国際

(写真:AFP=時事)

(写真:AFP=時事)

 読者の中にも1957年生まれの方がいるかと思う。そのあなたなら、かすかに、白黒テレビで放映された、初の衛星放送、当時は「宇宙中継」と呼ばれていた映像を覚えているかもしれない。あれは63年11月23日だった。ケネディは事前に挨拶を収録していたが、当日、臨時ニュースが飛び込んできて、録画は実況に差し替えられた。日本の放映は朝5時。こう始まった。「悲しいお知らせがあります」ケネディが暗殺され、世界が悲嘆にくれた時、あなたは5歳、大統領の娘、キャロライン・ケネディも当時、5歳だった。その彼女が駐日米国大使として間もなく赴任することとなった。

 ニール・ダイヤモンドの大ヒット曲「スウィート・キャロライン」は、ケネディの娘の幼い頃の写真にインスパイアされて作曲されたという「秘話」は、キャロラインの50歳の誕生日パーティーで初めてニールにより本人の目で前に明かされた。キャロラインはニューヨーク生まれ。ハーバード大とコロンビア大法科大学院を卒業し弁護士資格を取得。書籍編集などをしながら米東部マサチューセッツ州にある父親の名を冠した図書館の館長などを務めてきた。目覚ましい活躍ではないが、対外的には弁護士で作家、55歳で3児の母。スリムで、スタイリッシュ、できる女風である。

 ケネディ家は多くの政治家を輩出してきたが、キャロラインは、2008年に国務長官に就任するヒラリー・クリントン上院議員(当時)の後任候補に一時浮上したものの、外交・政治経験はない。このため、中国の海洋進出や北朝鮮の核・ミサイル開発などで東アジアの安全保障情勢が厳しさを増す中、4月に米メディアが日本大使起用を報じた際には異議も唱えられた。共和党で外交問題を受け持つドナ・ローラバッチャーはこう言っている。

“I thought it was an April Fool’s joke when I first heard about it”

〈最初この件を耳にしたときはエイプリルフールの冗談かと思いました〉

“Our economic and national security are based on good will toward Japan.”

〈われわれの経済や安全保障は日本との友好関係に基づいております〉

“I have nothing against Caroline Kennedy becoming ambassador to, say, Barbados.”

〈もしこれがカリブ海の小国バルバドスの大使になるのだということならともかく〉

“But Japan is too important for somebody with no experience.”

〈外国経験のない人間が赴くには日本はあまりにも重要な国です〉

現職のルース大使は、08年の大統領選でオバマ氏の資金集めに貢献して09年に駐日大使に起用。勲章みたいなものだったが、蓋を開けてみれば、愚かな鳩山民主党政権下で迷走した米軍普天間飛行場の移設問題への対応や、11年の東日本大震災後の救援、復旧をめぐる日米連携などに尽力し、結構奮闘させられた。10年に広島、12年には長崎の平和式典に米大使として初めて出席した。

 米国外交官協会によると米国大使ポストは、現在、188ある。このうち、外交官出身の大使が全体の60%以上を占める一方、外交経験はないがオバマの指名による政治任用の大使も30%近くいる。キャロライン・ケネディも政治任用の大使だ。政治任用の大使は、日本、英国、カナダなど主に米国の同盟国に駐在する傾向がある。一方、オバマが1期目で政治任用した大使59人のうち、オバマ大統領が初当選した選挙の時に多額の献金をした支持者が40人と70%近くを占めていて、これは歴代政権と比べると2倍以上の多さだ。こうした政治任用の大使は、大統領と直接パイプがあり有用だとする声がある一方、大使ポストが多額の献金をした富裕層に対する論功行賞になっているという批判もある。歴代の駐日米大使には多くの大物政治家が選ばれ、日米の関係強化や問題の解決に重要な役割を果たしてきた。カーターの下、77年から11年半にわたって大使だったマンスフィールドは上院院内総務として歴代最長の16年間君臨した民主党の大物議員として知られていた人物だし、クリントンの下で93年から大使を務めたモンデールは、副大統領の経験がある。ブッシュの下で01年から大使を務めたベーカーは、大統領首席補佐官の経験があり、知日派の大使として自衛隊のイラクへの派遣などで日米間の調整役を担った。

 一方で、最近は政治経験は少なくても大統領と個人的に強いつながりを持つ人物が選ばれるケースが続いた。

 05年から大使を務めたシーファーは当時のブッシュ前大統領と大リーグ球団「テキサス・レンジャース」を共同で経営したことで知られ、また、現在のルース大使も、弁護士の出身ながら08年の大統領選挙でオバマに多額の献金をするなど大統領と個人的に親しい間柄で、選挙への貢献を高く評価した結果の人事とされている。

 キャロラインもその口だ。

 キャロラインはオバマをこう評する。

“Obama is the kind of leader my father wrote about in “Profiles in Courage”. He doesn’t just do what’s easy. He does what’s hard. He does what’s right.”

