文化・ライフ

今回はジャーナリストの蟹瀬誠一さんをゲストにお迎えしました。ニュースキャスターとしてお茶の間でもおなじみの蟹瀬さんですが、一時は画家を志したこともあったとか。それがなぜ、ジャーナリストになったのか。きっかけは、あの「大事件」だったそうです。

勤務先は変われど転職は一度もなし

佐藤 蟹瀬さんというとニュースキャスターのイメージが強いですが、もともとは海外の通信社や雑誌など、文字媒体で活躍された硬派のジャーナリストです。なぜジャーナリストの道を志したのですか。

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(かにせ・せいいち)1950年生まれ。日本大学文理学部体育学科中退後、上智大学文学部新聞学科卒業。AP通信社記者、AFP通信社、『TIME』誌東京特派員を経て、ジャーナリストとして独立。TBSやテレビ朝日などでニュースキャスターを務める。現在、明治大学国際日本学部教授、日本ゴルフ改革会議副議長等を務めている。

蟹瀬 これを言うと笑われるんだけど、高校3年生の時に突然、画家になろうと思ったんです。絵は好きだったけれど描いたことはない。それでも画家になると思い込み、武蔵野美術大学を受験しました。でも成績は悪いし、絵は描けない。当然落第です。

 そこですぐに「これは無理だ」と諦めて、今度は体育の先生になろうと思い日本大学文理学部体育学科に入学したものの、「これは違う」と感じて中退。どうしようかな、という時に目についたのが上智大学新聞学科です。新聞学科なんてほかでは聞いたことがない。人と違うことをやりたい天の邪鬼の私にはうってつけだと思い、入学しました。

佐藤 そこからジャーナリスト人生が始まるんですね。

蟹瀬 その時はまだ、ジャーナリストになりたいという強い気持ちはありませんでした。でも在学中の1970年11月25日、三島由紀夫事件が起こります。現場の市ヶ谷駐屯地は大学の近くでしたから、私もすぐに駆け付けた。その後、大学に戻ると、教授が授業を中止にして三島の死について語り合おうと言う。ノーベル賞候補の世界的作家がなぜ割腹自殺をしなければならないのか。そういうことを考えるうちに、知りたいことを知り、そしてそれを伝えるジャーナリズムへの関心が少しずつ芽生えていった。ですから、あの事件がなかったら私はジャーナリストになっていません。

 その後、フィリピンに留学、さらには『TIME』誌のインターンを経験したのちにAP通信に入社。AFP通信、TIME誌を経てフリーになり、今日に至っています。

佐藤 どれも世界を代表する通信社や雑誌ですが、ひとつのところにじっとしていることは苦手のようですね。

蟹瀬 初めて社会人になった時から、何の根拠もないけれど、1社3年までと決めていました。私の父は転勤が多く、だいたい2年か3年で勤務地が変わっていた。だから私も1カ所にとどまるのは得意じゃないようです。だけど、働く会社や場所は変わったかもしれないけれど、転職したことは一度もありません。道に迷うことなく、ずっとジャーナリストとして働いています。

九死に一生を得たロシアでの銃撃戦

佐藤 蟹瀬さんには現場を大事にするというイメージがあります。ニュースキャスターでありながら、よく現場からレポートしていたのを覚えています。インターネットの発達によっていろんな情報を得ることが簡単になりましたが、その一方で現場に行くことが少なくなったような気がします。

蟹瀬 インターネットは便利ですが、一次情報を一生懸命に取りに行く人が減ったように思います。でもジャーナリズムの原点は現場での取材にあります。

 何度か危ない目にも遭いました。93年のロシアでエリツィン派と議会派の対立を取材した時は、私たちを挟んで銃撃戦が始まりました。その瞬間、周りがスローモーションになり、空に家族の顔が浮かびました。この時はさすがに覚悟しましたね。

 カンボジアではデング熱にもかかりました。帰国して寝ていたら地震が起きた。でも実際はベッドがガタガタいうほど震えが止まらなかった。そこで病院にいったらデング熱だと診断され、1週間入院しました。でもそのお陰で、昨年、日本国内でデング熱が発生した時は、経験者として取材されました。やっぱり身をもって知るということは大切ですね(笑)。(後編に続く

似顔絵=佐藤有美 写真=佐藤元樹

 

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