テクノロジー

20161101LINE_P01

舛田淳・LINE CSMO(左)と嘉戸彩乃・LINEモバイル社長

MVNO(仮想移動体通信事業者)の中で台風の目になりそうなのが、このたび新規参入したLINEモバイルだ。LINEをはじめとするコミュニケーションアプリ利用時の通信料が無料となるサービスを打ち出す。コミュニケーションの利便性を高めることで、スマホの普及拡大を目指す。

スマホはまだ普及拡大の余地あり

 LINEは、LINEを入口として、1日の生活のすべてを支援していく世界「スマートポータル構想」を掲げている。LINEを入口にするという観点では、LINEの利用者を今以上に増やしていくため、スマートフォンの普及率をさらに高める必要がある。

 舛田淳・LINE CSMOは次のように語る。

 「日本のスマホ普及率は56.9%で、消費者の約半分がまだスマホを使っていないことになる。これは先進国の中では低い水準で、そこには消費者の不満があるからだ」

 その消費者の不満を解消するために、LINE自らがモバイル事業に参入した。

 事業参入にあたっては、NTTコミュニケーションズをMVNEとし、新たに設立された100%子会社のLINEモバイルがMVNOの事業主体となる。サービスの最大の特徴は、LINEが使い放題になることだ。LINEの音声通話、トーク、画像や動画の送受信、タイムライン利用時の通信料をカウントフリー、つまり無料にする。今回投入するプランは「LINEフリー」と「コミュニケーションフリー」の2つ。

 LINEフリーはLINEを始めたいからスマホを持ちたいというエントリーユーザー、ライトユーザー向けで、LINEのみ使い放題となる。データ通信のみが月額500円、データ通信プラスSNSが月額620円、データ通信プラス音声通話が月額1200円となっている。

 一方、コミュニケーションフリーは一般ユーザーからヘビーユーザー向けで、LINEに加え、Twitter、Facebookでもカウントフリーとなる。「コミュニケーションはモバイルの核と考えており、通信制限がかかった状態でも、これらのコミュニケーションアプリの利用を担保する」(嘉戸彩乃・LINEモバイル社長)。データ通信容量は3GB/5GB/7GB/10GBの用意。3GBの場合で、データ通信プラスSMSを月額1110円から、データ通信プラス音声通話を月額1690円となっている。

 また、容量制限に達した場合、0.5GBにつき500円で、通信量を追加購入できる。またLINEでつながっているユーザー同士で、データ容量を送り合うこともできる。

 LINEでは今回の発表を「LINEモバイル1.0」と位置付ける。今後の「LINEモバイル 2.0」以降では、LINE MUSICの通信量を無料にするプランなど新しいサービスを順次追加し、徐々に進化させていく方針。

戦略に矛盾はないのか

 LINEモバイルは9月5日に2万契約限定の先行販売を実施。本格販売は当初10月1日の予定だったが、前倒しして9月21日にスタートした。

 その一方で、既存のMVNOに比べて、サービスサポートの点で後れを取っている印象を受ける。特にスマホの普及率を高めるための事業参入とする割には、これからスマホを手にするであろう中高生や、スマホの普及率の低いシニア層にとって、すぐに飛びつける状態とは言いがたい。

 まず販売をオンラインのみに限っている。そのため、早い場合でもSIMの到着は申し込みの翌日となる。MNPの切り替えは、SIM到着の2日後に自動切り替えになるか、ユーザーが直接カスタマーサポートに電話して切り替えることになる。利用にはそれなりのITリテラシーが必要とされる。

 また、契約できるのは18歳以上のLINEユーザーとなっており、中高生が利用する場合は、利用者と契約者をそれぞれ登録する必要がある。支払いもクレジットカードとLINE PayおよびLINE Payカードに限っている。LINE Payカードは18歳以下でも使用できるが、18歳以上でも若年層でクレジットカードを利用していないケースもある。支払いを考慮すると新規利用に一定の煩わしさは残る。