〈オバマは私の父が著書『勇気ある人々』で描いたような、安易な道を選ばない男、困難な道を選ぶ男、正しいことをやり遂げる男、ですわ〉

 とエールを送った。ケネディ家からのお墨付きは、政治家にとってはありがたい。

[今号の英語]Dear
 Dearは親愛なる、という意味で手紙の冒頭に付けるが、口語でこんな使い方もある。オバマの言葉だ。
“Caroline Kennedy has become one of my dearest friends and is just a wonderful American, a wonderful person.”
〈キャロライン・ケネディーは私の最も親しい友人であり、ただただ素晴らしい米国人であり、素晴らしい人物なのです〉
 2代目同士、安倍首相とはうまくやっていけるかもしれない。

 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

グローバルニュースの深層

一覧へ

習近平政権下の中国経済と新時代の到来

[連載] グローバルニュースの深層

グローバルニュースの深層

[連載] グローバルニュースの深層

原油事情に関するロシアの分析

[連載] グローバルニュースの深層

プーチン露大統領の内外記者会見

[連載] グローバルニュースの深層

中間選挙後の米国を展望する

[連載] グローバルニュースの深層

中国を制するものは世界を制す

変貌するアジア

一覧へ

鴻海によるシャープ買収のもう1つの狙い

[連載]変貌するアジア(第37回)

変貌するアジア

[連載]変貌するアジア(第36回)

SDRの一翼を担う人民元への不安

[連載]変貌するアジア(第33回)

開催意義不明の日中韓首脳会議

[連載]変貌するアジア(第32回)

朱立倫の総統選出馬と台湾海峡危機

津山恵子のニューヨークレポート

一覧へ
無農薬野菜

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第20回)

CESの姿が変わる花形家電よりもネットワークに

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第19回)

米・キューバ国交回復のインパクト

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第18回)

クリスマス商戦に異変! 店舗買いが消え行く

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第17回)

格差問題が深刻化する米国―教育の機会格差解消にNY市が動き出す

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

売上実績トップ企業に聞く「住宅リフォームの最新トレンドと課題」―榎戸欽治・ニッカホーム会長

素人にはなかなか分かりにくい住宅リフォームの世界。最近の業界動向と事業戦略について、売り上げ規模で全国ナンバーワンを誇るニッカホーム創業者の榎戸欽治会長に聞いた。(聞き手=吉田浩)榎戸欽治氏プロフィールリフォーム業界におけるニッカホームの競争力水廻りと木工事を絡めた中型リフ…

榎戸欽治・ニッカホーム会長

家族葬のファミーユが目指す「生活者目線で故人に寄り添う」葬儀の形

不動産のノウハウや技術を生かしサステナブルインフラへ―いちご

新社長登場

一覧へ

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

2019年4月、国内インターネット専業証券で初の女性社長が誕生した。創業者であり、カリスマ社長と呼ばれた松本大前社長から後任を託されたのが清明祐子氏。清明氏は09年にマネックスグループに入社し、子会社社長やグループ役員を経て、マネックス証券の社長に就任した。清明社長はカリスマの後任としてどんな会社をつくってい…

マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

「事業部門の連携を活性化させ営業利益100億円を目指す」 内藤宏治(ウシオ電機社長 )

イノベーターズ

一覧へ

シリコンバレーへの挑戦が生んだ「起業家と投資家が待ち望んだサービス」― 戸村光・ハックジャパンCEO

起業家のスタンスとして、画期的な技術やビジネスモデルを社会で活かすことを目的としたイノベーション先行型もあれば、社会課題解決を最優先とし、そこに必要な技術やノウハウを当てはめていくやり方もある。ハックジャパンCEOの戸村光氏の場合は後者。対象となる課題は「身の周りの気付いたことすべて」だ。(取材・文=吉田浩)…

戸村光・ハックジャパンCEO

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年12月号
[特集] 沸騰する食ビジネス!!
  • ・食ビジネスが熱い!! 未来型食品が社会課題を解決する
  • ・市場規模70兆円! 食ビジネスが過熱するわけ
  • ・完全バランス栄養食で誰もがラクして健康になれる
  • ・人工光型植物工場で世界の食と農に新しい常識を
  • ・宇宙食ビジネスで勝ちに行く 10年後に5千億円市場創出へ
  • ・“大人の給食”で栄養の基盤をつくる
  • ・人工肉で糖質制限者に無制限のおいしさを
  • ・テクノロジーで高品質なジビエ調達が可能に
  • ・昆虫食ビジネスの時代到来
[Special Interview]

 伊藤秀二(カルビー社長)

 掘り出そうカルビーの未来

[NEWS REPORT]

◆エンジニアへの高額給与で 富士通は生まれ変われるか

◆豊田章男・自工会会長が挑む東京モーターショー100万人

◆消費増税で現金主義は終焉 キャッシュレス時代が到来した

◆加速するeスポーツ市場! インテルが東京で世界大会を開催

[総力特集]

経済界創刊55周年記念 新しい日本のかたち

東京1964からの55年と東京2020以降の日本の姿

ページ上部へ戻る