政治・経済

 政府が東京電力に対して1兆円の公的資金を注入し、実質国有化してから1年余りが過ぎた。若手の幹部登用など社内改革は進んでいるが、原発事故への賠償や除染費用は膨らみ続けるばかり。経済産業省は電力の安定供給を理由に追加支援を探るが、消費増税を控えた財務省が容易に首を縦に振らないのが実情だ。

「追加的な対応についてはまず東電が判断し、その上で国も一歩前に出ると申し上げてきた」

 茂木敏充経産相は、実質国有化1年の節目を翌日に控えた7月30日の記者会見でこう強調した。

 政府は昨年3月の東電福島第一原発事故後、原子力損害賠償支援機構を通じて上限5兆円の賠償資金を前貸しし、後から東電が分割支払いする仕組みを構築した。

 だが、根拠法に政府の責任は明記されず、支払い主はあくまでも東電。既に東電は賠償だけで4兆円近くを支出し、除染を含めた費用は今後も膨らみ続けるのが確実。このため国の責任分担を求めなければ、「東電が長期債務弁済法人として『ゾンビ企業化』する」(下河辺和彦会長)との危機感が根強い。

 実際、東電は昨年11月、除染や賠償の費用が見通しの倍額である「10兆円規模に上る可能性がある」として、国に追加支援を要請。今年4月には下河辺会長が、安倍晋三首相や茂木経産相に直談判し、首相から「福島の復興再生のため、国も一歩前に出て共に力を尽くしていきたい」との言質を取り付けた。

 だが、4カ月が過ぎても、経産省内には具体策の検討に停滞ムードが漂っている。経産省幹部は、「消費増税の是非が議論されている時期で、タイミングが悪い」と話す。政府内では、消費増税の景気への影響に配慮して来年4月の税率引き上げを予定どおり実施するかどうかの議論が浮上しており、財政再建を目指す財務省は「ピリピリしている」(同)。

 そんな中、経産省がさらなる「国庫負担」を切り出すのは難しいというわけだ。国の政策に翻弄されてきた東電の命運に、消費税という新たなハードルが立ちはだかっている。

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