国際

(写真:EPA=時事)

(写真:EPA=時事)

オバマ大統領の図書館はどこに?

 大統領図書館(Presidential Library)というものがある。

 米国大統領任期中に関与した公務に関する資料や書簡・写真などを保管し、かつ一般に公開している比較的大規模な施設だ。所蔵品の内容や目的からすると図書館(Library)というよりは退任した大統領の記念館、もしくは公文書館でもある。

 これは歴史の浅い米国特有のものであり、他国にはない。

 特に日本では無理だ。首相図書館を造るならば、ここ10年で、小泉、安倍、福田、麻生、鳩山、菅、野田、安倍と7つもの首相図書館を造らなければいけない。

 さて、この大統領図書館だが、今のように定例化したのもごく最近で、FDRこと、フランクリン・ルーズヴェルト大統領から造られるようになった。現在全米13カ所に設けられている大統領図書館は、非常にユニークな歴史と役割を持っている。

 1939年に第32代大統領フランクリン・ルーズベルトが職務関連の書類と個人的な資料を政府に寄贈したことから始まった大統領図書館の管理・運営は、米国国立公文書記録管理局 (United States National Archives and Records Administration、通称NARA)によって行われている。

 図書館の造られる場所は生誕地だったりするわけだが、オバマの場合はハワイで生まれ、インドネシアで育ち、シカゴやボストンで過ごして今はワシントンにいる。引退後、どこに図書館を造るかが問題だ。最近ではオバマはそもそも外国生まれで大統領になる資格がないという攻撃も頻発した。この件は後にもう一度、触れる。

 2004年に米国アーカンソー州の州都リトルロック(Little Rock, Ark)はビル・クリントンの大統領図書館ができたことによって10億㌦の不動産投資が喚起されたという。

 今年の4月に開館した息子ブッシュ大統領図書館は、テキサス州ダラスの南メソジスト大学構内に建設された。正式名称ジョージ・W・ブッシュ大統領図書館・博物館(George W. Bush Presidential Library and Museum)は、ダラスのコンベンション・ビューロー(The Dallas Visitors and Convention Bureau)によると、5千万㌦の経済効果を生み出すとみられている。

ブッシュ大統領図書館のオープニングにはオバマも出席してこうスピーチした。

“As we walk through this library, obviously we’re reminded of the incredible strength and resolve that came through that bullhorn as he stood amid the rubble and the ruins of Ground Zero, promising to deliver justice to those who had sought to destroy our way of life.”

〈この図書館を歩いていくにつれ、思い出されてくるのは、グラウンド・ゼロの瓦礫の上で拡声器を通じ、われわれの生活を破壊しようとした敵に立ち向かって正義を貫こうとした、信じられないほどの力強さを示したあの姿のことであります〉

 前大統領を褒めそやした。

 というわけで近年では現役の大統領を招いて麗々しくテープが切られる大統領図書館は波及する経済効果も華々しく、これを誘致しようという動きが2期目に入ったばかりのオバマ周辺でも起きている。初の黒人大統領というのは、やはり大統領図書館的にもおいしい。

 特にハワイとシカゴで綱引きがある。両者ともにオバマ大統領図書館が欲しい。

“It is a tough choice, but it’s not one that I’ve made yet,

〈これはなかなか難しい選択で、まだ決めかねております〉

 とオバマはABCネットワークのホノルルKITVのインタビューで答えている。

“Honolulu is my birthplace.

〈ホノルルは私の生まれた土地です〉

It’s the place where I grew up, and I met so many friends and fond memories, and it helped to shape me, so I’d like to find a way that after my presidency that connection remains,

〈ここは私が育った土地であり、多くの友人に出会えた思い出深い、私という人間を形成した土地であり、大統領になってからも絆を持ち続けたい場所なのです〉

“But, you know, I live in Chicago now, and that’s where I grew up professionally.”

〈しかし、ご存じのように、私は今、シカゴを拠点としており、政治家としての出発点はそこにあるのです〉

[今号の英語]rather
 むしろ、という意味で使う。どちらかと言えば、というような意味である。I’d rather not.(まあ、やめておこう)というような使い方をする。
 ホワイトハウスの記者クラブ夕食会(White House Correspondents’ Dinner)というのは大統領が徹頭徹尾ジョークを言い続ける場となっているが、今年の夕食会でオバマは大統領図書館に関してもジョークを放った。
“I’m also hard at work on plans for the Obama library,”
〈オバマ図書館に関しては計画を練りに練っております〉
“Some have suggested that we put it in my birthplace but I’d rather keep it in the United States.”
〈何人かは生誕地に造れと言っておりますが、私としては、どちらかと言えば合衆国内に造りたいと考えております〉
 これは、不動産王ドナルド・トランプが展開していた、オバマが外国生まれで大統領になる資格がそもそもないという有名な攻撃キャンペーンを皮肉った発言である。

