文化・ライフ

今回はLUFTホールディングス社長の南原竜樹さんをゲストにお迎えしました。多くの方がご存じのとおり、売上高100億円から一気に破綻寸前まで追い込まれながらも、這い上がった波乱万丈の経験を持つ経営者です。そんな南原さんの人物像と考え方に迫ります。

南原竜樹社長のジェットコースターのように浮き沈みの激しい人生とは

佐藤 南原さんは、ジェットコースターのように浮き沈みの激しい人生を歩まれた経験が、ある意味勲章みたいになっていますね。

20160621SANSAN_P01

(なんばら・たつき)1960年岡山生まれ、愛知育ち。大学在学中に高級外車の並行輸入で起業し、88年オートトレーディングルフトジャパンを設立。人気テレビ番組「マネーの虎」への出演などで知名度を上げる。2005年に英国MGローバー社の経営破綻の影響を受け、全従業員の解雇という事態に見舞われるも、会社を再生し、現在は飲食店経営、自動車の個人売買、医療派遣、レンタカー、出版事業など多方面で展開。15年LUFTホールディングスに社名変更。

南原 勲章ではないですが「そういう人生のほうが楽しいよ」と周囲には話していますね。

佐藤 事業を始めたのは学生時代だそうですが、昔は起業のハードルも高かったのでは。

南原 今は名刺に携帯番号とメールアドレスを書けば済みますからね。当時は留守番電話を外出先から聞くこともできなかったし、起業する時は事業所を借りて事務員を雇わないといけなかった時代。僕も最初は、知り合いの修理工場の一角を借りて事務所として使っていました。電話契約に30万円の保証金と30万円の権利金、それと自動車電話も使っていたのでその工事費が30万円掛かりました。それに比べると、いかに今は起業しやすいことか。親からは「いつまでもプー太郎しているんじゃない」と言われていましたが、25歳の時に1カ月の稼ぎが3千万円くらいありました。

佐藤 周囲からは随分やっかまれたのではないですか(笑)。

南原 友達は誰もいなくなりましたね(笑)。居酒屋に行って、金がない友達に奢ってあげると喜ばれたんですが、それが何回も続いて「南原、今日もゴチな」と言われた時に、ちょっと違うよなと。それでみんなと飲みに行くのを止めてしまいました。

佐藤 今は幅広く事業を展開していますが、儲かる事業を見つけ出す秘訣は。

南原 タイミングが重要です。自動車の並行輸入を始めた当時はベンツやBMWがバンバン売れていて、そういうときにドンと仕入れて販売するルートを開拓したから成功しました。肉体改造のパーソナルトレーニングジムも、広まったのはタイミング良く始めたから。今、全国に同様のジムが200から300あると言われていますが、ある人によれば、その95%は僕のジムがルーツだということです。結局、時流をどうつかまえて、世の中に出していくかなんです。

20160621SANSAN_P02佐藤 その嗅覚はすごいですね。

南原 大事なのは情報と知識。例えば成功した例では、1995年にメキシコでペソが大暴落した時に、古いフォルクスワーゲンビートルを4千台ほど輸入しました。北米自由貿易協定(NAFTA)が結ばれたので、ペソが値下がりするチャンスを虎視眈々と狙っていたら、一気に暴落しました。中古で100万円ほどだったビートルが半値くらいになったんです。それを大量に購入して、日本に輸入して売ったら爆発的に売れた。そういうことを常に考えていると、一般の人が他人事と考えるニュースも、ビジネスチャンスとして生かせます。

南原竜樹社長の輸入車事業が破綻した時の状況とは

佐藤 輸入車の事業が破綻した時の状況はいかがでしたか。

南原 ご存じのように、仕入れ先のローバーが破綻して、またゼロになりました。ゼロから起業するより、事業を拡大してからゼロになるほうが復活は難しいんです。起業する場合は信用保証協会などからお金を借りやすいのですが、うちはローバーの破綻で特損を20億円くらい出していたので、そういう会社にお金を貸してくれるところはありません。ローバーが潰れても、バランスシート上はプラス45億円くらいありました。でも入ってくるお金がなくなったので、売り上げをすべて返済に回さなければいけなくなったのです。毎月1億円ずつくらいキャッシュアウトしていく状態で、不動産を含めた全部の資産を売るしかなくなりました。05年春にローバーが潰れて、それから従業員を全員解雇して、その年の12月には誰もいないオフィスを1人で掃除していましたね。

