マネジメント

プリンスホテルが7月27日に開業する最高級ホテルが、「ザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町」だ。「赤プリ」の愛称で親しまれたグランドプリンスホテル赤坂の跡地に建つホテルとして注目されているが、現在の西武グループにおいてどのような意義があるのか。同社の事業戦略と絡めて、赤坂茂好社長に聞いた。文=村田晋一郎 写真=佐々木 伸

欧米の富裕層の取り込みを強化

 西武グループは「観光大国のトップランナー」を掲げており、ホテル・レジャー事業を担うプリンスホテルはグループの中核として、インバウンドの受け入れを積極的に進めている。実際に宿泊客数の外国人比率は年々増加。インバウンドは予約の動きが早い上、長期滞在が多いため、インバウンドを取り込むことで順調に稼働率が上がり、平均客室単価の上昇と共に収益が向上している。

 中国経済の減速や英国のEU離脱など国際情勢に左右される可能性はあるが、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを見据え、インバウンドの需要はまだまだ伸びると見ており、その対応を重点的に強化している。

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東京ガーデンテラス紀尾井町

 現在、プリンスホテルのインバウンドはアジア系の比率が高い。15年度の外国人宿泊客の国別の比率は中国、台湾、韓国で6割を超える。アジア圏の集客については、西武グループ全体で台湾地域との連携が強いことや、中国の需要を取り込んでいることが大きい。

 その一方で現在、ラグジュアリーホテルを中心に、欧米からの集客を強化している。「欧米系の単価が高い顧客層で、なおかつ長期的に泊まっていただける層に意識的に営業を掛けている」と赤坂茂好・プリンスホテル社長は語る。具体的には欧米のホテルブランドとの提携を進めている。

 プリンスホテルは、ベースとなる「プリンスホテル」、大型宴会場などを備えた多目的・多機能ホテルの「グランドプリンスホテル」、フラッグシップとなるラグジュアリーホテルの「ザ・プリンス」の3ブランドを展開している。東京都内には、プリンスホテルが東京、品川、新宿、サンシャインシティ(池袋)の4施設、グランドプリンスホテルが高輪と新高輪の2施設、ザ・プリンスがパークタワー東京とさくらタワー東京の2施設と、計8施設を構える。

 このうちラグジュアリーブランドであるザ・プリンスのパークタワー東京は11年に米プリファード ホテル グループの「プリファード ホテルズ&リゾーツ」に、さくらタワー東京は13年に米マリオット・インターナショナルの「オートグラフ コレクション」に加盟しており、欧米の富裕層への訴求力を高めている。これら2つのホテルは、プリンスホテルの他のホテルと比べて、特に米国人の比率が高くなっている。

 また、海外のセールス・PR拠点は現在、ホノルル、ロサンゼルス、パリ、上海、シンガポール、台北、バンコクの計7拠点を有している。この夏には新たな拠点をニューヨークとシドニーに開業する予定で、さらに欧米エリアからの集客の取り組みを強化していく。

今までのプリンスホテルにない「別格」のホテル

 欧米の富裕層の取り込みとしてさらに期待が高まるのが、7月27日にオープンする「ザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町」だ。グランドプリンスホテル赤坂跡地の再開発計画「東京ガーデンテラス紀尾井町」の一環で、36階建てのオフィス・ホテル棟「紀尾井タワー」の30~36階に位置する。かつて時代を象徴した「赤プリ」の跡地に建つホテルだけに、プリンスホテルとしては、これまでの3ブランドとは全く違うスタイルの最高級ホテルと位置付ける。

 「今までのプリンスホテルにはない新しいイメージのホテルを目指しサービスを提供していきます」(赤坂社長)

 ビル高層部の眺望の素晴らしさに加え、芸術的な内装で美術館(ギャラリー)にいるかのような雰囲気を醸しだすことが特徴。さらに宴会場を持たない宿泊特化型ホテルとして、今までのプリンスホテルとは異なる客層、具体的には海外の富裕層をターゲットにしている。

 それを後押しするように、開業前の時点で米スターウッドの最高級カテゴリー「ラグジュアリーコレクション」に加盟。ラグジュアリーコレクション加盟のホテルは日本ではほかに京都の翠嵐があるだけで、東京ではこのザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町のみとなる。

 初年度の年末から本格的に稼働を上げていき、来年度に7割、再来年度に8割の稼働率を想定している。なお、宿泊客の外国人比率は来年度が6割、再来年度は7割を見込んでいる。

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(あかさか・しげよし)1947年生まれ、栃木県出身。69年日本大学経済学部卒。76年国土計画(現プリンスホテル)入社。2003年取締役、長野・群馬地区総支配人、新潟・長野・群馬統括総支配人などを歴任し、15年8月副社長、同12月社長(現任)。16年6月西武ホールディングス取締役(現任)。

 赤坂社長はザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町の意義を次のように語る。

 「東京ガーデンテラス紀尾井町は西武グループが総力を結集してつくり上げたものであり、まさにグループのこれからの『飛躍』の象徴となる施設です。われわれのザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町も、エリアの価値向上に貢献できるように、ホテルの価値を上げていきたいと思います」

東京でのバリューアップと地域連携を強化

 プリンスホテル全体の戦略としては、質と価値の向上を進めている。その一環で東京エリアについては、改修工事を進めている。東京プリンスホテルは3月で休業し、4月からの1年間改修工事に入っている。またグランドプリンスホテル高輪も11月オープンの予定で改修工事を進めている。今回の改修は耐震補強が基本で、東京オリンピックを見据えて部屋数を確保しながら耐震基準を満たそうとするものである。

 

 この2つのホテルは耐震工事で全館休業に入ることに合わせ、バリューアップに向けたリニューアル工事も同時に行う。グランドプリンスホテル高輪については全客室、ロビー、一部レストランの改装を行っている。中でも、16室の和室を備えた別館は日本庭園との一体化を図り、旅館のような「和のおもてなし」を提供する空間に変えていく。11月より営業を開始する。東京プリンスホテルのリニューアルはコンセプトを明確にした上でバリューアップを進める方針。さらに、ザ・プリンス パークタワー東京でも、客室、ロビー、クラブラウンジの改装を7月から順次行う予定だ。

 また、東京と地方の連携も強化する。従来のシティとリゾートの送客連携に加え、今後は地方都市との連携を図る。その嚆矢が来年秋に開業を控える名古屋だ。

 「名古屋は国内外のお客さまの利用が多く、これからリニア中央新幹線ができれば、当然、名古屋―東京間は人の行き来が多くなる。当社は品川に大きなホテルを持っているので、名古屋に拠点を持つメリットは大きいと思っています」と赤坂社長は期待を語る。

 さらに景気に左右されずに顧客を獲得するという意味では、会員組織である「Seibu Prince Club(SPC)」の拡充を進め、重要顧客、生涯顧客の取り込みを図っている。SPCは従来、国内顧客向けだったが、7月からは訪日外国人向けに「Seibu Prince Club emi」を開始。海外のリピーターを獲得していく構えだ。

「最上質の日本」を体験してもらうために――小林 節(パレスホテル会長)

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