関連記事

好評連載

グローバルニュースの深層

一覧へ

習近平政権下の中国経済と新時代の到来

[連載] グローバルニュースの深層

グローバルニュースの深層

[連載] グローバルニュースの深層

原油事情に関するロシアの分析

[連載] グローバルニュースの深層

プーチン露大統領の内外記者会見

[連載] グローバルニュースの深層

中間選挙後の米国を展望する

[連載] グローバルニュースの深層

中国を制するものは世界を制す

変貌するアジア

一覧へ

鴻海によるシャープ買収のもう1つの狙い

[連載]変貌するアジア(第37回)

変貌するアジア

[連載]変貌するアジア(第36回)

SDRの一翼を担う人民元への不安

[連載]変貌するアジア(第33回)

開催意義不明の日中韓首脳会議

[連載]変貌するアジア(第32回)

朱立倫の総統選出馬と台湾海峡危機

津山恵子のニューヨークレポート

一覧へ
無農薬野菜

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第20回)

CESの姿が変わる花形家電よりもネットワークに

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第19回)

米・キューバ国交回復のインパクト

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第18回)

クリスマス商戦に異変! 店舗買いが消え行く

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第17回)

格差問題が深刻化する米国―教育の機会格差解消にNY市が動き出す

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

不動産のノウハウや技術を生かしサステナブルインフラへ―いちご

現存の不動産に新しい価値を創造する「心築(しんちく)事業」とJ‐REIT運用、太陽光などのクリーンエネルギー事業が主力。社名の「いちご」は一期一会に由来しており、サステナブルインフラを通じて日本の社会を豊かにすることを目指している。文=榎本正義(『経済界』2019年9月号より転載) 長谷川拓…

次世代車向け先進技術を応用する日本発プラットフォーマー ―イーソル

社員に奨学金を提供―ミツバファクトリーが実践する中小企業が勝つための福利厚生とは

新社長登場

一覧へ

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

アサヒグループ食品の副社長から、この3月にアサヒビールの社長に就任した塩澤賢一氏。長年、ビール営業畑を歩み、マーケティングを兼ねた繁華街歩きを趣味にしている。街の変化から世の中の流れを読む塩澤新社長が挑むのは低迷するビール市場の活性化。若者需要を伸ばしつつ、スポーツイベントを商機として攻勢をかけていく。聞き手…

「事業部門の連携を活性化させ営業利益100億円を目指す」 内藤宏治(ウシオ電機社長 )

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

イノベーターズ

一覧へ

シリコンバレーへの挑戦が生んだ「起業家と投資家が待ち望んだサービス」― 戸村光・ハックジャパンCEO

起業家のスタンスとして、画期的な技術やビジネスモデルを社会で活かすことを目的としたイノベーション先行型もあれば、社会課題解決を最優先とし、そこに必要な技術やノウハウを当てはめていくやり方もある。ハックジャパンCEOの戸村光氏の場合は後者。対象となる課題は「身の周りの気付いたことすべて」だ。(取材・文=吉田浩)…

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年9月号
[特集] 東京五輪以降──ニッポンの未来
  • ・2度目の東京五輪 今度はどんなレガシーが生まれるのか
  • ・高岡浩三 ネスレ日本社長兼CEO
  • ・脱CO2の切り札となる水素活用のスマートシティ
  • ・五輪契機にテレワーク普及へ「柔軟な働き方でハッピーに」
  • ・ワーケーション=仕事×余暇 地域とつながる新しい働き方
  • ・「ピッ」と一瞬で決済完了! QRしのぐタッチ決済の潜在力
  • ・東京五輪で懸念される調達リスク
  • ・フェアウッド100%使用にこだわる佐藤岳利(ワイス・ワイス社長)の挑戦
[Special Interview]

 原田義昭(環境大臣・内閣府特命担当大臣)

 世界の脱炭素化、SDGs「環境」が社会を牽引する

[NEWS REPORT]

◆フェイスブックの「リブラ」で仮想通貨も「GAFA」が支配

◆脱炭素社会へ 鉄リサイクルという光明

◆PBの扱いを巡り業界二分 ビール商戦「夏の陣」に異変あり

◆中国の次は日本に矛先? トランプに脅える自動車業界の前途

[特集2]

 北の大地の幕開け 北海道新時代

・ 鈴木直道(北海道知事)

・ 岩田圭剛(北海道商工会議所連合会会頭)

・ 安田光春(北洋銀行頭取)

・ 笹原晶博(北海道銀行頭取)

・ 佐々木康行(北海道コカ・コーラボトリング社長)

・ 會澤祥弘(會澤高圧コンクリート社長)

・ 佐藤仁志(北海道共伸特機社長)

・ 内間木義勝(ムラタ社長)

ページ上部へ戻る