マネジメント

業界シェア2位のみそメーカーであるハナマルキ。2018年に創業100周年を迎えるにあたり、「液体塩こうじ」をはじめとする新商品の開発や海外展開を通じて事業基盤を拡充している。3代目社長である花岡俊夫氏に、今後の戦略について話を聞いた。 文=本誌/鈴木健広

ハナマルキが誇る液体塩こうじで国内外での躍進を図る

―― 創業100周年を迎えるにあたっての感想は。

花岡 当社は私の祖父が1918年(大正7年)に設立しました。長野県にある製糸工場の女工さん向けにみそやしょう油を製造、販売し始めたのがきっかけです。戦前、戦中、戦後を経て続いてきたわけですから、非常に重みを感じますね。

 現在、100周年記念として長野県伊那市にある本社工場内に「みそづくり体験専用施設」の建設を計画しています。一般のお客さまに開放して、みそづくりを体験していただく予定です。自分でつくったみそのおいしさはひとしおです。一人でも多くの消費者が当社のみそに触れる機会を増やすことで、事業環境の変化に対応していきたいと考えています。

―― 事業環境の変化とは。

20160621HANAMARUKI_P01

花岡俊夫・ハナマルキ社長 (Photo=佐藤元樹)

花岡 2011年の東日本大震災以後、東京電力の計画停電などをきっかけに消費者の料理にかける時間がますます短くなっていると感じています。当社では袋入りやカップタイプの即席みそ汁の品揃えを拡充することで、お客さまの利便性に高めています。即席みそ汁は全体的に好調で、昨年における当社の売り上げを牽引しました。

 そのほか、消費者の健康志向や本格志向に対応して、減塩みそや高級みそも取り扱っており、当社では合わせて500程度の商品をラインアップしています。他社にかなりの割合を生産委託している競合メーカーがいる中、私たちは本社工場と群馬県にある大利根工場で全体の9割程度を自社生産しています。品質を維持しながら多品目を生産できるという強みを生かして、事業を伸ばしていきます。

―― 塩こうじの生産・販売にも力を入れていますね。

花岡 塩こうじは、肉や魚、野菜などいろいろな食材の旨味を引き出すことのできるオールマイティーな調味料です。数年前にブームの第一陣が到来した時、マーケットに商品を投入しましたが、競合する数十社も同じように塩こうじを発売していました。塩こうじは伝統的な調味料でシェアを広げるのに労力と時間がかかる上、他社と同じような商品だと価格競争に巻き込まれてしまいます。そこで、業界に先駆けて開発したのが「液体塩こうじ」です。私がある酒屋の工場を訪れた時に、もろみを圧搾してお酒をつくる過程を見て思い付きました。ペースト状のものに比べて使い勝手が良く、大変人気の高い商品です。家庭用は発売1カ月で40万本のヒットを記録したほか、業務用についても全国350以上の事業所に納品しています。非常にポテンシャルの高い商品ですから、将来的には、納品先を現在の10倍程度に拡大したいと考えています。近いうちに減塩タイプの液体塩こうじの発売を控えており、今後についても大いに楽しみです。

―― 塩こうじについては海外展開も進めていますが。

花岡 昨年8月、タイ・バンコクに「ハナマルキタイランド」という現地法人を設立しました。

 液体塩こうじの拡販を主な目的にしていますが、現在、現地企業の仕入れ担当者からの引き合いが少しずつ増え、手応えを感じているところです。タイは鶏肉などの加工工場が多い上、日本以上にビジネスでの決裁が早いため、順調に行けば液体塩こうじの拡販が一気に進むでしょう。

 また、アジア以外では北米、欧州でも事業に手応えを感じています。

塩こうじ以外の商品もハナマルキの大きな収益源に

―― その他の販売戦略として、通販チャネルの現況はいかがですか。

花岡 通信販売についてはこれからですね。最近は楽天市場にも出店しており、じっくり事業を大きくしていきます。通販では「にっぽんのお味噌汁」や「三角パック」といった即席みそ汁がヒットしています。今後は顧客リピート率を高める施策を実行するほか、通販専用の新商品の開発を進めていきます。現在は試作品をつくっていて、今秋ごろに新商品をリリースする予定です。今までわれわれが培ったノウハウを生かした面白い商品が出来上がると思います。将来的には通販でまず発売し、そこでヒットした商品を一般流通で扱うなど、それぞれのチャネルを有効活用していきたいですね。

―― 今後の展望について。

花岡 昨年1年間の売上高は前年比1.5%増の172億円となりました。今年の売り上げも7%増を見込んでいます。皆さんには意外に思われるのですが、当社では、実はみそ、塩こうじ以外にお菓子の原料も製造していて、安定した収益源の1つに育ちつつあります。今後も当社の技術を生かせる領域で、商品を展開する可能性は十分あると思います。

