テクノロジー

 ソフトバンクはAI分野でIBM,マイクロソフトという2大IT企業との協業を進めている。これらの提携は、同社のパーソナルロボット「Pepper」の今後の展開にも大きくかかわってくる。PepperのAIについて、ソフトバンク ロボティクス事業推進本部長の吉田健一氏に語ってもらった。

 

ロボットとAIの親和性を生かす方向で展開するPepper

 

 AIの定義はいろいろあるが、PepperのようなロボットとAIは本来親和性が高い。

 AIは、アーティフィシャル・インテリジェンスと称されるように人間を模倣している。人間もAIに対して人間的なインタラクションを期待するため、生き物のように感じられるロボットはAIに向いている。

 また、AIではどれだけデータを採れるかが重要になる。採ったデータをどう処理するかがAIだと思われがちだが、膨大なデータを採るほうが技術的な難易度が高い。

 例えばロボットはいろいろなデータが採れる。目の前に人がいるとか、その人がこっちを向いているとか、話しかけたら答えてきたとか、どんな風貌の人かとか。こういう情報はデータベースになく、ロボットがそこにいることで、ロボットのセンサからリアルな環境の情報を人の感情も含めてすべてとらえることができる。

 そうして集めたデータを処理する部分はもちろん高度化していくことは必要だが、人を認識し処理してアウトプットを出すというプロセスを考えたときに、認識がボトルネックになる。

20160419AI_SBP01

吉田健一氏

 全体のAIの世界観を考えた時にわれわれがフォーカスしているのはまさにこの2つのポイント。ひとつはインタラクションで、人間とのインターフェースやユーザーエクスペリエンスなどコミュニケーションAIと呼ばれるもの。もうひとつはデータを採ってくる領域で、特に人の感情認識は、われわれしかできないところになる。

 逆に膨大なデータベースの中から最も正しい解答を導き出す「ナレッジAI」と呼べる領域は、例えばIBMの「Watson」が強い。また、膨大なデータベースをディープラーニングで解析するマイクロソフトやグーグルの手法は、「アナリティックAI」と呼べるものだ。

 逆にわれわれはそれらの領域では強くないし、やろうともしていない。その領域はIBMやマイクロソフトなどと組めばよい。

 一方、IBMやマイクロソフトにとっては、データベースを解析しても、次の段階はその結果を使って何かを行う。そこでわれわれのコミュニケーションAIを組み合わせることになる。

 IBMやマイクロソフトとわれわれとなぜ組んでいるか、もしくは彼らから見てなぜ組みたいと思っているかというと、彼らが持っているAIのパートと、われわれが持っているパートが相互補完的になっているから。

 例えばAIの医者を考えた場合、彼らからすると、素晴らしい診察結果が出てもそれを患者にどうやって伝えようかという話になる。そのときに医者という人間的なインタラクションを実現できるわれわれのAIの技術が必要とされる。

 

コミュニケーションAIとPepperの最終目標は?

 

 コミュニケーションAIの最終目標は、人間かロボットなのか分からずにコミュニケーションして、人間だと思うことが完成形だと考えている。

 今はPepperとのコミュニケーションもうまく聞き取れない場合があったりして、最終目標からすると、まだ1合目ぐらいだと思っている。

 ただしほかのAI技術も人間を超えようとしているので、われわれと同様にかなりゴールは遠い。そういう意味では、小売店での短時間の接客など、非常に限られた状況でうまい使い方さえすれば、お客さまの期待にミートできるのがコミュニケーションAIの良いところだと言える。

 今後を考えると、最近の「AI脅威論」に対する回答は、われわれのコミュニケーションAIの感情エンジンだと思う。ナレッジAIやアナリティックAIの領域は高度な処理をできるようになるが、判断であって意志ではない。最後は意志の領域が絶対必要になり、そこは感情の領域になる。

