マネジメント

豊富なラインアップを強みに展開するのがU-NEXTだ。定額見放題に加え、新作も視聴できる独自のサービスが支持を集め、順調に加入者数を増やしている。USENの無料動画「Gyao」から動画配信事業に携わってきた宇野康秀社長にビジネスの状況と今後の展望を聞いた。

新作も視聴可能な独自のSVODサービス

―― まず動画配信ビジネスの競争環境をどう見ていますか。

宇野 いわゆるビデオオンデマンド(VOD)と言われる、ネットで動画を楽しむサービスは、アメリカで先行し、ほかの国で広がっていましたが、ようやく日本でも遅ればせながら徐々にサービスの知名度が上がってきました。なおかつ市場性が出て、競争参入者も増えてきて、賑わってきているというタイミングなのかなと思っています。

―― そうした中で、貴社はどういう取り組みをされているのでしょう。

宇野 今、当社が力を入れているのは、有料課金型でなおかつSVODというサブスクリプションモデル(加入者ベースのVOD)です。月額の基本料金が固定で見放題というサービスで、日本でも複数の会社がやっています。当社のサービスの違いは、基本はSVODの見放題サービスがベースですが、月額1990円と他社サービスより少し高い金額を頂いています。その理由は、この1990円の中に1千円分のポイントが付いており、この1千円のポイントを利用することで、通常の見放題サービスではなかなか出てこない新作作品を2~3本見られるというパッケージになっています。

 ユーザーから見ると、見放題のサービスはどうしても古い作品に限られてしまう。一方でレンタルビデオ屋に行くと、見られているのは新作作品が圧倒的に多いわけです。つまりユーザーの満足度を高めていくという意味では、新作も見られるサービスのパッケージが支持されているのかなと思っています。

20160823UNEXT_P01

(うの・やすひで)1963年生まれ、大阪府大阪市出身。明治学院大学法学部卒業後、88年リクルートコスモス入社、89年インテリジェンス設立。98年に大阪有線放送社(現USEN)社長に就任。2010年にグループの事業を整理する過程でUSEN社長を辞し、会長に就任。USENの映像配信事業を継承し、U-NEXT社長に就任、現在に至る。

―― 新作を取り込む工夫は。

宇野 新作は都度課金ならば見られるという出し方をされているコンテンツホルダーが多いです。当社はポイントで都度課金のコンテンツを見ていただくという考え方です。この理解を得るために、いろんなコンテンツホルダーに説明していった結果、調整ができています。

―― 現在の加入者の状況は。

宇野 お陰さまで、順調にユーザー数を伸ばしてきています。実数は公表していませんが、2012年3月末を100とした場合、16年3月末は約3・2倍まで伸びてきています。前年同期比で見ると約20%増です。

 まず昨年ぐらいから海外からの競合の参入が話題になったこともあり、全体の市場が増えています。市場が盛り上がった結果、こういうサービス自体がどういうものかをみなさんが知っていただけるようになりました。それで、ユーザーがいろいろなサービスの比較検討を始めました。その結果、当社を選んでいただいているユーザーが増えていっているという感じです。

―― それは新作の存在が大きいのですか。

宇野 新作を見られるという部分と、あとはサービスのラインアップです。当社は特に海外ドラマが強いとか、オリジナルコンテンツがあるというよりは、すべてのジャンルを細かくラインアップしています。子ども向けのアニメから、大人が見るコンテンツ、年配の方が見るような、それこそ寅さんのシリーズのものとか、最近ではNHKオンデマンドと連携し大河ドラマや朝ドラも見られるようになっています。このように幅広く品揃えをしていることが支持されているのかなと思っています。

視聴デバイスの使い分けを提案

―― 貴社サービスはマルチデバイスに対応しています。

宇野 複数のデバイスで見られていますが、当社の場合、ざっくり言うと、テレビで見ている方、パソコンで見ている方、スマホ、タブレットで見ている方が3分の1ずつです。他社サービスに比べて、スマホ率が低く、テレビ率が高いのが特徴です。

―― それはテレビ用のセットトップボックスから事業が始まったことが理由ですか。

宇野 そうですね、もともとのユーザーが母数としてあります。もちろん移動中にスマホで見るということもありますが、やはり家に帰ったら大画面のテレビを家族みんなで見るのがいいんじゃないかということを意図的に推奨してきました。セットトップボックスの開発にすごく力を入れていますし、またテレビメーカーと協力して、テレビに当社サービスを利用できる機能を内蔵させるなど、テレビでの使いやすさを追求しています。