佐藤 そういう厳しい状況から復活されたことは、多くの経営者の励みになりますね。

 

事業再生の秘訣は「トレンドをつかみ当たり前のことをやる」

 

佐藤 事業を整理した後、サラリーマンになることも考えられたとか。

20160705SANSAN_P01

(なんばら・たつき)1960年岡山生まれ、愛知育ち。大学在学中に高級外車の並行輸入で起業し、88年オートトレーディングルフトジャパンを設立。人気テレビ番組「マネーの虎」への出演などで知名度を上げる。2005年に英国MGローバー社の経営破綻の影響を受け、全従業員の解雇という事態に見舞われるも、会社を再生し、現在は飲食店経営、自動車の個人売買、医療派遣、レンタカー、出版事業など多方面で展開。15年LUFTホールディングスに社名変更。

南原 敗戦処理にメチャクチャ疲れたので、求人情報誌に載っていたバスの運転手の募集に電話したこともあります。でも、年齢を聞かれて45歳と言ったら、35歳までだから駄目だと。当時、45歳からでも大丈夫なのはタクシーの運転手と夜間警備くらい。就職しようと思ったらできなかったから、商売で稼ぐしかなかったんです。

佐藤 その後は旅館の再生や沖縄のレンタカー会社の買収など、幅広く手掛けて成功されましたが、落ちこんだ事業を再生させるために必要なことは。

南原 きちんとしたトレンドがあるところに入って、経営の本質的な部分をしっかり押さえているだけです。当たり前のことを当たり前にやれば、商売は勝てます。例えば、講演会などで「今後10年間で売り上げが倍になるビジネスは何か」と尋ねるとみんな分からないんですが、答えは「棺桶」。高齢化社会で関連ビジネスの需要が増えるのは確実で、僕らがメディカルケアの事業をやっているのも、そのトレンドをつかんでいるから。人は棺桶に入る前には病院のお世話になるので、病院相手の仕事をさせていただいているわけです。

 後は、現場をしっかり見れば問題が見えてきます。旅館の再生をやった時は自分で配膳の手伝いもしたし、風呂洗いもしました。風呂桶に穴が開いていたので取り換えるように従業員に指示すると、「檜の風呂を取り換えると1千万円は掛かる」と言う。でも、知り合いの業者に尋ねたら「80万円でできる」と(笑)。そういうことも、自分で風呂桶を洗っているからよく分かるんです。

 

事業はいわばカーリング、起業というゲームに参加してほしい

 

佐藤 内輪の常識や慣習に縛られていると、見えないことがたくさんあるという良い例ですね。ところで先日、手掛けられている銀座のフレンチレストラン「ドミニク・ブシェ・トーキョー」にうかがいましたが、お金を掛けるところにはしっかり掛けていらっしゃいますね。

南原 このご時世に内装代だけでも1億8千万円くらい掛けています。お金を掛けるべきところに掛けてしっかりと積み上げた結果、豪華な雰囲気をつくり上げているので、人気が出て当たり前なんです。かたや、ウチのオフィスは事務所の机は貰いものだし、自分の洋服代も年間2万円くらい。商売にならないことにはビタ一文使いません。

佐藤 名古屋人はその辺がシビアですよね(笑)。地味でも安定している企業が多い印象です。

南原 名古屋は狭いから、夜逃げしてもすぐに分かっちゃうんです。名古屋の車屋さんはみんな僕の実家まで知っていますからね(笑)。昔からの人間関係があって堅いので、いい加減なことができないんです。

佐藤 これから起業を志す人にメッセージをお願いします。

南原 日本という国はお金を貸してくれるところもたくさんあるし、起業するリスクは思ったほどありません。失敗したとしても、サラリーマンに戻るのはそれほど難しくないでしょうし、ぜひチャレンジしてほしい。事業はギャンブルではなく、ゲームに例えるとカーリング。ストーンを投げた後、ほうきで方向を変えるように軌道修正できます。でも、投げないと始まらない。ぜひ、起業というゲームに参加してほしいと思います。