関連記事

好評連載

銀行交渉術の裏ワザ

一覧へ

融資における金利固定化(金利スワップ)の方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

銀行交渉術の裏ワザ

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)

定期的に銀行と接触を持つ方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)

メーン銀行との付き合い方

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)

金利引き上げの口実とその対処法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)

融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける

元榮太一郎の企業法務教室

一覧へ

社内メールの管理方法

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

企業法務教室

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)

タカタ事件に学ぶ 不祥事対応のプリンシプル

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)

「ブラック企業」という評価の考察

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)

コミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)

女性の出産と雇用の問題

本郷孔洋の税務・会計心得帳

一覧へ

税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」

[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

税務・会計心得帳

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)

グループ法人税制の勘どころ

[連載] 税務・会計心得帳(第17回)

自己信託のススメ

[連載] 税務・会計心得帳(第16回)

所得税の節税ポイント

[連載] 税務・会計心得帳(第15回)

固定資産税の取り戻し方

子育てに学ぶ人材育成

一覧へ

意欲不足が気になる社員の指導法

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

子どもに学ぶ人材マネジメント

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)

子育てで重要な「言葉」とは?

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)

女性社員を上手く育成することで企業を強くする

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)

部下の感情とどうつきあうか

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)

“将来有望”な社員の育て方

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

「創造と変革」を掲げリーダー教育事業を展開しているグロービス。未来が予見しづらい混迷の時代を迎え、まさに新たな時代を切り拓いていくリーダーが求められている。そのような状況を受けて、グロービスは昨年、新たに執行役員以上に限定したエグゼクティブ向けのプログラム「知命社中」を開設した。[PR]次世代を担う経営リーダ…

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポート――中島優太(エベレディア社長)

「支持政党なし」をつくった男のユニークな発想とビジネス――佐野秀光(情報通信ネットワークグループ社長)

新社長登場

一覧へ

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

創業から95年、海外に進出してから50年以上たつ国際派企業の高砂香料工業。合成香料では日本最大手であり、国際的にも6%以上のシェアを持つ優良企業だ。100年弱の歴史を持つ高砂香料工業── まず御社の特徴をお聞かせください。桝村 1920年創業ですから、2020年に100周年を迎える香料の専門メーカーです。基本…

桝村 聡

「ネット広告が変わってもクライアント本位の姿勢は変わりません」--バリューコマース社長 香川仁

「最新情報を発信、人と企業の働く環境を良くしていきます」--マンパワーグループ社長 池田匡弥

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

デザイナーズ家具のEC販売で業界の“常識打破”に挑戦――リグナ社長 小澤良介

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 教育部門と…

大学の挑戦

創立100周年を控えて「世界に貢献し、インパクトを与える人」の育成に努めます――西南学院大学・K.J.シャフナー学長

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

企業eye

一覧へ

不動産の現場から生産緑地の将来活用をサポートする――ホンダ商事

ホンダ商事は商業施設や宿泊施設の売買仲介、テナントリーシングを手掛けている。本田和之社長は顧客のニーズを探り最適な有効活用を提案。不動産の現場から、生産緑地の将来活用など社会問題の解決にも取り組む。── 事業の概要について。本田 当社は商業施設やホテル、旅館の売買・賃貸仲介(テナントリーシング)を…

企業eye

社員の人間力を武器に5期連続増収を果たす投資用不動産会社――パートナーズ

クラウドソーシングを活用した動画制作やオンライン動画制作プラットフォームを提供――Crevo

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年7月号
[特集]
社会課題で儲ける!

  • ・総論 グローバリズムとどう折り合いをつけるのか
  • ・なぜ、よしもとは社会課題と向き合うのか 大﨑 洋(吉本興業共同代表取締役CEO)
  • ・茶葉から茶殻までバリューチェーン全体で価値を創造する 笹谷秀光(伊藤園顧問)
  • ・持続可能な経営は、持続可能な地域が支えている キリンホールディングス
  • ・人生100年時代の健康問題に取り組む ファンケル
  • ・世の中に貢献する中で商売を広げていく ヤマト運輸
  • ・社会課題を解決する金融モデルは、懐かしい過去に学ぶべき 吉澤保幸 場所文化フォーラム名誉理事

[Special Interview]

 芳井敬一(大和ハウス工業社長)

 創業のDNAに立ち戻り、オーナーの教えを伝承・実践

[NEWS REPORT]

◆史上最高益でも原価低減 豊田章男の「原点回帰」

◆成長戦略再考を迫られた富士通の苦境

◆市場規模はバブル前に逆戻り 規模より知恵を問われるビール商戦

◆7兆円M&Aを仕掛けた武田薬品の野望とリスク

[特集2]

 オフィス革命 仕事場を変える、働き方が変わる

ページ上部へ戻る