マネジメント

成功者の真似をすれば失敗するだけ

 世の中を見ていると、特に若い人たちの働き方を見ていると、「何か、すごいことをしないといけないと思っていないか」とつくづく感じる。背伸びが過ぎるのだ。

 イソップの童話に、牛のまねをするカエルの話が出てくるが、そのカエルにならないかと心配になる。カエルは牛の姿に似せようとして一所懸命に腹を膨らませ、ついには腹を破裂させてしまうのである。

 現代のカエル=若者たちにとっての牛は、成功者たちだ。若者は、世の中の成功者を見ていると、みんな自分の個性を強く打ち出して仕事をしているように見えるらしい。あるいは実際に「自分はこういうことを成し遂げた」と武勇伝として語れるようなエピソードを読んだり、聞いたりしている。

 成功者のそういうところを知ると、「そうならなければ負け組になってしまう」「自分ブランドを作らなければ」「大きな成果を上げなければ」と考えてしまうらしく、結果、無理をするようになりがちなのである。しかし、この考えは捨てなければならない。そうでないと、逆に成功から遠ざかる一方になるだろう。

 ある女性の税理士の話をしよう。彼女は几帳面で非常に頼りになる性格。税理士としての仕事には向いているように見えた。ところがなかなか結果が出ないのである。

成功者の真似をやめた女性税理士の気付き

 なぜかというと、彼女は、オリジナリティーを身に付けようと専門分野を絞ろうとしたり、社会的地位のある人間をクライアントにすることばかり考えていたのである。

 要は成功者たちのまねをしようとしていたのだ。だから、かえって顧客がなかなか増えないし、実践経験を積むこともできなかったわけである。

 確かに大口の顧客をつかんだり専門性を持つことも重要かもしれない。だが、そうなるのは、あくまで仕事を続けた上での結果であり、当たり前のことを当たり前にできた上での話であるにすぎない。

 賢明なことに、彼女は自ら自分のやり方がまずいことに気付いた。これではだめになると考えて、これまでとは仕事のやり方を変えた。

 税理士のような専門性の高い仕事は、例えば決算書を遅れず確実に出すなど、きちんとしたことを積み上げれば評価されていく。それに気づいて、小さいことをコツコツと積み上げていくことに決めたのだ。 

 これを続けることよって、やがて彼女はクライアントを多く持つようにな`り、徐々に相続分野などの専門性も磨き上げる段階に踏み出した。

地道な努力の延長線上に独自性や専門性を得る

 「何かすごいことをしないといけない」。そう焦っている人には、成功は近づいてこない。「お客さまから求められていること」と、「自分が一所懸命にやっていること」が噛み合っていないのだ。

 仕事は「自分にできること」と「相手が求めること」が擦り合って初めて成り立つ。「自分がやるべきことはこれしかない」とか「これでしか自分が生かせない」と決めつけていると、相手の求めることにも気付くことができず、仕事の選択肢もどんどん狭まっていくのである。そしてその狭くなった選択肢を、誰も求めなくなったらあなたの出番はない。

 オンリーワンを目指す必要はない。相手が求めることに1つずつ地道に応えればいい。弊社の笠井も最初は人前に立つことも苦手だった。でも、女性に好かれるタイプという自分の特性を生かし、地道に求められるものを続けていった結果、ある保険会社で個別相談率7万人中全国5番以内の成績を収めるような、圧倒的な専門性をつかむことができた。

 とてつもなく稼ぐ人は地道な努力の延長線上に、圧倒的な独自性や専門性を獲得していっているのだ。

[今号の流儀]

仕事は「できること」と「求めること」の交点で成立する。

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