対談を終えて

20160705SANSAN_P02南原さんのオフィスは移転前の弊社と同じビルにあったため、よくお見掛けしていました。じっくりと仕事の話をしたのは初めてですが、やはりただ者ではありませんでした。近々上場を予定されているとのこと。ますますのご活躍を期待しています。

 

あわせて読む

[波瀾万丈・企業家物語]ゼロからの“やり直し”でスピード再生--南原竜樹(LUFTホールディングス社長)

関連記事

好評連載

二宮清純のスポーツインサイドアウト

一覧へ

米山公啓の現代医療の真相

一覧へ

見落としやすい薬の副作用

[連載] 現代医療の真相(第19回)

現代医療の真相

[連載] 現代医療の真相(第18回)

肺炎球菌ワクチンから見えるワクチン後進国日本

[連載] 現代医療の真相(第17回)

認知症・徘徊老人を受け入れる街づくり

[連載] 現代医療の真相(第16回)

サプリメント・ブームにもの申す

[連載] 現代医療の真相(第15回)

インフルエンザ予防接種は受けるべきか

吉田たかよしのビジネス脳の作り方

一覧へ

ネット検索の集中力は「独り言」で高まる!

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第20回)

ビジネス脳の作り方

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第18回)

人材育成のコツ ~部下の才能を褒めるとダメ人材に育つ~

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第17回)

株取引の損得は男性ホルモン量で決まる?

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第16回)

アルツハイマー病は脳の糖尿病!?

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

未来のモビリティ社会実現に向け日本と欧州の懸け橋に―シェフラージャパン

自動車産業・産業機械の世界的サプライヤー、シェフラーグループの日本法人で2006年イナベアリングとエフ・エー・ジー・ジャパンが合併して設立。国内4拠点で自動車エンジン、トランスミッション、シャーシなど精密部品、産業機械事業を展開する。文=榎本正義四元伸三・シェフラージャパン代表取締役・マネージング…

シェフラージャパン代表取締役 マネージング・ディレクター 四元伸三氏

日本一歴史の長い女性用化粧品会社が挑む「革新と独創」―伊勢半

【特集】2019年注目企業30

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

チェ・ゲバラに憧れた10代起業家が目指す「働き方革命」― 谷口怜央・Wakrak(ワクラク)社長

高校中退、ITスキルなしの17歳の青年が立ち上げた会社が、わずか2年で利用企業約500社、ユーザー約6万人のアプリを運営するまでに成長している。「世の中を変えたい」という思いを原動力に突っ走る谷口怜央・Wakrak(ワクラク)社長に話を聞いた。(取材・文=吉田浩)谷口怜央氏プロフィール…

Wakrak(ワクラク)社長 谷口怜央氏

ペット仏具の先駆企業が「ペットロスカフェ」で目指す癒しの空間づくり

元引きこもり青年が「cluster」で創造する新たなVRビジネスとエンターテインメント(加藤直人・クラスターCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年6月号
[特集] 進化するリーダーシップ
  • ・あなたは北風、それとも太陽?
  • ・小路明善(アサヒグループホールディングス社長兼CEO)
  • ・鈴木貴子(エステー社長)
  • ・千葉光太郎(ジャパン マリンユナイテッド社長)
  • ・二木謙一(國學院大學名誉教授)
[Special Interview]

 中村邦晴(住友商事会長)

 「正々堂々と向き合えば、仕事は人を幸せにする」

[NEWS REPORT]

◆パイオニアに続きJDIも 中国に買われる日本企業の悲哀

◆会社はだれのものなのか サイボウズと株主がつくる“共犯関係”

◆24時間営業はどこへ行く コンビニ業界未来予想図

◆トヨタとホンダが手を組み参戦 「MaaS戦争」いよいよ勃発

[特集2]ブランド戦略 新時代

 技術やデザインだけではない ブランドとは商品の哲学だ

ページ上部へ戻る