政治・経済

 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)承認案や関連法案の今国会での成立は見送られ、秋の臨時国会に先送りされることが決まった。その原因の一つである衆院TPP特別委員会での審議停滞は、西川公也委員長のTPP内情暴露本の出版をめぐるトラブルに加え、担当閣僚のちぐはぐな答弁も要因となった。中でも森山裕農林水産相の“ある答弁”が与野党に大きな波紋を広げたようだ。

 それは4月19日の衆院TPP特別委で、森山氏が民進党の玉木雄一郎氏からTPP交渉における国会決議で関税維持を求めたコメなど重要農産品5分野について、質問を受けた際だ。

 玉木氏からTPP交渉で「(重要農産品5分野のうち)以前と変わらず、完全に税率が守られ無傷となった品目はいくつあるのか」と問われると、森山氏は「枠内税率も枠外税率も変更も加えていない(無傷の)ものがあったかなかったかと問われれば、それはない」と明言したのだ。これに対し玉木氏は、「今の答弁を総合すると、やはり国会決議は守られていないと結論づけざるをえない」と強調。今後の審議で追及する構えを示し、野党反撃の糸口を作った。

 この森山氏の答弁に仰天したのが自民党の農林族だ。「聖域なき関税撤廃」を前提とするTPPには参加しないと公約した自民党だが、この答弁は聖域とされた重要5分野で何一つ無傷で守り切れなかったことを自ら認めたことになる。農林族幹部はすぐさま答弁を考えた事務方を呼び出し激怒したそうだ。

 4月22日には早速、自民党で農林部会が開かれ、森山氏の答弁についての対応を協議。選挙を見越し、地元農業者から答弁について質問を受けた際の“模範解答”を模索したのだ。党としては「関税に変更を加えなかったかだけでなく、総合的判断をすべき」との共通認識を持つように呼びかけたが、議員からは「国内農業を守ったかどうかが問題」、「国会決議を守ることが重要」などと意見が錯綜し、納得のいく回答は得られなかった。

 翌23日の記者会見で重要5分野について、「対策をすることで、(国会決議は)しっかり守れている。国民の皆さんによく説明すれば、理解いただけると強く信じている」と強調した森山氏。国会決議が守られたかどうかは、7月の参院選で有権者が判断することになりそうだ。

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