国際

“やればできる”と適応能力あるインド人

 インドは多面的で複雑性を併せ持つ国である。現代インドの若者はインターネットの世界でグローバル社会と接しているが、彼らが現実に生きる世界はそうではない。

 日本企業がインドで人材を採用する際には、インドの現状と若者世代の理想を橋渡しするような人材管理をすることが望まれる。他のグローバル企業は潜在市場のシェアを得るべく、インド社会のルールや慣習に溶け込む努力をしている。インド人のパフォーマンスを引き出すには、粘り強さと根気が必要である。

 柔軟性と適応能力は優秀な社員の特徴だとよく言われる。しかし、それは正確にはどんな意味だろうか? 今日の非常に競争的かつペースの速い社会環境によって、職場は以前より騒々しく不安定な場所になった。グローバリゼーション、リージョナル化(現地化)、新技術、変化する企業構造、ダウンサイジング、アウトソーシング、ビジネスの優先順位の変化やその他多くのことを考えてみると分かるだろう。

 ほとんどの人は安定した予測可能な環境を好み、変化という考えそのものに対して不安になり、抵抗感を示す。彼らは不慣れなことに抵抗して、先入観に基づく判断をする。そうした従業員は、旧態依然としたやり方を好み、変化がうまくいかない理由をくどくど繰り返す。しかし、頑固に物事に固執し、変化を拒否することは、不要な感情的動揺やストレスを生むだけだ。

 インドは過去に多くの問題に直面せざるを得なかったために、インド人は初めから“やればできるという態度”を持っており、現在でもほとんどのインド人の若者の間に見られる。インド人従業員は、環境に関係なく、会社にとっての代わりの解決策を思いつき、実行するのだと言う分析者も存在する。適応能力とは、人格の機能や認知に基づく行動のことであり、非認知能力だ。実はこのスキルが、インド人を世界企業のトップにさせているとも言える。

 1つの領域や分野における専門化や専門知識は、重要ではあるが、ほとんどの多国籍企業の人材採用担当者にとって、決定的な選別基準ではない。人材採用マネージャーが応募者の履歴書において期待する最も重要な職業上の能力は、適応能力だ。

こんなに多いインド出身のグローバルトップ

 グローバル企業のCEOは明らかに“適応リーダーシップ”を示す人であり、背景状況に関係なく、また多くの場合は快適ゾーンを超えて、他人や異文化間職場環境の潜在能力を引き出し、影響力を行使する能力を持っている人だ。これには、組織内の他者が、設定された目標に向かって成長・革新・実行していくことが可能になるように導くことも含まれる。適応能力と“やればできるという態度”の技能が組み合わさった考え方によって、インド人は、不明瞭な状態を受け入れることができ、常に物事を理解し、答えがある訳ではなくても大丈夫なのだ。曖昧な状況を受け入れ、いつ前進すべきかの判断力を持っている人もいる。しかし、そのためには不確実な環境で創造的に思考し、解決策を生み出し、プレッシャーに対処する能力が必要であることを彼らは知っている。

 グーグルの新CEOに就いたサンダー・ピチャイ氏、マイクロソフトの第3代CEOのサトヤ・ナデラ氏、シティグループCEOヴィクラム・パンディット氏、マスターカード社CEOアジェイ・バンガ氏、スタンダード・アンド・プアーズ社のデブン・シャーマ氏、モトローラ・モビリティのサンジェイ・ジャ氏、ペプシコのインドラ・ヌーイ氏などインド出身のグローバルトップ人材が注目されている。米国企業の15社以上の大手企業のトップがインド出身であり、彼らが担当する企業合計の売り上げが世界のGDPの4分の1となっている。

 インド人は上昇志向が強い。より良い待遇を求めて起業・転職する人材が多いため、明確で迅速なキャリアパスや、将来的には経営層として活躍できるチャンスがあることを提示し、社内での魅力的な待遇を理解させる必要がある。また、インド人は合理的な評価でなければ納得しないため、評価の目的(成果や処遇の反映、人材育成等)、仕組み、評価項目を明文化したほうが良い。こうした日本との違いを考慮し、本社が採用や研修、人材開発などの人事方針を決めたとしても、その運用はインドに任せるなど現地の自由裁量を大きくするとよいだろう。

