文化・ライフ

今回のゲストは「堂島ロール」でお馴染みのモンシェールの金美花社長です。もともと教師だった美花さんが、なぜケーキ屋を始めたのか。クリームたっぷりの堂島ロールはどうやって生まれたのか。日本一のロールケーキの誕生秘話をお聞きしました。

金 美花・モンシェール社長プロフィール

金美花氏

(きん・みか)1972年福岡県生まれ。朝鮮大学師範科卒業後、筑豊朝鮮小中級学校小学校教師を経て、2003年大阪堂島に現「パティスリー モンシェール堂島本店」を開業、株式会社モンシェール代表取締役となる。ひと巻きの「堂島ロール」が口コミで人気を呼び、現在国内28店舗、海外に14店舗を展開中。

 

金 美花氏が語る堂島ロールの誕生 ~クリームが苦手だから作れた究極のクリーム~

 

佐藤 堂島ロールを初めて食べた時ふわふわクリームの感動は忘れられません。2センチほどの厚さに切っていただき、すぐにもう1切れ、と止まらなくなって。丸々1本食べられるんじゃないかと思ったものです。

 ありがとうございます。発売から13年、堂島ロールは本当に多くの方に愛されていて、とても感謝しています。先日、バニラビーンズを求めてタヒチに行ったのですが、現地の日本人に名刺を渡したら、その方も堂島ロールのファンでして。帰国して実家に寄ると、必ずお母さまが用意しているとのことで、本当に光栄だなあと感動しました。

佐藤 美花さんはもともと小学校の先生です。それがどうしてケーキ屋を始めることになったのでしょう。

 お菓子づくりは好きでしたが、あくまで趣味でした。自分は一生、教師でいると思っていました。

 ケーキ屋さんを開こうと思ったきっかけは2001年に友人4人と行ったヨーロッパ旅行です。高級ブランド店に行けば、いいなと思う商品がたくさんあります。でも値段が値段ですから買うことはできません。そこで、カフェに入り、ケーキを食べて、贅沢な気分に浸る。こんなことを繰り返しているうちに、スイーツが贅沢な気分を運んでくれる。こんな幸せな時間を多くの人に味わってもらえたら、と思ったのです。この想いが起業につながりました。

佐藤 最初からロールケーキを目玉商品にしようと考えていたのですか。

 そうではありません。まずこだわったのはクリームです。実は私自身、クリームが苦手だったんです。そこで、自分がおいしいと思うクリームをつくろうと試行錯誤を続け、搾りたての牛乳のような味わいのクリームができあがりました。

 実はシェフの最初の自信作はミルフィーユだったんです。それで開店から間もない時期に、多くの方に食べていただこうとセールをしたのですが、ミルフィーユは手間暇がかかります。そこでもう一品、ロールケーキも追加すると、こっちのほうが人気が出て、注文が相次いだのです。だけど生地を焼くには限度がある。そこで生地を節約するために渦巻きではなくひと巻きにして、代わりにクリームをたっぷり入れた堂島ロールができあがりました。

 

金 美花氏のおすすめの食べ方 ~冷蔵庫から出した堂島ロールは少し我慢を~

 

佐藤 お陰でクリームを堪能できるのだから瓢箪から駒ですね。偶然から生まれた堂島ロールは、今では関西以外でも食べることができるようになりました。

 9年前にラゾーナ川崎に店を出したのが関東初出店です。熱心にお誘いいただいたので、出店を決意しました。ありがたいことにこの店も行列ができるようになり、今度はそれを見た百貨店のバイヤーの方々に声を掛けていただき銀座三越などへ出店するようになりました。今では国内28店、上海など海外14店を数えます。

20160920SANSAN_P02 でもどこにでも出店するというわけではありません。ルールはキッチンから近い場所にしか出店しない。常にできたてのケーキを食べていただきたいからです。ですから国内28店に対してキッチンは17カ所。ここからお店に商品を届けています。

