政治・経済

イメージと異なる意外な素顔

 ようやく“はじめの一歩”が踏み出された。2月26日、「民主党と維新の党との合流」が正式合意されたのだ。振り返れば昨年5月、大阪で都構想の住民投票が否決されたことを受け、江田憲司氏が共同代表を辞任。その後任として松野頼久氏が代表に就任した。ここから一気に合流構想は動き始めた。

 「思想信条が全く違う維新と民主がくっつくわけがない。単なる野合でしかない」

 自民党をはじめ、民主党の中からもこのような声が聞こえていた。ましてや、民主党の代表は“原理主義者”、カタブツと呼ばれる岡田克也氏。「全く松野は何を考えているんだ」と、当時は維新の党の中にすら、そんな空気があった。それを意に介さず、薄皮を丁寧に剥ぐように松野氏は調整を重ねてきたのだ。

 松野頼久氏――。祖父は参院議長、鉄道相を歴任した鶴平氏、父は防衛庁長官、農林相、労働相などを歴任し、小泉純一郎元首相の後見人としても知られた頼三氏の三世議員。松野氏本人は、民主党政権時に官房副長官の要職を務めたご仁だ。

 一方で、これまでの松野氏に対する評価は決していいものではなかった。香水をたっぷりつけ、ワイシャツの第2ボタンまで外した姿は、「永田町のホスト議員」「七光りのチャラ男」などと呼ばれることもあった。メディアもチャラけた部分を必要以上にクローズアップする記事を仕立てあげたりしていた。

 しかし、上辺だけを見ていると評価を見誤るものだ。というより、松野氏の本質は、「反骨のかぶき者」のように思える。

イラスト/のり

イラスト/のり

 その最大の理由は、超隠密主義だ。今回の合意に至るまで、数々の会合を隠密裏に進めてきた。永田町広しといえども、これほど番記者に好かれる議員は多くない。常にオープンで、人当たりがいい。要職に就いていても、そのスタンスは変わらない。にもかかわらず、ポイントとなる要人との会合はなかなか番記者に悟らせない。同僚議員ですら、首を傾げることもしばしばだ。

 先日、松野氏本人に聞くと、「どこかでバレてもいい。でも、私側から漏れると相手の信用は得られない。だから、そこは慎重にしている」と、事もなげに語った。常に相手の立場に立ち、ブレずにミッションをやり遂げようとする、それが松野氏のスタイルなのだ。

 人を大事にし、義を重んじる姿勢は、昔から備わっていた。かつて松野氏は、父・頼三氏が細川護煕氏の後見人だったことから、日本新党の職員として勤務する。一大ブームを巻き起こした日本新党だが、解党後多くの人は、細川元首相の下を去り、振り向きもしなかった。年に一度、旧日本新党の関係者で細川氏を囲む会に最後まで出席していたメンバーの1人が、松野氏だった。

大きな武器となった国対の経験

 そして、民主党議員として当選後は、一貫して国会対策周りの仕事をこなしてきた。かつて、松野氏はこう言って笑ったことがある。

 「皆、族議員とか言って利権が絡むけど、“国対族”は何もないよ」

 この国対の経験が松野氏の大きな武器になった。国会のスケジュールで何が肝なのか、どういう形で各党が動くのか、各省庁は本当はどのポイントを重視しているのかをつぶさに見てきたからだ。加えて、自民党から共産党に至るまで、国対人脈は永田町随一となった。

 ところが、そんなことを微塵も感じさせない。いや、“悟らせない”かぶき者の立ち居振る舞いが、松野氏にはあるのだ。

 民維合流を模索する中、交渉相手が岡田代表であることを危惧する声も多かったが、松野氏は、筆者にこう語っていた。

 「民主党の代表が岡田さんで良かった。確かに岡田さんは堅物で、決めるまで時間がかかる。でも、決めたら周りが何を言おうが、テコでも動じない。パートナーとして一番信頼できる相手ですよ」

 つまり、合流の狼煙を上げた瞬間から、冷静な状況分析をしていたのである。その中で、ドン・キホーテよろしく孤軍奮闘する形で、時に共産党の志位和夫委員長や生活の党の小沢一郎代表などとも連携を図り、民維両党の一癖も二癖もある連中にも配慮を欠かさず、粘り強く合流の必要性を説き、難しい連立方程式を解いていったのである。

 今夏には参院選があり、年内どこかのタイミングで衆院解散も囁かれている。この戦いで自民党に勝つのは容易ではない。しかし将来、再び政権交代がなされたとき、振り返るとこの民維合流が節目だったと言われ、その功労者として松野氏が再びクローズアップされると確信している。

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