国際

上昇志向の強いインド人

 中国に進出する日本企業の数には遠く及ばないが、近年インドに進出する日本企業も増加傾向にあり、2016年1月現在では1200社を超える。その中にはもちろんインドに製造拠点を設けて現地のインド人を大量に雇用する製造業もある。近年、そうした工場での労働争議が日本でしばしば報道されるようになっている。労働争議やストライキなどは最近の日本ではめったにないことでもあり、インドへの進出はリスクが高いと感じている日本企業もあるかもしれない。しかし、労働争議が起きない企業も多くある。インドをよく理解することでこのリスクは回避できるだろう。

 一般的な労働紛争の主な原因は、不当解雇、給与未払いまたは遅延、賃上げ要求(労働組合の場合)などである。また、紛争には至らないが、賃金やキャリアパスなどへの不満から優秀なインド人が離職していく場合もある。それでは、こうしたことを防ぎ、インド人従業員の忠誠心を引き出すには日本企業はどのように人材管理をしていけば良いのだろうか。

 現地の経営陣には、従業員からのレポートを基本としたコミュニケーションを密にすることを最優先事項とする。そのようにして現地のどの社員ともコミュニケーションを保つようにすることで、互いの距離を埋め、企業に対する愛社精神を引き出すことができる。それは当然ながら長期的には企業の成長につながる。また、このコミュニケーションは、マーケット洞察力を得るにもベストの方法といえる。

 日本人駐在員はインドにはまだ日本人向けの娯楽は少ないので、余暇にはせっかくなら現地の祝祭や行事に積極的に参加して、現地従業員とのコミュニケーションをとると良いだろう。

 日本人マネジャーは、本社の利益をインドで実現するために派遣されている。日本本社とインドの現地とのパイプとしての役割もある。彼らとの良好な関係性を築くことが業績にもつながる。その意味において、日本人マネジャーは、チームビルディングや組織育成に大きな関心を寄せるべきである。いかにチームを形成し、構成員を標準化し、そのパフォーマンスを向上させ、チーム全体を新たなステージにステップアップできるように導くかという指導力が問われる。だが、前述したように上昇志向の強いインド人を相手にする場合は、業務のあらゆる手順を監督し、意志決定はすべて日本人マネジャーが下すというようなタイプの指導はインドではあまり望ましくない。むしろ、各自の役割・責任を明確にした上でリーダーシップを発揮することが重要だ。

決して良くない日本企業の印象

 以前、インド国内、在日インド人、インド在住外国人に対して、日本企業での就労についてのインタビューを行ったことがある。その結果は、キャリアを求めるインド人の日本企業に対する印象は良好とは言い難いものだった。大学を出たばかりの新卒者の場合は、日本ブランドへの憧れから日本企業への就職に期待を抱いているが、実際には、「日本や海外への出張」、「研修を受ける」という希望が叶えられず、あれほど憧れていたブランドへの期待は失望に変わる。また、日本企業で勤務経験があるインド人からは、「インドでその企業が何を成そうとしているのか見えず、自分のキャリアの今後も見えなかった」、「上司がゴールや期待値についてあまり語ることはなかった」、「日本企業には、適切なフィードバックを行う仕組みがないと思う」といった指摘もあった。また、在日インド人からは「インド市場の動向によっては良いポジションと給与をもらえるかもしれないが、日本人上司のビジネスガイドにはなりたくない」という回答もあった。これらの回答は、日本人とは価値観の違うインド人の視点からなされているが、日本企業の傾向を見事に現しており、日本企業がどのように人材管理をしていけば良いのかというヒントをくれている。

 日本には「人は石垣、人は城、人は堀」という言葉がある。日本の城の石垣はさまざまな形と大きさの石で緻密に積み上げられ、容易には崩れないと聞く。インドもまた多様な人々の国である。彼らを適材適所に配置し、ひとつにまとめればきっと強力なパートナーになってくれるはずだ。

インドで労働争議を起こさないために(2)

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