佐藤 だから新鮮でおいしいんですね。だけど余った堂島ロールを冷蔵庫に入れておくと、次の日はふわふわ感がなくなってしまう。それが残念です。

 もしかして、冷蔵庫から出してすぐに食べていませんか。そうではなく、冷蔵庫から出したら、しばらく食べるのを我慢してください。堂島ロールの一番おいしい温度は15度です。冷蔵庫は5度以下ですから、どうしても固くなってしまいます。そこでしばらく時間をおくと、ふっくら感が戻ってきます。ぜひ一度、試してみてください。

堂島ロールを販売するモンシェールの企業理念は「幸せお届け産業」だそうです。でもこの企業理念に行き着くまでには、何度も壁にぶつかり、「もうダメか」と思ったこともあったとか。その壁が、金美花社長を経営者として一回りも二回りも成長させたようです。

 

堂島ロール人気拡大の陰で金 美花氏が苦労したこと

 

佐藤 事業は、順調に伸びてきたように見えますが、ご苦労もあったのでしょうね。

 開店直後のセールでは多くのお客さまで賑わいましたが、終わるとピタッと止まりました。そこで知り合いの繁盛店のシェフに教えを乞うたのですが、逆に喝を入れられてしまって。

佐藤 何か怒らせるようなことをしてしまったんですか。

 私が何も知らな過ぎたのが原因です。開業したとはいっても素人のままで、仕事に対する真剣さも今から思えばありませんでした。そこを叱責されたのです。このひと言をきっかけに心を入れ替えました。人の10年分の苦労を1年で積み重ねようと。考えるのは朝から晩までケーキのことだけ。営業時間が終わってからも北新地のクラブの女性たちに試食してもらいました。そこでおいしいと思っていただければ、彼女たちがお客さんにも広めてくれるからです。

 そうやって仕事に向き合っていると、社員やアルバイトも認めてくれるようになります。それからは、チームとして機能するようになりました。

佐藤 会社はいろんな人がいて成り立っています。でもバラバラではうまくいかない。社長と社員が同じ方向を向いたとき、初めて大きく成長するんですね。

 開店から3年で、今度は店を移転しなければならなくなりました。貯金もなければいい場所も見つからない。お店がなくなることを覚悟しました。でも偶然、面接に来た女性にグチをこぼしたところ、彼女のご主人の縁で物件を紹介していただけた。それが今の本店です。

 その後、関東にも出店し、業績も伸びていきました。メディアへの露出も増えていく。ところが社内はどんどんギスギスしていく。そこで社内でアンケートを取ったら、不平や不満がいっぱい書いてありました。

 

金美花氏の思い 幸せな会社は社員全員でつくる

 

佐藤 おいしいお菓子をいただくと笑顔になります。でも店内がギスギスしていると、お客もそれに気づいてしまう。こうなると笑顔にはなれませんね。

 そこで大阪で社員大会を開き、こう言いました。「社員が幸せな会社は、誰かが運んでくるものではなくて、ここにいる全員でつくらなきゃいけない」。

 その一方で、改めるところは改めました。それまでは、私の2台の携帯が本社のようなもので、何もありませんでした。そこできちんと組織をつくり、責任者を配置する一方で、「幸せお届け産業」という企業理念を決めました。そこから会社の雰囲気は随分変わったように思います。

佐藤 今後の目標は。

 お店の質をもっと高めていきたいと考えています。さらには堂島ロール以外にも力を入れます。通販では堂島ロールをお渡しできませんが、通販の中で一番おいしいロールケーキをつくりたいですし、焼き菓子でもモンシェールの顔となる商品をつくろうと努力しています。

佐藤 プライベートではいかがですか。

 モンシェールにつながることしかやっていませんが、それが一番楽しくて一番やりがいがありますから。強いて言えば海外に行くことは多かったですが、日本にもいいところはたくさんあるので、日本の地方に行ってみたい。恐らくそこには、いい食材もあるはずです。それを使ったおいしいケーキを食べていただきたいですね(笑)。


20161018SANSAN_P01対談を終えて

食べると自然と笑顔になる堂島ロールは私も大好きです。美花さんのお仕事は人を笑顔にするとても素敵なことですが、ここまでくるには大変なご苦労があったんですね。次はもっと噛みしめて堂島ロールを味わいたいと思います。

 

 

 

 

 

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