政治・経済

固定資産税は地方自治体が課税するが、納税者の申告ではなく、自治体が土地や家屋の評価額を決める「賦課課税方式」だ。それゆえ、課税ミスがあっても発覚しづらいのだが、現実には毎年、不動産の評価方法をめぐってトラブルが相次いでいる。文=ジャーナリスト/横山 渉

42年間も誤徴収が続いた伊勢原市

 神奈川県伊勢原市は2015年7月、分譲団地「東高森団地」22棟600戸について、42年間にわたって固定資産税と都市計画税を過大徴収していたと発表した。課税対象である床面積を誤って算出していたのが原因だ。

 過大徴収は神奈川県内に住む男性Tさんが、同年5月に誤りを指摘して発覚した。Tさんは「この団地以外にも不動産を持っているが、比較すると固定資産税額が高いような気がしていた」と話す。

 この団地は各戸の専有床面積はすべて同じ48.98平方メートル。これに対し、伊勢原市から毎年送られてくる課税明細書では、床面積が63.39平方メートルとなっていた。集合住宅の場合、共用部分の床面積が加算されるので、課税対象面積が専有面積より広くなるのはおかしくない。だが、15年は固定資産税の評価替えの年だったため、Tさんは自分で登記簿などを集めて調べてみた。すると、1戸当たりの共有部分も含めた面積は55・125平方メートルとなり、固定資産税課税明細書に記された面積より約8平方メートルも大きかった。Tさんは15年5月、市の担当課に説明を求めた。しかし、担当者は「適正に処理している」の一点張り。納得できないTさんは、市の固定資産評価審査委員会に審査を申し出たが、市の対応は変わらなかった。

 Tさんが動き出して約2カ月後の7月10日、市は固定資産税などの過大徴収を突然認めた。ミスの原因は、各戸のバルコニーも課税床面積としていたことだった。また、市は団地見取り図など課税根拠となる資料を保存していなかったことも認めた。

 この件で過大に徴収された固定資産税と都市計画税は、1973年度から2015年度までの累計で1戸当たり約18万4600円、総額で1億1千万円余りにものぼった。伊勢原市は、固定資産課税台帳が保管されている1986~2015年度分を還付することとし、還付金は1戸当たり平均14万1600円、総額では8250万円となる。これに、利子に相当する加算金6330万円も加えて還付することを決めた。

府中市では住民側が勝訴

 東京都府中市の車返団地では、固定資産税の評価替えの年だった09年7月、土地の評価額をめぐって団地の住民が市の固定資産評価審査委員会に審査を申し出、14年9月に最高裁で市の上告が棄却されるまで、住民と市が争った。市を訴えた78歳の男性Nさんはこう語る。

 「建物が古くエレベーターもないため、03年ごろから団地の建て替え運動が起きました。市からは『団地には建ぺい率20%・容積率80%の建築制限があってできない』と言われました。それほど建築制限が厳しいなら固定資産税の土地の評価額も低いはずだと調べたところ、団地周辺の緩やかな『建ぺい率60%・容積率200%』で土地が評価されていたことが分かったのです」

 建築制限の違いは当然、土地の評価額に跳ね返らなければおかしい――。そう考えたNさんは、09年7月、市の固定資産評価審査委員会に審査を申し出たが、申し出はあっさり棄却された。そこでNさんは翌10年3月、東京地裁に審査委員会の決定取り消しを求めて提訴。1審は同年9月に棄却され、2審の東京高裁判決でも11年10月に棄却。最高裁へ上告すると、最高裁は13年7月、2審判決を破棄して差し戻した。2審判決では、府中市の決めた土地の固定資産税評価額が、地方税法で定める固定資産評価基準に則っているかどうかを判断しておらず、審理が不十分としたためだ。

 差し戻し審となった東京高裁は14年3月、土地の固定資産税評価が適切ではなかったとし、原告勝訴の判決を言い渡した。府中市はこの判決を不服として最高裁へ上告したが、同年9月に棄却され、判決が確定した。

 土地の評価は自治体から委託された不動産鑑定士が行うが、当時、府中市の鑑定士だった1人は内情を次のように話す。

 「Nさんがこの問題で度々市役所を訪れるようになり、私はNさんが正しいと意見していた。しかし、正式に多数決を取る前に、いつのまにか市の言い分を押し通すことに決まっていた」

 この鑑定士は市からの委託を解かれた後に、他の鑑定士が評価対象地や接面街路を間違えるという二重三重のミスをしていたことを知ったという。多くの不動産鑑定士にとって、自治体からの委託料は大きな収入源であるため、直言しづらい雰囲気があるらしい。

 さて、府中市が敗訴した後、住民側に還付されたのは1戸当たり約8千円。これは09~14年度の6年分の総額だ。

 車返団地の住民の固定資産税に対する不信は、これでも終わらない。15年の評価替えで新たに示された土地の評価額は、09年の評価額に比べて6%しか減っていなかった。厳しい建築制限を考慮すれば、「本来はもっと評価額は低いはずではないか」とNさんの主張に賛同する団地住民約200人は15年夏、「固定資産税納税者の会」を結成し、固定資産評価審査委員会に対して審査を申し出たが、今年7月に棄却された。住民の不信感は終わりの見えない訴訟へと突入するかもしれない。

固定資産税の取り戻し方

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