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LINE使い放題が売りの格安スマホ参入は成功するか

舛田淳・LINE CSMOと嘉戸彩乃・LINEモバイル社長

舛田淳・LINE CSMO(左)と嘉戸彩乃・LINEモバイル社長

MVNO(仮想移動体通信事業者)の中で台風の目になりそうなのが、このたび新規参入したLINEモバイルだ。LINEをはじめとするコミュニケーションアプリ利用時の通信料が無料となるサービスを打ち出す。コミュニケーションの利便性を高めることで、スマホの普及拡大を目指す。

スマホはまだ普及拡大の余地あり

LINEは、LINEを入口として、1日の生活のすべてを支援していく世界「スマートポータル構想」を掲げている。LINEを入口にするという観点では、LINEの利用者を今以上に増やしていくため、スマートフォンの普及率をさらに高める必要がある。

舛田淳・LINE CSMOは次のように語る。

「日本のスマホ普及率は56.9%で、消費者の約半分がまだスマホを使っていないことになる。これは先進国の中では低い水準で、そこには消費者の不満があるからだ」

その消費者の不満を解消するために、LINE自らがモバイル事業に参入した。

事業参入にあたっては、NTTコミュニケーションズをMVNEとし、新たに設立された100%子会社のLINEモバイルがMVNOの事業主体となる。サービスの最大の特徴は、LINEが使い放題になることだ。LINEの音声通話、トーク、画像や動画の送受信、タイムライン利用時の通信料をカウントフリー、つまり無料にする。今回投入するプランは「LINEフリー」と「コミュニケーションフリー」の2つ。

LINEフリーはLINEを始めたいからスマホを持ちたいというエントリーユーザー、ライトユーザー向けで、LINEのみ使い放題となる。データ通信のみが月額500円、データ通信プラスSNSが月額620円、データ通信プラス音声通話が月額1200円となっている。

一方、コミュニケーションフリーは一般ユーザーからヘビーユーザー向けで、LINEに加え、Twitter、Facebookでもカウントフリーとなる。「コミュニケーションはモバイルの核と考えており、通信制限がかかった状態でも、これらのコミュニケーションアプリの利用を担保する」(嘉戸彩乃・LINEモバイル社長)。データ通信容量は3GB/5GB/7GB/10GBの用意。3GBの場合で、データ通信プラスSMSを月額1110円から、データ通信プラス音声通話を月額1690円となっている。

また、容量制限に達した場合、0.5GBにつき500円で、通信量を追加購入できる。またLINEでつながっているユーザー同士で、データ容量を送り合うこともできる。

LINEでは今回の発表を「LINEモバイル1.0」と位置付ける。今後の「LINEモバイル 2.0」以降では、LINE MUSICの通信量を無料にするプランなど新しいサービスを順次追加し、徐々に進化させていく方針。

戦略に矛盾はないのか

LINEモバイルは9月5日に2万契約限定の先行販売を実施。本格販売は当初10月1日の予定だったが、前倒しして9月21日にスタートした。

その一方で、既存のMVNOに比べて、サービスサポートの点で後れを取っている印象を受ける。特にスマホの普及率を高めるための事業参入とする割には、これからスマホを手にするであろう中高生や、スマホの普及率の低いシニア層にとって、すぐに飛びつける状態とは言いがたい。

まず販売をオンラインのみに限っている。そのため、早い場合でもSIMの到着は申し込みの翌日となる。MNPの切り替えは、SIM到着の2日後に自動切り替えになるか、ユーザーが直接カスタマーサポートに電話して切り替えることになる。利用にはそれなりのITリテラシーが必要とされる。

また、契約できるのは18歳以上のLINEユーザーとなっており、中高生が利用する場合は、利用者と契約者をそれぞれ登録する必要がある。支払いもクレジットカードとLINE PayおよびLINE Payカードに限っている。LINE Payカードは18歳以下でも使用できるが、18歳以上でも若年層でクレジットカードを利用していないケースもある。支払いを考慮すると新規利用に一定の煩わしさは残る。

将来的には量販店などのリアル店舗に展開していくとしているが、あくまでユーザーの声を聞いた上で対応する方針。サービスがスタートしたばかりということもあり、指摘されている懸念に対して、舛田氏は意に介さない。

「スマホはまず使う人がいて、その便利さを周りの人が見て、使う人が徐々に増えて広がっていく構造だと思う」

当面はLINEを使いこなしてきた層から利用者を獲得していき、その口コミで評判が広がっていくことを期待するかたちだ。現在のメインストリームから少し外れた展開となるが、LINEというブランドを武器にどこまでやれるか、注目が集まっている。

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