政治・経済

日ごとに増す憲法改正への意気込み

 「常識的に考えれば、衆参ダブルはあり得ない。だけど、安倍首相はそれでも解散に打って出る可能性がある。そのときのために、準備だけはしておかなくては」

 自民党中堅衆院議員は、悲壮感すら漂う表情でこう語った。4月24日に行われた北海道5区衆院補欠選挙は、自民党公認の和田義明氏が、無所属の池田真紀氏を破り、初当選を果たした。しかし、その差は1万2325票。

 「弔い合戦の勝率は9割以上。本来なら、開票直後の午後8時過ぎに当確がでなければ、おかしい選挙」(自民党北海道連関係者)だが、当確は午後10時20分ごろという接戦だった。投票率は、前回(2014年)の衆院選を0.8ポイント下回った。「前回を1ポイントでも上回れば勝てていたかもしれない」(民進党関係者)との声さえ聞こえてきた。裏返せば、自民党にとって厳しい選挙で、弔い合戦でもこのような状況なら、ダブル選挙にしていい結果が得られるはずがない、なのに安倍晋三首相は前のめりの姿勢を崩していないというのだ。その理由は憲法改正に他ならない。

 「安倍首相は、何としても憲法改正に着手したい。そのために、衆参ダブル選をやるやらないは別にして、解散権をフリーハンドで握っておきたい考えだ」

 こう語るのは、官邸関係者。菅義偉官房長官は、衆参ダブルに猛反対を示し、公明党も反対の立場で衆院選の準備は全くしていないという中、ダブル選の可能性は極めて低いというのが、一般的な見方だ。しかし、安倍首相の憲法改正への意気込みは日ごとに増しているようだ。

 「私の在任中に成し遂げたいと考えている」

 5月2日、参院予算委員会で安倍首相は、民進党の大塚耕平氏の質問に対し、こう答えた。続いて、翌3日、改憲派の団体が主催した「公開憲法フォーラム」に安倍首相はビデオメッセージを寄せて、こう語った。

 「憲法は国民のものであります。新しい時代にふさわしい憲法とはどうあるべきかという観点から、自由闊達に議論できる雰囲気の中で、国民が真剣に考え、しっかりと冷静に議論する環境をつくるべきだと思います。憲法に指一本触れてはならない、議論すらしてはならないなどといった思考停止に陥ってはなりません」

イラスト/のり

イラスト/のり

 「(自民党は)立党以来、党是としてずっと憲法改正を主張してまいりました。今後とも、これまで同様、憲法改正を訴えてまいります」

 政治ジャーナリストはこう解説する。

 「ダブル選の有無はともかく、まずは夏の参院選で、改憲勢力を結集し、参院で3分の2を確保して憲法改正の足掛かりをつけていきたいとの意欲の表れです。安倍首相の自民党総裁任期は18年9月まで。それまでに国会発議と国民投票による実現に漕ぎ着けたいのでしょう」

 祖父・岸信介元首相の悲願達成を自身の手で成し遂げたい――巷間伝えられる安倍首相の“思い”は、並々ならないものがあるという。

悲願達成に向け安倍政権最終章へ

 では果たして、衆参ダブル選はあるのか。自民党関係者はこう語る。

 「いわゆる“時間差ダブル”の可能性が高いのではないか。つまり、今秋解散して衆院選で信を問う。もちろん、参院選の結果を踏まえてではあるが、ね」

 この言葉を読み解くヒントは、自民党幹部の発言からうかがうことができる。例えば、高村正彦副総裁が5月6日、訪問先の中国・北京で消費増税について次のように述べたのだ。

 「熊本地震の影響と『合わせて一本』ということもある」

 現在の世界経済の収縮を見極めた上で、増税を先送りする可能性を示唆した。その先送りの是非を決断する時期については、「必ずしも夏の参院選前に行う必要性はない」とも強調している。参院選後の判断でも構わないと言っているのだ。

 加えて、ダブル選について

 「熊本地震の中でできるか。当然考えなければならない大きな事象だ」と、否定的な考えを示した。つまり、参院選後に消費増税の再先送りを決めた上で、衆院解散はあるとの見方だ。

 永田町関係者はこう読む。

 「参院選で、野党の選挙協力がどこまで進むのか、それが有権者にどれだけ支持されるのかを見極める必要があります。その上で“やれる”となれば、年内解散に打って出て、悲願達成に向けた“安倍政権最終章”に突入するのではないでしょうか」

 現実味を帯びてきた年内解散の“時間差ダブル選”。消費増税再延期をセットにしての“改憲解散”は、あり得る話だ。参院選の結果が、今後の政局に大きく左右することは間違いない。

憲法改正へ12月解散?

 

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