―― スマホが普及する中で、テレビへの注力は逆張りの印象を受けます。

宇野 単にテレビがディスプレーでしかないということです。テレビを見なくなったという議論は置いておくとして、私たちのようなサービスで自ら選んでコンテンツを見る人たちが確実に増えてきています。そういった人たちがコンテンツを知るきっかけは、ウェブやSNSでの情報であり、スマホが入口になっています。しかし家にいるときにスマホでそのままコンテンツを見るかというと、大画面テレビがあるならば、テレビに映して見ようということになると思います。ですから、テレビで見るか、スマホで見るかというのは、スクリーンの大きさをそのとき自分がいる場所によって選んでいるだけだと思います。

 もちろん、スマホでしか見ないユーザーさんもいらっしゃいますし、移動中や外で見るという行動がメーンの方もいらっしゃいますので、スマホ向けの作品のラインアップを増やしていく取り組みは進めています。

―― コンテンツの集め方も広がっていきますね。

宇野 いかに集めるかと同時に、一部われわれが制作に携わっていく考えもあります。いくつかの製作委員会にわれわれも参加し、配信ならではコンテンツの作り方や宣伝の仕方を他の事業者と一緒にやっていくことは始めています。既に「ヤングブラックジャック」などアニメ作品の制作に関わっています。

ただ作品を並べるだけではない

―― 今後、さらに強化させていくことは。

宇野 当社は完全に独立系の会社なので、いろんな会社とアライアンスが組めるスタンスであり、この柔軟性を戦略の中心に置いています。例えば、シネコンと提携して、イオンシネマのサービスとして、「Powered by U-NEXT」という形で、シネコンに来場する映画好きの方に薦めていただいています。また、映像好きな方をターゲットにするという意味では、ツタヤさんと連携して、「TSUTAYA movie powered by U-NEXT」という配信サービスを発表しました。いろんな企業とのアライアンスは今までもやってきましたし、これからも増やしていきたいと思っています。

―― コンテンツの数も膨大になっていきます。

宇野 早く見られる作品や、今まで出せていなかったジャンルの作品など、漏れがないように日々やっていきますので、どんどん増えていくと思っています。一方で、今も12万本あるのですが、ユーザーからすると作品に出合うまでが大変になっていきます。

 新作や有名作品はいいですが、それだけではなくて、「あまり自分は知らなかったけれども実際に見てみるとすごく良かった」という映画やドラマはたくさんあるはずなんです。いかにユーザーが求める、その人の感性や気分に合わせて、きちんとこちらが作品をレコメンドできるか。ただ作品を並べればよいという話ではないので、作品との出合い方の工夫も非常に力を入れて取り組んでいます。

―― 具体的な取り組みは。

宇野 もちろん一定のアルゴリズムの中で、「これを見ている人はこれも見ています」という一般的なやり方もやっています。しかし、それだけではなくて、映画やドラマなどの映像に非常に詳しい専門家の人たちが、いろいろな特集を組んだり、季節やイベントによってはこういう映画が良いとか、いろんな切り口でコンテンツを推奨します。当社では、その専門家を「賢者」と呼んでいますが、キュレーションを人的に注力しているのが、私たちの特徴です。

―― 最後に今後の展望をお聞かせください。

宇野 業界全体で言うと、数社がどんどん増えていくユーザーの取り合いをしている状況だと思います。まだ総加入者数が1500万人ぐらいと言われていますが、スマホのユーザーは今6千万~7千万人ですから、この4~5年のうちに市場全体で加入者数は3千万~4千万人まで行くだろうと思っています。まずは業界が協力し合いながら、全体パイを増やしていくことと、その中で確実に当社はトップグループとして、ユーザーの選択肢に確実に残るような立ち位置でいるということが今の目標です。できればトップを取りたいですね。

「いったん下山してもう一度登りなおす気持ちで」(宇野康秀)

関連記事

好評連載

年収1億円の流儀

一覧へ

運を動かす力は自らの内にある。

[連載]年収1億円の流儀(第59回)

富裕層専門のカリスマFP 江上治

[連載]年収1億円の流儀(第58回)

運はどうしたら好転できるか?

