文化・ライフ

新ルールの解釈や運用で現場から不満の声が続出

 朝出した命令が、夕方にはもう改められている。法令や政令がころころ変わるありさまを「朝令暮改」という。「漢書」からの引用である。

 これから紹介する事例は典型的な「朝令暮改」ではないだろうか。

 日本野球機構(NPB)は今季から導入したコリジョン(衝突)ルールを、後半戦から見直すかもしれない、というのだ。

 新ルールの解釈や運用をめぐって現場から不満の声が続出しているのは事実だが、だからといって4カ月もたたないうちに改めるのはどうか。混乱に拍車をかけかねない。

 千葉ロッテの伊東勤監督は「1年間貫き通すことが大事。コロコロ変えてしまうと対応できない」と語っている。

 総じて、こうした声が現場には多い。

 話を整理しておこう。

 そもそもホームベースは誰のものでもない。いわば公共物であり、そこへの走路は公道にあたる。

 キャッチャーがそこを占拠しようとすれば、ランナーは力ずくで排除にかかる。それがグラウンドに迫力と緊張をもたらしていた。

 とはいえ、選手がケガをしてしまっては元も子もない。

 そこで今季からキャッチャーやカバーに入った野手は本塁前でランナーをブロックしたり、走路を塞ぐことが禁止された。

 一方でランナーも、走路から外れた位置にいるキャッチャーへの体当たりは危険なプレーと見なされ、悪質な場合は守備妨害をとられるようになった。

 こうした新ルールの概要については、開幕前の当コラムでも簡単に紹介した。

 新ルールの解釈や運用を巡り、「必ず混乱しますよ」と予告していたのが、元広島のキャッチャーで昨季まで中日のチーフバッテリーコーチを務めていた達川光男である。

 「今までアウトになっていたプレーの半分はセーフになる。いろいろな問題が発生することは目に見えている。

 でも導入するというのなら、やってみればいい。どこが間違っていたか、それを検証して来シーズン、もっといいルールをつくればいいんじゃないの」

 フタを開けてみると、まさに達川の予告どおりになった。

 あるNPB関係者は、「多少混乱するとは思っていたが、まさかここまでとは……。審判の見解にも個人差がある。生煮えのままルールを導入したと言われても仕方がない」と苦虫を噛み潰したような表情で語った。

1シーズンに2つの基準は公平性の観点で疑問が

 コリジョンルールに関する微妙な判定は、ざっと数えただけで、4月6日のオリックス対東北楽天戦、5月6日の埼玉西武対北海道日本ハム戦、11日の阪神対巨人戦、6月12日のオリックス対横浜DeNA戦、14日の広島対西武戦、15日の東京ヤクルト対福岡ソフトバンク戦と6件ある。

 とりわけいくつかの球団が問題視したのは、リプレー検証の結果、アウトのタイミングなのにキャッチャーが走路に入ったという理由で判定が覆ったケースだ。

 先の阪神対巨人戦ではセンターからのバックホームで一度はアウトと判定されたランナーがリプレー検証を経てセーフとなり、ゲームの流れは巨人に傾いた。

 判定変更の理由は、「キャッチャーが走路に立っていた」(責任審判の杉永政信)というものだった。

 もちろん阪神は納得しない。NPBが「(原口文仁は)走路をまたがなくても捕球できた」という見解を出したのに対し、監督の金本知憲は「いや、捕れませんよ。あれはまたがざるを得ない。(キャッチャーの)原口はベースを空けていた。何度見ても原口は間違っていない」と当初の主張を貫いた。

 仮にルールが見直された場合、〈走路に入っても衝突が生じなければ、アウト判定は変えず、捕手に警告だけを与える場合もある〉(スポーツニッポン6月30日付)とのことだ。

 そもそもコリジョンルールは「選手のケガ予防」を目的として採用されたものであって、キャッチャーがラインをまたいだか、またいでいないかというのは枝葉末節にすぎない。悪質なブロックや危険なタックルを排除するというルール採用時の原点に立ち帰るべきだ。

 その意味でルールの見直しは大いに結構なのだが、ひとつ留意しておかなくてはならないのは、後半戦から変更した場合、ひとつのシーズンに2つの基準が存在することになる。これは公平性という観点から疑問が残る。

 西武はコリジョンルールが適用され、広島にサヨナラ負けを喫している。「あの負けは何だったのか?」ということになりかねない。ルールを司る規則委員会には熟慮を求めたい。(文中敬称略)

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