国際

成長を妨げる極端なコントラスト

 どの国にも矛盾は存在する。しかし、インドが抱える矛盾は驚くようなものだ。ビジネスやレジャーでインドを訪れる外国人はインドを旅する中で、本人曰く「本物のインド」を体験する。インド人はカオスと不均衡の中に生きて、日々の問題を解決している。インドが抱えているすべてのカオスを解決する方法はない。政府の政策は別としても、国民の無関心は直さなければならない。インドのカオスと混乱を克服して、インド市場で成功している海外企業もいくつかある。

 インドのコントラストと矛盾(○=良い面、●=悪い面)をまとめてみた。

○自然が豊かである。

 ヒマラヤ山脈の威容、ヒマラヤのクルマナリ渓谷の静謐さ、ラジャスタン州の砂漠、聖なるガンジス川とヤムナ川、インド洋とアラビア海の砂浜など、美しい自然と景観に事欠かない。孔雀をはじめとする多くの鳥類が生息している。

●古代インドでは自然を神聖なものとして尊敬する習慣があった。だが、そうした環境保護の良風は忘れられ、現代は開発志向が強く、環境への配慮はなされていない。

 上水不足、衛生施設の欠如、大気汚染の増加、工業排水問題などが挙げられるが、ゴミのポイ捨てといった意識の低さはその最たるものであり、そうしたことがせっかくの自然をさらに損なうことになっている。衛生意識が低いどころか、ないといえるのは教育の欠如と言うしかない。

○原子力発電がある。

●家庭用と工業用ともにエネルギー不足で、停電は日常茶飯事である。24時間電気が供給される家庭はない。

○大都市部の高層建築。

●大都市にある高層建築やオフィスビルのすぐ隣にスラムが存在する。

○自動車、二輪車の販売が増加している。

●全国的には馬車や手曳きのリキシャが一般的に使われている。

○最高の工科大学や大学がある。

●国民の大多数が教育を受けず、技術を身につける機会がない。

○豊富な食糧生産。

●価格上昇や貧困のため、貧困層の大部分が不健康か病気か、または栄養失調である。

○星付きホテルやレストラン、さまざまな種類の料理やファストフードの増加。

●労働者や貧困層は道端の屋台店や茶屋を利用している。

○多くのインド人が億万長者のリストに名を連ねている。

●人口の41%が貧困層である。

○携帯電話の保有者は9億人で個人を特定できる。

●郵便物は、宛先に届かないことがある。住所システムが整備されていない。

○スピリチュアルの中心地である。

●2000年以降、汚職や詐欺が横行している。

○色鮮やかなお祭りシーズンがたくさんある。

●ストレスを抱える人が増えており、バランスのとれた娯楽が少ない。ストレスからくる健康上の問題が増加している。

○国民全体がクリケットに熱中している。

●オリンピックやワールドカップでのメダル獲得が少ない。ワールドカップ・トーナメントに出場するインド人スポーツ選手は少ない。

○新幹線と地下鉄の増加。

●道路では牛が歩き、野良犬があふれている。公共交通機関は混雑し、場合によっては交通機関がないこともある。

○進んだ銀行システム。

●農村人口の30%が銀行口座を持っていない。

○金が大好き。貯蓄として金を保有する。世界でも高い金の消費量。

●借金だらけの農民は資金調達のためにマイクロファイナンスに依存している。

○古代インドでは、日の出前(午前3時から4時)には起床するように教えられ、すべての活動が時間どおりだった。

●今は時間の管理ができていない。故意かそうでないかすべてが先送りか遅れがちである。

○カレースパイスとベジタリアンメニューは健康とバランスの取れた身体と長生きの秘訣である。

●平均寿命は65歳で、この寿命の短さは健康管理の悪さによるものである。

○女性を神聖に扱うことが原則である。

●最近では女性への暴力が増えている。

 インド人一人一人はこの中でも懸命に生きている。現代インドは、見方によって、美しくもカオスにも見える。

 これら極端なコントラストと矛盾が外国人ビジネスマンに強烈なインパクトを与え、インドに足掛かりを作りたいという彼らの希望を打ち砕いてしまうことになる。

 なぜなら、こうしたコントラストがどうして生まれたかについての説明がないからである。これがインドの成長の妨げとなる。インド人でさえもこうした極端さに驚いており、克服する方法を見つける必要があると考えている。

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