政治・経済

知事職への固執は「自民党へのリベンジ」

 舛添要一・東京都知事がついに辞任した。一連の騒動では、舛添氏は絶対的な「悪」や「ケチ」としてとらえられ、その「心情」を読み解くような報道はほとんどなかったが、辞任劇の中で、どんな「心情」が交錯していたのかを取材した。

 そもそも舛添氏が、徹底して知事職に固執したのはなぜなのか。世論は高額の海外渡航費用も、政治資金の家族宿泊や美術品購入などもすべて「不適切」であるとして、そこに怒っていた。ところが、舛添氏は第三者の元検事らの調査結果を盾にして「不適切」かもしれないが、「違法ではない」という部分にこだわっていたのだ。

 「これこそ彼らしい。自分自身や論理に絶対的自信を持っているから、最後まで、違法でないのになぜオレが辞めなきゃならないのかと本気で思っていただろう」(舛添氏と勉強会でずっと一緒だった自民党ベテラン議員)

 知事職への執着は恐ろしいほどだった。

 「1999年に初めて東京都知事選に挑戦して落選したが、そのとき80万票を獲り、舛添氏にとっては大きな自信につながった。そのあと国会議員になったが、心の半分は常に知事への思いだった。石原慎太郎氏が再選を目指すたびに、密かに知事選出馬の可能性も図っていた。そうしてようやく手にした以上絶対に放したくないという執念でしょう」(都庁OB)

 さらに、舛添氏を古くから知るシンクタンク代表は、知事職で力を発揮することは、舛添氏にとっては「根深い自民党へのリベンジ」というのだ。

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イラスト/のり

 「自民党幹部から『将来の総理候補』などと言われて国政に行ったが、自民党では厚労大臣どまり。それでも大臣までやれたと思うのが普通だが、自分に自信があるからそれでは満足できず冷遇されたと恨んだのだろう。今の東京都知事は絶大な権力者。オリンピックなども主導権をこちらが握り、永田町や自民党へリベンジという思いだ。それが再び永田町から辞めろと圧力がかかってきて、徹底して戦うというモードだ」

問われる自公の責任

 ところが、そんな一歩も引かない舛添氏の心を唯一動かしたのが、自民党東京都議団で舛添問題に対処してきた長老の内田茂氏。東京自民党の最高実力者。都議会議長や東京都連幹事長も務めその力は「国会議員もしのぐ」(自民党東京選出国会議員)と言われている存在だ。

 内田氏は先月半ば、舛添氏に「自民党としてはしばらく様子を見る」旨をいったん伝えた。

 「今辞めると参院選の最中でとても出直し知事選が戦えない。橋下徹・前大阪市長らが出てきて当選でもされたら都政は大混乱。それに選挙で応援して誕生させた“製造物責任”があるから、何かあるからすぐおろすというのでは有権者に説明がつかない」(自民党都議団幹部)ためだ。

 ただ、内田氏の読みは甘かった。連日のメディアや世論の批判は尋常ではなく、官邸や自民党本部からも「舛添知事への対応が甘いという批判が全国で起き、参院選へ影響が出始めている。切れ」との圧力がかかり、方向転換を余儀なくされたのだ。

 内田氏は、不信任案が出される都議会最終日前夜から当日の早朝にかけて舛添氏に接触した。

 関係者によると、内田氏は舛添氏にこう言ったそうだ。

 「何とかしようとやってきたが足並みがそろわず難しい。(自分=自民党に)不信任を出させるようなことはさせないでくれ。これまであなたを一生懸命守ってきたつもりだ。その恩返しをしてくれないか」

 唯一親身に接してきた内田氏の言葉に舛添氏は「もっと早くから内田さんと話をしてくればよかった」と礼を言って、身を引くことを決めたという。

 前出シンクタンク代表は「理論先行、理屈が先の舛添氏が、最後に政治の情のようなやり取りに心を動かした。それほど本音のところでは一連の攻防に疲れ切っていたのかもしれない」と舛添氏の心情を想像する。

 ただ、最終日の舛添氏の言動を見る限り、本会議でわずか2分ちょっとの説明しかしなかったこと、そして「最後の定例会見も、登庁もしないと都庁事務方に非公式に伝えてきた」(都庁幹部)ことなどから、本人は「決して納得していないぞという意思表示。内田さんへの信義を通しただけ」(同代表)なのだ。

 しかし、こうした「心情」をもって舛添氏の正当性が担保されるわけでもなければ、舛添問題が解決したわけでもない。ザル法の政治資金規正法の改正は待ったなしだろう。また、舛添氏を選挙で抱えて知事にした自公は、知らん顔で出直し選に血眼を上げているが、その前に都民に舛添氏を誕生させた責任を謝罪し頭を下げたか。この大騒動、まだまだやるべきことはある。

 

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