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トヨタの「カイゼン」が40年以上続く理由――加藤光久 トヨタ自動車副社長

トヨタ自動車副社長 加藤光久氏

 中部経済を語る上で欠かせないのがトヨタ自動車。しかし、逆にこの地区だからこそ、トヨタはここまで発展できた。その理由を技術担当の加藤光久副社長が語った。

飛躍もヒントも改善から

―― 中部地区のモノづくりの力には定評があります。その理由をどう考えていますか。

加藤 志の高さだと思います。トヨタはもともと織機の会社でした。それが自動車をつくろうというのですから、志なくしてはできません。これはトヨタの社員だけでなく、地域についても同様です。自動車をつくるには数多くの部品がなくてはできません。この部品を地元の工場にお願いしてつくってもらった歴史があります。最初は誰も自動車の部品のことは分からない。商売にもならないかもしれない。それでも一緒になってつくっていった。それを支えたのは、みなさんの志です。だからこそ、その輪がどんどん広がっていったのです。それは今でも変わりません。

―― 製造業には部品は汎用品でかまわない、という動きがあります。それをインターネットで調達し、組み立てる。これが進むと、トヨタを中心とした産業構造が大きく崩れます。

加藤 自動車がA地点からB地点への単なる運搬手段であるなら、そうかもしれません。でも自動車はそうではありません。愛車と言うように、多くの人が自分のクルマに愛着を持っている。こんな産業製品はそう多くはありません。しかも環境や安全という要素もある。だからこそ技術革新が必要で、この技術革新には終わりはありません。そうなると汎用品というわけにはいかないのではないでしょうか。

―― トヨタというと改善です。でも改善の積み重ねで壁にぶつかったときには飛躍も必要です。そのバランスをどう取っていますか。

加藤 ある前提でシステムを考えたとします。でも技術革新が進み、素材や部品が劇的によくなったとします。すると今度はそれに合わせてシステムを見直す。その繰り返しです。例えば生産性を上げるためにラインにロボットを導入する。すると次はロボットの効率をさらに高めるために設計を見直す。ですから飛躍をするためのネタは改善の中にあるのです。

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(かとう・みつひさ)1953年生まれ。75年北海道大学工学部を卒業しトヨタ自動車工業(現トヨタ自動車)入社。一貫して開発畑を歩み、2004年常務役員、10年専務取締役、11年専務役員を経て、12年副社長に就任。また13年にはTNGA統括、今年4月から未来創生センター統括を務める。(写真/上山太陽)

 それに自動車にはモデルチェンジがあります。これが飛躍のチャンスです。そのためにも、普段からなぜ改善するのか、意識していなければなりません。その意識が進化につながる。

―― 乾いた雑巾を絞ると言われてから40年以上たっています。それでも改善に終わりはないんですね。

加藤 若い頃から仕事には、仕事と無駄がある、と教わってきました。そこで無駄を取り除く努力をし、それによってコストも下がる。ああ終わった、と思って仕事を始めると、まだまだ無駄があることに気づく。努力して次のステップに進むと、次の無駄が見えてきます。

 トヨタには「正味仕事」という概念があります。例えば、5秒に一度鉄板をプレスする。でもプレスの瞬間はコンマ何秒か。このコンマ何秒が正味仕事です。ということは、ここに改善の余地があるかもしれない。そういう考え方をしています。

トヨタを支える創業以来の危機感

―― 世界一の自動車メーカーとなり、財務的にも万全です。でもその成功体験が時には企業の成長を妨げます。成功体験をどうやって払拭していますか。

加藤 これでメシが食えなくなったらどうするんだ、という危機意識です。もし織機だけを続けていたら今のトヨタグループはありません。ベンチャー精神を持っていたから今がある。それは先輩たちから引き継いだものです。

 昨年、FCV(燃料電池車)の「MIRAI」を発売しました。MIRAIは単に新しい動力源のクルマというだけではありません。日本のエネルギー自給率は極めて低い。これは社会的課題です。エネルギーセキュリティーをいかに確保するか。その答えのひとつが水素社会です。これに取り組むことを会社として決断しました。水素社会において、クルマはどうあるべきか、ということでつくったのがMIRAIです。これから東京オリンピック・パラリンピックに向けて、水素社会を実現するための提案をどんどんしていきます。もう引き下がれません。このように、常に次を考える。今年、アメリカにAI研究の会社を立ち上げたのもその一つです。

―― 経営陣が危機意識を持つのは分かりますが、現場に浸透させるのは容易ではありません。

加藤 現場の人間にしてみれば、今日の仕事が明日も続いたほうが楽なのは当然です。でもそれではいけない。そのためトップが会社の方針を明確にし、それを下まで浸透させる。昨年発売したプリウスから「TNGA」という新しいクルマづくりが始まりました。これは単なるコスト削減運動ではなく、「お客さまのために、お客さま目線に立ったクルマを創る」ことの原点に立ち返るための、開発体制と車づくりの方向性の大改革です。つまり社員の行動改革そのもので、トヨタが変わっていくことのメッセージです。こういう活動をとおして、危機意識やチャレンジスピリットを現場に浸透させているのです。

 
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