[連載] 年収1億円の流儀(第57回)

すべて自分を責めれば最適の解決策が浮かぶ

[連載] 年収1億円の流儀(第56回)

問題や課題から逃げても、それは形を変えてついてくる。

銀行交渉術の裏ワザ

一覧へ

金利固定化の方法を知る

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

銀行交渉術の裏ワザ

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)

定期的に銀行と接触を持つ方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)

メーン銀行との付き合い方

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)

金利引き上げの口実とその対処法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)

融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける

元榮太一郎の企業法務教室

一覧へ

社内メールの管理方法

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

企業法務教室

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)

タカタ事件に学ぶ 不祥事対応

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)

「ブラック企業」という評価の考察

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)

コミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)

女性の出産と雇用の問題

本郷孔洋の税務・会計心得帳

一覧へ

税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」

[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

税務・会計心得帳

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)

グループ法人税制の勘どころ

[連載] 税務・会計心得帳(第17回)

自己信託のススメ

[連載] 税務・会計心得帳(第16回)

所得税の節税ポイント

[連載] 税務・会計心得帳(第15回)

固定資産税の取り戻し方

子育てに学ぶ人材育成

一覧へ

意欲不足が気になる社員の指導法

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

子どもに学ぶ人材マネジメント

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)

人を育てる「言葉」とは?

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)

女性社員を上手に育成するコツ

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)

部下の感情とどうつきあうか

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)

“将来有望”な社員の育て方

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

「日本初」にこだわる男のユニークな発想とビジネス――佐野秀光(情報通信ネットワークグループ社長)

「損して得を取る」事業モデル  不動産登記情報を扱う「登記簿図書館」をご存じだろうか。 かつては法務局でしか取得できなかった登記簿情報がオンラインで簡単に取得でき、かつ、法務局では対応できないさまざまなサービスを提供するというものだ。保有登記情報は全国2450万件、会員数9500社を誇る。 この登記簿図書館を…

支持政党なし

外国人を中心に需要が高まるソーシャルレジデンスで快走―オークハウス

独自のプラットフォーム戦略で、外食産業の新たなスタンダードを創造する――きちり社長 平川昌紀

新社長登場

一覧へ

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

創業から95年、海外に進出してから50年以上たつ国際派企業の高砂香料工業。合成香料では日本最大手であり、国際的にも6%以上のシェアを持つ優良企業だ。 100年弱の歴史を持つ合成香料のトップメーカー ── まず御社の特徴をお聞かせください。 桝村 1920年創業ですから、2020年に100周年を迎える…

桝村 聡

「ネット広告が変わってもクライアント本位の姿勢は変わりません」--バリューコマース社長 香川仁

「最新情報を発信、人と企業の働く環境を良くしていきます」--マンパワーグループ社長 池田匡弥

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

20150609_INNOV_P02

デザイナーズ家具のEC販売で業界の“常識打破”に挑戦――リグナ社長 小澤良介

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 教育部門と…

大学の挑戦

創立100周年を控えて「世界に貢献し、インパクトを与える人」の育成に努めます――西南学院大学・K.J.シャフナー学長

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

企業eye

一覧へ

社員の人間力を武器に5期連続増収を果たす投資用不動産会社――パートナーズ

パートナーズは全国の中古投資用不動産の売買仲介を手掛けている。2011年の創業以来、5期連続増収を達成。吉村社長は業績好調の原動力を「社員の人間力を養い、顧客満足度の向上に取り組む姿勢にある」と語る。── 数ある投資用不動産会社の中、独自の強みについて。吉村 当社では、社員の人間力を徹底的に磨きな…

企業eye

クラウドソーシングを活用した動画制作やオンライン動画制作プラットフォームを提供――Crevo

海外ビジネスの第一線で活躍した2400人のエキスパートを擁し、日本企業の海外事業を支援。

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界6月号 [月刊記念特別号]
[特集]
トップ企業の経営哲学

  • ・永守重信(日本電産会長兼社長)
  • ・新浪剛史(サントリーホールディングス社長)
  • ・北尾吉孝(SBIホールディングス社長)
  • ・林野 宏(クレディセゾン社長)
  • ・茂木友三郎(キッコーマン取締役名誉会長 取締役会議長)
  • ・樋口武男(大和ハウス工業会長)
  • ・北島義俊(大日本印刷社長)
  • ・澤田秀雄(エイチ・アイ・エス会長兼社長)
  • ・似鳥昭雄(ニトリホールディングス会長)
  • ・押味至一(鹿島社長)

[Interview]

 貝沼由久(ミネベアミツミ社長)

 経営統合で技術の受け皿を広げ新たなIoT時代に備える

[NEWS REPORT]

◆三井住友銀行、脱・たすき掛けの深層

◆一人負け、ソフトバンクに何が起きている

◆大塚家具、ロッテ……親子・兄弟相続の相克

◆ドキュメント シャープ鴻海入り1年のドラマ

◆長者番付で分かった日の丸ベンチャーの弱点

[政知巡礼]

 石破 茂(衆議院議員)

 「地方創生こそがポストオリンピックの鍵だ」

ページ上部へ戻る