政治・経済

 NTTドコモがインドの財閥タタグループに対して契約に基づく通信子会社の株式買い取りに充当する損害賠償を求めていた件で、タタ側に損害賠償約11億7200万ドル(約1210億円)を支払うよう命じた国際仲裁裁判所の裁定について、ドコモの吉沢和弘社長は7月29日の決算会見で、タタ側が裁定に応じない姿勢を示していると発言した。ドコモはタタ側から損賠相当額を確保するため、英国とインドで資産の差し押さえを申し立てており、今後、米国などでも同様の手続きをとる。当初から問題視されていたインド投資の失敗は損害額以上にドコモの投資戦略に影響を及ぼす見通しで、総務省幹部も「民民の話だが、このままでは日印関係に悪影響を及ぼしかねない」と危惧している。

 ドコモによると、タタ側はドコモが当初協定に基づいて求めていたタタグループの携帯電話子会社株の売却許可をインド準備銀行(RBI)に求めたが、RBIが許可しない決定を下したと弁明したようだ。吉沢社長は「国際仲裁裁判所は損害賠償の支払いを求めており、株式の買い取りではないのでRBIが関与する問題ではない」と反論する。

 ドコモは2009年からタタグループの携帯電話子会社に約2640億円を出資し、株式の約26%を取得した。しかし、事業者が群雄割拠する市場で業績不振が続いたため、14年4月に撤退を決め、出資時のオプション契約を行使して株式買取をタタ側に要求した。しかし、その後もタタ側は協定に応じないため、15年1月にドコモは国際仲裁裁判所に仲裁の申し立てを行っていた。

 ドコモの投資は当初の2640億円にとどまらなかった。1年後には関連会社に約110億円を出資、11年には、ネットワーク増強のために約146億円の追加出資まで実施していた。政策の問題もあり携帯事業は立ちゆかず、携帯子会社は960億円の債務超過に陥り、ドコモは14年3月末に2200億円の損失を計上する羽目になった。

 ドコモの海外投資は失敗の連続だった。00年に4090億円を投資したオランダのKPNモバイル、1860億円を投資した英国のハチソン3G、01年に1兆2千億円を投資した米AT&Tワイヤレスと海外事業はことごとく失敗。合計で約1兆5千億円の損失を計上し、05年までにすべて撤退した。

 インド投資に対して、証券会社は「同じ過ちを繰り返すのか」と再考を促したが、当時の山田隆持社長は聞く耳を持たなかった。泥沼化するドコモのインド投資の後始末だが、寺崎明副社長は元総務審議官で、総務省時代は中国にPHSを売りまくり、中南米各国やアジア、アフリカに日本方式の地上デジタル放送を採用させた手腕の持ち主。皮肉な巡り合わせに総務省OBは「国内の携帯市場が成熟して、ソフトバンクやKDDIが海外投資に打って出ているのに、寺崎さんがいてもドコモの海外展開は封印だね」と苦笑する。

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