文化・ライフ

前回は、事業構想大学院大学の学長としての意気込みを語っていただいた田中さん。今回は編集者としての歩みや、仕事に対する思い入れ、そしてこれからの目標などについて伺いました。

田中里沙氏の思い 老舗雑誌に新しい流れをつくり出す

佐藤 広告の世界も紙媒体以外のメディアが増えて、随分変わったのではないでしょうか。

田中 近年の変化の中で一番大きいのはメディアの変化だと思います。メディアは生活に密着していますし、仕事のやり方にも影響します。人々の情報との距離や接し方が大きく変わっている印象です。

20160607SANSAN_P01

(たなか・りさ)1966年生まれ、三重県出身。89年学習院大学卒業後、広告会社入社。93年宣伝会議に転籍し、企画宣伝、マーケティングなどを経て、95年『宣伝会議』編集長就任。新市場の多様化に即し、『販促会議』『広報会議』を立ち上げる。2003年より『環境会議』『人間会議』の編集長。12年事業構想大学院大学教授就任とともに、月刊『事業構想』を創刊。16年4月事業構想大学院大学学長就任。

佐藤 人口も減っていますし、誰もが新聞を取る時代でもなくなりましたからね。

田中 宣伝会議では社員全員が新聞を読んだり、年賀状は元旦にきちんと届くように出そうと呼び掛けたりする文化があるのですが、世の中の変化をうかがいつつ、新旧交代も考えなければならない時期です。

佐藤 「旧」の部分を知らないと新たなこともできないですからね。田中さんが若くして編集長になった時もそんな状況だったのではないですか。

田中 29歳の時に編集長になったのですが、当時は広告ビッグバンのような動きが出てきて、情報の環境が大きく変わろうとしていました。『宣伝会議』もちょうど40周年に差し掛かり、前例を打ち破らないといけない時期だったんです。一緒に伸びていく、新しい読者の開拓も必要でした。老舗の雑誌なので、私以上に雑誌のことをご存じの方もいらっしゃいました。そういう方々に雑誌の魅力や、やるべきことなどについて教えていただき、多くの世代の方のご縁を頂いたことがありがたかったです。スタートしたばかりで失うものはあまりなかったですし、同世代の女性編集者もいたので一緒に新たなものをつくろうと頑張りました。

佐藤 若い時は寝なくても元気に仕事できますしね(笑)。

田中 ワークライフバランスはもちろん重要ですが、この仕事はオンとオフの切れ目があまりないですし、仕事と私生活を両方楽しめるようなマネジメントを模索したいと思います。

佐藤 雑誌で表現したいのはどんな部分ですか。

田中 コミュニケーションの雑誌ですから、人と人がつながる部分を大事にしたいです。その意味で、自分自身がメディア的な役割を果たせるのも楽しいところです。人が生み出すアイデアや可能性を重視しているので、仕事から得られるものは非常に大きいです。

子育てでもコミュニケーションを学んだと語る田中里沙氏

佐藤 お子さんがいらっしゃるんですよね。仕事との両立は大変でしたか。

20160607SANSAN_P02田中 子どもが生まれたばかりの頃は、仕事をしながら子どものことを心配するのは良くないので、目の前のことにしっかり向き合うよう意識しました。子どもはどんなに愛情を注いでも所詮自分とは違うひとりの人間です。そこでも、お互いを分かり合うために、人はもっとコミュニケーションを取るべきと学んだので、外の人に対する接し方も変わりました。

佐藤 今後の夢や目標を聞かせてください。

田中 専門にしている広告や広報は、人の良いところを見いだして世の中に広く知ってもらうことです。いわば、社会や人を応援していく立場なので、マーケティングやクリエーティブの機能をまだ活用していない分野や地域に、もっと生かしてもらえるようにすることが目標です。


対談を終えて

20160607SANSAN_P03同じく出版に携わる立場として、仕事を持つ女性として、参考になる話をたくさん聞かせていただきました。これからも大きなパワーで、後に続く世代を引っ張って行ってほしいと思います。

前編はこちら

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