 われわれがやろうとしているのは、人間の感情をシミュレートすること。例えば、赤ん坊は単純にお腹が空いたら騒いだり、眠くなったら眠る。それに対し、大人の人間は一般常識や社会性にあたる「超自我」があり、その超自我で感情のバランスが保たれている。われわれはAIに超自我をつくり、バランスを保って社会に溶け込んでいる仕組みをIT上に実現しなければいけないと思っている。

 人間にはいろいろな欲望があるが、暴走せずに社会が成り立っている。その仕組みをつくることが肝要で、そのための感情エンジンが必要となる。

 感情は欲望を爆発させるためではなく、社会とのバランスをとるためにある。コミュニケーションAIの今後は超自我をつくれるかにかかっている。(談)

関連記事

好評連載

エネルギーフォーカス

一覧へ

緑の経済成長とエネルギー

[連載] エネルギーフォーカス

Energy Focus

[連載] エネルギーフォーカス

今後、10年後の電力業界の様相(2)

[連載] エネルギーフォーカス

発電単価から既存原発の経済性を考える

テクノロジー潮流

一覧へ

科学技術開発とチームプレー

[連載] テクノロジー潮流

テクノロジー潮流

[連載] テクノロジー潮流

エボラ出血熱と情報セキュリティー

[連載] テクノロジー潮流

21世紀の日本のかたち 農電業と漁電業

[連載] テクノロジー潮流

工学システムの安全について

[連載] テクノロジー潮流

エネルギー移行と国民の価値観の変化

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

【特集】2019年注目企業30

 2018年の日本経済は、世界のマーケットを席巻してきた中国経済の成長鈍化が鮮明になり、併せて米・中の経済摩擦、英国のEU離脱問題などの対外的な課題が重なって大きな閉そく感が漂う年だった。 しかしながら元気な中堅・中小企業はネガティブな要因をものともせず独自の経営手法で活路を開いている。 原点回帰で、顧客第一…

「超サポ愉快カンパニー」としてワクワクするビジネスサイクルを回す―アシスト

ITと建設機械、グリーンエネルギーの3本柱で地球環境問題解決に貢献する―Abalance

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

ペット仏具の先駆企業が「ペットロスカフェ」で目指す癒しの空間づくり

家族のように接していたペットを亡くし、飼い主が大きな喪失感に襲われる「ペットロス」。このペットロスとなってしまった人々が交流し、お互いを癒し合うカフェが、東京都渋谷区にオープンした。「ディアペット」を運営するインラビングメモリー社の仁部武士社長に、ペット仏具の世界とペットロスカフェをつくった目的について聞いた…

元引きこもり青年が「cluster」で創造する新たなVRビジネスとエンターテインメント(加藤直人・クラスターCEO)

日本人の英語学習の課題解決に向け、学習者目線のアプリを開発―― 山口隼也(ポリグロッツ社長)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年4月号
[特集]
日本の「食」最前線

  • ・総論 日本の「食」から世界の「食」へ 成長産業となった農水・食品産業
  • ・「食」の輸出1兆円を支えるジェトロの役割
  • ・全国で進むブランド化「食」から始まる地方創生
  • ・上海で見た日本の「食」の未来
  • ・海外進出した外食チェーン「成功」と「失敗」の分かれ目
  • ・日本人が知らない中国の「日本食ブーム」の真実
  • ・消費税引き上げで始まる「外食VS中食」最終戦争

[Special Interview]

 星野晃司(小田急電鉄社長)

 「未来を見据えた挑戦で日本一暮らしやすい沿線をつくる」

[NEWS REPORT]

◆中国リスクが顕在化 電機業界に再び漂い始めた暗雲

◆持続可能な水産業へ 魚はいつまで食べられるのか

◆CES 2019現地レポート 家電からテクノロジーへの主役交代が鮮明に

◆相次ぐトラブルで業績悪化 SUBARUの見えない明日

[総力特集]

 2019年注目企業30

ページ上部へ戻る