政治・経済

 安倍晋三政権が成長戦略の目玉の一つに位置付けている人工知能(AI)をめぐり省庁間の主導権争いが過熱する中、総務省が災害対策や交通規制などへの実用化で先行しようと動き出した。

 所管する情報通信研究機構(NICT)が持つAI技術を使って、官民が活用できるAI基盤づくりに着手する。排ガス規制逃れなどの法令違反をチェックしたり、人間では不可能な未来を予測するロボットの実用化も視野に入れているようだ。

 AI基盤とは、NICTが実用化している音声認識と自然言語処理の2つのAI技術を基に防災や健康、ロボット、自動車などといった分野ごとで標準化したミドルウエア的な規格。NICTはNTTやNEC、自動車メーカーなどに声を掛け、2017年度以降にAI基盤を活用した応用技術開発に取り組んでもらいたい考えだ。

 AI基盤の上には、大災害時にインターネットのSNS(会員制交流サイト)に書き込まれる被害情報を短時間で分析して状況を警察や消防に伝えるシステムの開発や、外国人と会話しながらお勧めの観光スポットや料理を紹介するシステムなどが想定されているという。企業のメール情報を基に「その経営判断は排ガス規制に関する法令違反になる」などの警告を企業に発する監視システムも実用化されそうだ。将来は、過去の膨大な論文データを分析して、例えば「物質Aと物質Bを掛け合わせると未知の物質Xが出現する可能性がある」などの研究提案も可能になるという。

 AI研究開発では、政府が4月に設置した「AI技術戦略会議」を受けて、総務省のほか経済産業省、文部科学省も支援策を競っており、政策コンテストの様相。3省庁は合同シンポジウムなどを開催して「3省庁連携」をアピールするが、各省庁では真逆の抜け駆けを模索しているのが実情だ。高市早苗総務相が先進7カ国会議で「AI開発の原則作り」を呼びかけて主導的立場を表明すれば、馳浩文科相も「科学技術イノベーションによる未来社会創造プラン」を掲げて、先進性を強調。経産省も「新産業構造ビジョン」でAIにより技術革新の重要性を提示し安倍政権に寄り添う姿勢だ。

 しかし、米国の産官学連携の動きは日本より遙かに先行している。日本企業の多くが既にIBMの「ワトソン」を導入しているのをみても彼我の差は明らか。省庁同士で競っていては、米国との差は開くばかりだ。

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