後、14年民主党代表代行、15年9年ぶりに2度目の民主党代表に就任。16年2月民主党と維新の党の合流を発表。

岡田 時の総理を否定した以上は自民党を離党するのが当然でした。さきがけの可能性はないわけではなかったです。今は自民党に戻っている岩屋毅君からさきがけに誘われまして、私は逆に岩屋君を新生党へ誘いました。ただ、人間的なつながりから、やはり羽田先生や小沢先生について行こうと。さきがけに関しては「立ち位置が分かりにくい」という問題もありました。彼らは宮沢内閣不信任案に賛成はしていない。果たして離党するかどうかも、決めていなかった。そういう意味では、筋道が立っていないと思いました。

德川 細川護煕内閣が誕生した当時、岡田代表は与党の2回生議員でした。中から見ていて細川内閣はどうでしたか。

岡田 難しかったですね。やはり小沢先生と武村正義先生がうまくいかなかったのが最大の問題だったと思います。細川総理を2人で取り合って、どちらが良いとか悪いということではないと思いますが。

德川 その後岡田代表は小沢一郎さんについていきますが、97年の新進党の解党の時に大反対されたのには、どんな思いがあったのでしょう。

岡田 党を解党するのに説明がなく、議員総会だけでいきなり決めるというのはあり得ないということです。党内で議論しなくてはいけないということを主張したんです。

德川 2004年に民主党の代表に就任されました。この時、政権を獲れるかもしれないという勝算は、どの程度ありましたか。

岡田 菅直人代表が年金未納問題に絡んで辞められて、その時、幹事長だった私は小沢さんに次の代表になってもらおうと相当説得しましたが、最終的に断られました。誰も引き受け手がいない中で、党内で「幹事長であるお前が責任を取ってやれ」という話になりました。当時は民主党の支持率も地に落ちていて、3カ月後の参議院選挙で勝てるとは誰も思わず、参議院で負けたら責任を取って辞める覚悟をしていました。しかし、民主党50議席、自民党49議席という結果で、勝ちました。

德川 それを経て「次の総選挙で勝てる」とは考えましたか。

岡田 チャンスはあると思いました。ただ、当然ながら小泉総理もそのことは考えていて、それが翌年の郵政選挙につながったわけです。小泉さんの任期満了が近かったので、次の総理候補の安倍さんと選挙をやることになる、それならチャンスはあると思っていたのですが(笑)、現実は小泉さんが総理のまま郵政解散・総選挙を実行して、大勝してから安倍さんにバトンタッチしたわけです。

德川 当時の小泉総理はどのような存在だったのでしょうか。特に郵政解散については。

岡田 まあ、王道ではなく、「奇道」かもしれませんね。あの時は年金の問題が非常に大きな政治テーマで、年金制度をどう変えるかについて、われわれは野党第一党として内々に官邸ともいろいろなシミュレーションの話をしていたり、国会の中に衆参合同の委員会を作ってそこで議論をしたりして、ちゃんとやれば小泉政権も年金改革に応じる可能性はあると思っていたんです。でもそれは、いわば“見せ金”のようなもので、実は郵政のほうで解散することは早くから決めていたんですね。最後は「郵政改革法案が参院で否決されたから衆院を解散する」という、訳の分からない論理でした。まあ、政治のプロだとは思いますが、それが日本の民主主義にとって良かったかとなると、話は別です。

膨れ上がってしまったマニフェスト

20160405_KOU_P03德川 参議院での勝利で政権獲得の芽が出て来た当時の民主党に、政権党としての準備はできていたでしょうか。

岡田 政治主導を実現するために、具体的にどういうスケジュールで何をするかをすべてマニフェストに書いていました。そういう意味では準備はできていたと思います。09年のマニフェストですが、私はその時既に代表を退いて3年程ほぼ無役の状態でしたが、小沢代表の下で子ども手当が倍額になるなど、マニフェストが膨れ上がっていったんですね。09年5月に小沢さんは代表を辞任して、鳩山由紀夫さんと私で代表選を戦い、私が敗れて幹事長となりました。その時に幹事長としてかなりマニフェストの見直し・圧縮をしましたが、圧縮しきれなかったことを今でも後悔しています。

德川 鳩山政権で外務大臣に就任された時、最大の外交課題は何だったのでしょうか。

岡田 外相に就任した時の記者会見で、「外交密約の解明」ということを申し上げました。これは日本の外交に棘のように刺さっていた問題で、どこかで清算しないといけませんでした。しかし、万年与党の自民党では、元外相、元総理が嘘をついていたと認めなくてはいけないので、難しかった。それで政権交代が1つのチャンスだと思いました。難しい問題でしたが、アメリカ政府との関係も含めて適切に対応できたと思います。

德川 あの時出てきた、「東アジア共同体」という話にはタッチしておられましたか。

岡田 もちろんです。自分が代表だった05年に有識者と議論をして、「東アジア共同体」というコンセプトを打ち出しました。不幸だったのは、アメリカ側に疑念を抱かせてしまったこと。「日本はアメリカをとるのか、中国をとるのか」と、外相の私もよく聞かれました。「そういう話じゃないですよ。アメリカは同盟国ですよ。ただ、中国も非常に重要な存在。日本もアジアの一部で、東アジアを重視する外交は当然じゃないですか。アメリカか中国か、というのとは次元の違う話です」と説明したんですが、なかなか理解できない人もいましたね。普天間問題も影響を及ぼしたと思います。そこが大きな失敗だったと思います。

「小沢問題」の処理で党の半分が敵に

德川 野田佳彦総理の時、最初の3カ月くらいは無役でいらっしゃいましたね。入閣要請を断った理由は。

20160405_KOU_P02岡田 特にありません。野田政権が発足する直前まで私は幹事長でした。本当はやりたくなかったんだけれど、菅総理と仙谷官房長官に言われて。「小沢問題」の処理が党の最大課題で、なかなか他の人にはできないということで引き受けました。別に小沢さんが嫌いだったからやっていたわけではなくて、やはり公人としての説明責任を果たすべきだということですね。説明をしないのであれば、党員資格停止は外せないという判断でした。しかし結果として党の半分を敵に回してしまいました(笑)。それで菅さんの後をどうするかという時に野田さんから「代表選に出るべきだ」と言ってきましたが、「自分が出馬しても党の中が混乱する。あなたこそ出てくれ」と言って、野田さんを説得しました。私は野田さんを高く評価していたからです。総理になった野田さんサイドから官房長官にという話がきました。しかし私の考える官房長官とは、総理をしっかり支える存在。官邸の主が2人いるように見えるの政権運営上は好ましくないと考え官房長官職はお断りしました。その後3カ月くらいたってから結局、内閣最大の課題であった消費税担当の副総理ということで入閣しました。

德川 野田総理のもとで、民主党は分裂し、12年の総選挙でも惨敗してしまいました。野田さんを代表選で推したことに後悔はしていませんか。

岡田 野田総理は、消費税増税という自民党が20年間できなかった立派な実績を残しました。私たちは増税という不人気な政策で自分たちが批判されてもやむを得ない、必要なことはやるという覚悟で取り組んできました。残念だったのは、党がその重圧に耐えられず、まとまり切れなかったことです。これが民主党政権最大の反省点です。

文=德川家広 写真=幸田 森

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