テクノロジー

100%は作動せず

SCBSを搭載したマツダの「CX-5」(写真:時事)

 自動車業界関係者にとってはショックな出来事が起きた。

 ドライバーの操作なしで安全走行が可能な自動運転技術の開発競争が活発化する中、マツダの衝突回避支援システム搭載車が、試乗会で衝突事故を起こしたのだ。マツダ広報は「事故原因などの詳細については警察の捜査に協力中なので現段階でコメントは控えたい」としているが、衝突回避支援は自動運転車の実現に向けた重要な技術だけに、消費者の不安を煽らないか、懸念される。

 事故は埼玉県にある販売店の駐車場で、マツダのSUV「CX-5」の安全装備をユーザーに体感してもらうイベントにて発生した。この安全装備は「スマート・シティ・ブレーキ・サポート(SCBS)」と呼ばれるもので、CX-5の他に「アテンザ」にも搭載、今後は新型「アクセラ」にも導入される予定となっている。

 ただ、同システムは「どんな状況でも手放しで勝手に車が動き、勝手に止まる」という性質のものではないことは理解しておく必要があるだろう。SCBSの位置付けは、あくまでも衝突回避〝支援〟システム。具体的には、時速4~30㌔㍍の低速走行中が対象で、天候や障害物の大きさなどの条件によっては、作動しないこともあるという。主に、都心部などのノロノロ運転時に発生する事故を回避するために開発されたため、作動範囲の下限である時速4㌔㍍は人が歩く速さ、上限の30㌔㍍は駆け足の早さを想定しているとのことだ。もちろん、システムが作動中でもアクセルを踏むなど人為的な動作があった場合はそちらが優先されることになる。

 類似のシステムとしては「ぶつからないクルマ?」で有名な富士重工業の「アイサイト」がある。しかしキャッチコピーにあえて「?」マークが入っているところがミソ。富士重工の広報担当者は

 「アイサイトはあくまでも運転支援システムで100%作動を保証するものではありません。当社が過去に販売店で行ったテストでも、うまく止まらずにクッション材に衝突したケースはいくつかあります。ただ、そうした場合でも、安全性確保のために配慮すべき項目について販売店には十分に通達を行っているので、けが人は出たことがありません」と説明する。

 今回のマツダ車の事故はシステムそれ自体の不具合か、走行環境の不備か、ドライバーの何らかのアクションによるものか、今のところ結論は出ていない。ただ、自動運転技術はエコカー技術と並ぶ次世代車の目玉。現在開催中の東京モーターショーでも注目されているだけに、業界のムードに水を差したことは確かだ。 (本誌/吉田浩)

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