文化・ライフ

前回は、起業後の飛ぶ鳥を落とす勢いから転落までの経緯について語っていただいた南原さん。激しい人生を送られていますが、名古屋人の気性なのか、その本質は意外に堅実。しっかりと事業に取り組む姿勢について、今回は知ることができました。

トレンドをつかみ当たり前のことをやる

佐藤 事業を整理した後、サラリーマンになることも考えられたとか。

20160705SANSAN_P01

(なんばら・たつき)1960年岡山生まれ、愛知育ち。大学在学中に高級外車の並行輸入で起業し、88年オートトレーディングルフトジャパンを設立。人気テレビ番組「マネーの虎」への出演などで知名度を上げる。2005年に英国MGローバー社の経営破綻の影響を受け、全従業員の解雇という事態に見舞われるも、会社を再生し、現在は飲食店経営、自動車の個人売買、医療派遣、レンタカー、出版事業など多方面で展開。15年LUFTホールディングスに社名変更。

南原 敗戦処理にメチャクチャ疲れたので、求人情報誌に載っていたバスの運転手の募集に電話したこともあります。でも、年齢を聞かれて45歳と言ったら、35歳までだから駄目だと。当時、45歳からでも大丈夫なのはタクシーの運転手と夜間警備くらい。就職しようと思ったらできなかったから、商売で稼ぐしかなかったんです。

佐藤 その後は旅館の再生や沖縄のレンタカー会社の買収など、幅広く手掛けて成功されましたが、落ちこんだ事業を再生させるために必要なことは。

南原 きちんとしたトレンドがあるところに入って、経営の本質的な部分をしっかり押さえているだけです。当たり前のことを当たり前にやれば、商売は勝てます。例えば、講演会などで「今後10年間で売り上げが倍になるビジネスは何か」と尋ねるとみんな分からないんですが、答えは「棺桶」。高齢化社会で関連ビジネスの需要が増えるのは確実で、僕らがメディカルケアの事業をやっているのも、そのトレンドをつかんでいるから。人は棺桶に入る前には病院のお世話になるので、病院相手の仕事をさせていただいているわけです。

 後は、現場をしっかり見れば問題が見えてきます。旅館の再生をやった時は自分で配膳の手伝いもしたし、風呂洗いもしました。風呂桶に穴が開いていたので取り換えるように従業員に指示すると、「檜の風呂を取り換えると1千万円は掛かる」と言う。でも、知り合いの業者に尋ねたら「80万円でできる」と(笑)。そういうことも、自分で風呂桶を洗っているからよく分かるんです。

事業はいわばカーリング

佐藤 内輪の常識や慣習に縛られていると、見えないことがたくさんあるという良い例ですね。ところで先日、手掛けられている銀座のフレンチレストラン「ドミニク・ブシェ・トーキョー」にうかがいましたが、お金を掛けるところにはしっかり掛けていらっしゃいますね。

南原 このご時世に内装代だけでも1億8千万円くらい掛けています。お金を掛けるべきところに掛けてしっかりと積み上げた結果、豪華な雰囲気をつくり上げているので、人気が出て当たり前なんです。かたや、ウチのオフィスは事務所の机は貰いものだし、自分の洋服代も年間2万円くらい。商売にならないことにはビタ一文使いません。

佐藤 名古屋人はその辺がシビアですよね(笑)。地味でも安定している企業が多い印象です。

南原 名古屋は狭いから、夜逃げしてもすぐに分かっちゃうんです。名古屋の車屋さんはみんな僕の実家まで知っていますからね(笑)。昔からの人間関係があって堅いので、いい加減なことができないんです。

佐藤 これから起業を志す人にメッセージをお願いします。

南原 日本という国はお金を貸してくれるところもたくさんあるし、起業するリスクは思ったほどありません。失敗したとしても、サラリーマンに戻るのはそれほど難しくないでしょうし、ぜひチャレンジしてほしい。事業はギャンブルではなく、ゲームに例えるとカーリング。ストーンを投げた後、ほうきで方向を変えるように軌道修正できます。でも、投げないと始まらない。ぜひ、起業というゲームに参加してほしいと思います。


対談を終えて

20160705SANSAN_P02南原さんのオフィスは移転前の弊社と同じビルにあったため、よくお見掛けしていました。じっくりと仕事の話をしたのは初めてですが、やはりただ者ではありませんでした。近々上場を予定されているとのこと。ますますのご活躍を期待しています。

転落と復活を経て--南原竜樹(LUFTホールディングス社長)(前編)

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