インドで労働争議を起こさないために(1)

関連記事

好評連載

グローバルニュースの深層

一覧へ

習近平政権下の中国経済と新時代の到来

[連載] グローバルニュースの深層

グローバルニュースの深層

[連載] グローバルニュースの深層

原油事情に関するロシアの分析

[連載] グローバルニュースの深層

プーチン露大統領の内外記者会見

[連載] グローバルニュースの深層

中間選挙後の米国を展望する

[連載] グローバルニュースの深層

中国を制するものは世界を制す

変貌するアジア

一覧へ

鴻海によるシャープ買収のもう1つの狙い

[連載]変貌するアジア(第37回)

[連載]変貌するアジア(第36回)

SDRの一翼を担う人民元への不安

[連載]変貌するアジア(第33回)

開催意義不明の日中韓首脳会議

[連載]変貌するアジア(第32回)

朱立倫の総統選出馬と台湾海峡危機

津山恵子のニューヨークレポート

一覧へ

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第20回)

CESの姿が変わる花形家電よりもネットワークに

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第19回)

米・キューバ国交回復のインパクト

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第18回)

クリスマス商戦に異変! 店舗買いが消え行く

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第17回)

格差問題が深刻化する米国―教育の機会格差解消にNY市が動き出す

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

【特集】2019年注目企業30

 2018年の日本経済は、世界のマーケットを席巻してきた中国経済の成長鈍化が鮮明になり、併せて米・中の経済摩擦、英国のEU離脱問題などの対外的な課題が重なって大きな閉そく感が漂う年だった。 しかしながら元気な中堅・中小企業はネガティブな要因をものともせず独自の経営手法で活路を開いている。 原点回帰で、顧客第一…

「超サポ愉快カンパニー」としてワクワクするビジネスサイクルを回す―アシスト

ITと建設機械、グリーンエネルギーの3本柱で地球環境問題解決に貢献する―Abalance

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

ペット仏具の先駆企業が「ペットロスカフェ」で目指す癒しの空間づくり

家族のように接していたペットを亡くし、飼い主が大きな喪失感に襲われる「ペットロス」。このペットロスとなってしまった人々が交流し、お互いを癒し合うカフェが、東京都渋谷区にオープンした。「ディアペット」を運営するインラビングメモリー社の仁部武士社長に、ペット仏具の世界とペットロスカフェをつくった目的について聞いた…

元引きこもり青年が「cluster」で創造する新たなVRビジネスとエンターテインメント(加藤直人・クラスターCEO)

日本人の英語学習の課題解決に向け、学習者目線のアプリを開発―― 山口隼也(ポリグロッツ社長)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年4月号
[特集]
日本の「食」最前線

  • ・総論 日本の「食」から世界の「食」へ 成長産業となった農水・食品産業
  • ・「食」の輸出1兆円を支えるジェトロの役割
  • ・全国で進むブランド化「食」から始まる地方創生
  • ・上海で見た日本の「食」の未来
  • ・海外進出した外食チェーン「成功」と「失敗」の分かれ目
  • ・日本人が知らない中国の「日本食ブーム」の真実
  • ・消費税引き上げで始まる「外食VS中食」最終戦争

[Special Interview]

 星野晃司(小田急電鉄社長)

 「未来を見据えた挑戦で日本一暮らしやすい沿線をつくる」

[NEWS REPORT]

◆中国リスクが顕在化 電機業界に再び漂い始めた暗雲

◆持続可能な水産業へ 魚はいつまで食べられるのか

◆CES 2019現地レポート 家電からテクノロジーへの主役交代が鮮明に

◆相次ぐトラブルで業績悪化 SUBARUの見えない明日

[総力特集]

 2019年注目企業30

ページ上部へ戻る