 将来的には量販店などのリアル店舗に展開していくとしているが、あくまでユーザーの声を聞いた上で対応する方針。サービスがスタートしたばかりということもあり、指摘されている懸念に対して、舛田氏は意に介さない。

 「スマホはまず使う人がいて、その便利さを周りの人が見て、使う人が徐々に増えて広がっていく構造だと思う」

 当面はLINEを使いこなしてきた層から利用者を獲得していき、その口コミで評判が広がっていくことを期待するかたちだ。現在のメインストリームから少し外れた展開となるが、LINEというブランドを武器にどこまでやれるか、注目が集まっている。

関連記事

好評連載

エネルギーフォーカス

一覧へ

緑の経済成長とエネルギー

[連載] エネルギーフォーカス

Energy Focus

[連載] エネルギーフォーカス

電力業界のイノベーション

[連載] エネルギーフォーカス

今後、10年後の電力業界の様相(2)

[連載] エネルギーフォーカス

発電単価から既存原発の経済性を考える

[連載] エネルギーフォーカス

日本は再生エネルギーで世界トップとなる決断を

テクノロジー潮流

一覧へ

科学技術開発とチームプレー

[連載] テクノロジー潮流

テクノロジー潮流

[連載] テクノロジー潮流

エボラ出血熱と情報セキュリティー

[連載] テクノロジー潮流

21世紀の日本のかたち 農電業と漁電業

[連載] テクノロジー潮流

工学システムの安全について

[連載] テクノロジー潮流

エネルギー移行と国民の価値観の変化

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

「創造と変革」を掲げリーダー教育事業を展開しているグロービス。未来が予見しづらい混迷の時代を迎え、まさに新たな時代を切り拓いていくリーダーが求められている。そのような状況を受けて、グロービスは昨年、新たに執行役員以上に限定したエグゼクティブ向けのプログラム「知命社中」を開設した。[PR]次世代を担う経営リーダ…

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

「支持政党なし」をつくった男のユニークな発想とビジネス――佐野秀光(情報通信ネットワークグループ社長)

新社長登場

一覧へ

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

創業から95年、海外に進出してから50年以上たつ国際派企業の高砂香料工業。合成香料では日本最大手であり、国際的にも6%以上のシェアを持つ優良企業だ。100年弱の歴史を持つ高砂香料工業── まず御社の特徴をお聞かせください。桝村 1920年創業ですから、2020年に100周年を迎える香料の専門メーカーです。基本…

桝村 聡

「ネット広告が変わってもクライアント本位の姿勢は変わりません」--バリューコマース社長 香川仁

「最新情報を発信、人と企業の働く環境を良くしていきます」--マンパワーグループ社長 池田匡弥

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

リグナ社長 小澤良介 家具のEC販売から様々な展開へ

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 教育部門と…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年9月号
[特集]
この夏飲みたい日本の酒

  • ・総論 量から質へ“こだわり”が求められる時代へ
  • ・埼玉・秩父から世界一へ イチローズモルトの奇跡
  • ・家庭でも酒場でもレモンサワーが飲まれる理由
  • ・幕末からよみがえった都心の酒蔵 東京港酒造
  • ・本間哲朗(アプライアンス社社長)
  • ・伊豆で愉しむ野趣なワインと夏の富士
  • ・トップが薦めるこの夏のビール

[Special Interview]

 宮内義彦(オリックス シニア・チェアマン)

 「トップの器以上に会社は大きくならない」

[NEWS REPORT]

◆ヨーロッパに続け! 動き始めた日本の再エネ事業

◆東芝のPC事業を買収し8年ぶりに参入するシャープの勝算

◆日産―ルノー経営統合問題に苦慮するカルロス・ゴーン

◆大阪がエンタメで仕掛けるインバウンドと夜の経済

働きがいのある会社を総力取材

 人材育成企業20

 企業の成長戦略をクローズアップ

ページ上部へ戻る