マネジメント

 日本の食卓に欠かせないしょうゆは、今や海外にも浸透した世界的な調味料だ。米国など海外をけん引役に、キッコーマンは2016年3月期に3期連続の最高益を見込む。一貫してこだわってきた各地の現地料理への浸透が成果を挙げている。グループの将来ビジョンでは、「キッコーマンしょうゆをグローバル・スタンダードの調味料にする」という目標を掲げている。

海外ではアグレッシブで革新的な企業イメージ

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(ほりきり・のりあき)1951年千葉県生まれ。74年慶応義塾大学経済学部卒業。同年キッコーマン醤油(現キッコーマン)に入社。2002年関東支社長、03年執行役員、06年常務執行役員、08年取締役常務執行役員、11年代表取締役専務執行役員、13年6月代表取締役社長CEO就任。

 1917年に設立されたキッコーマンは、個人経営時代からの長い歴史に培われた伝統と、常に時代を洞察する革新性を経営風土とし、イノベーティブな新商品を次々と投入している。今や売上高で全体の半分以上、営業利益では7割以上が海外というグローバル企業になった。だが米国に販売会社を設立した57年は、多くの米国人から見ると、いまだ日本は敗戦国だった。戦後の復興と共に国内のしょうゆの生産量は伸びたが、いったん行き渡ると人口の増加以上に需要は伸びず、ある段階から伸び悩むようになると考えた当時の経営者は、しょうゆの売り上げを伸ばすには海外市場を開拓しなければならないと決断した。

 「店頭でしょうゆで味付けした肉を焼くと、香ばしいにおいに釣られてお客さんが寄ってくる。試食すると、おいしいとしょうゆを購入してくださったそうです。しょうゆは日本では水や空気のように食卓にあるのが当たり前ですが、海外では今までなかった調味料ということで、新鮮だったのでしょう。日本では、キッコーマンというと伝統とか信頼など保守的なイメージがありますが、海外ではアグレッシブで革新的という印象を持たれています」

 堀切功章社長は先輩たちの挑戦を振り返る。しょうゆの国内市場は毎年1〜2%の減少が続いているが、キッコーマンは2010年に発売した密封容器入りの「生しょうゆ」が好調だ。

 「しょうゆは一度火入れをして酵母の働きを抑えてから容器に詰めます。生しょうゆは火入れの工程がないため、鮮やかな澄んだ色と穏やかな香りが特徴。しょうゆは開栓すると空気に触れて劣化が始まるため、密封容器が開発されるまでは一般の流通での販売ができませんでした。生しょうゆのパッケージは白いため、売り場の棚が黒から白に変わって消費者の目線を集める効果もありました」

 密封容器ができたことで、開栓後も常温で90日間、新鮮さを維持できるので、用途に応じて複数のしょうゆを使い分ける家庭が増えている。しょうゆへの関心が高まったことが何よりだという。

“食文化の国際交流”はかり、世界中の食を豊かに

 キッコーマンは、海外でのしょうゆの製造・販売事業のほかに東洋食品卸事業を展開する“日本食の専門商社”としての顔も持つ。69年に米ジャパン・フード社(現JFCインターナショナル社)へ経営参加したことを手始めに、日本食材の卸事業に進出した。欧米で火が付いた日本食ブームが、アジアにも伝わってきているが、しょうゆのキッコーマンはその陰の立役者でもある。

 しかし、日本食や和食というのは、しょうゆを知ってもらうための1つの手段だが、そこで終わりではなく、いかに現地の人達が日々食べている食事に使ってもらえるかが大切だという。

 「アメリカでは肉に合う調味料として浸透した。最近はフランス料理の隠し味にしょうゆが使われるようになっている。国によってやり方は異なるが、ローカルな食の中にどのようにしょうゆを入れ込んでいくかという考え方は変わらない。キッコーマンしょうゆはジャパン・ブランドというより、世界中の食を豊かにする調味料として、ジャパン発のグローバル・ブランドを目指して取り組んでいます」

 世界中どこに行ってもキッコーマンしょうゆがあることを目指す。現地の食文化を尊重しつつ、その土地の食材を引き立たせる調味料としてのしょうゆの可能性を熱く語る堀切氏だ。

一族8家による経営が生み出す強さ

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