マネジメント

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帰省利用や気軽な旅など、日本の空に新たな需要を掘り起こしたLCC(低コスト航空会社)。今や航空需要の1割を占めるほどになっている。業績が低迷していたジェットスター・ジャパンも単年黒字化し、業界自体の成長が期待されるが、一方で、国際競争は激しさを増している。文=本誌/古賀寛明

主要3社とも黒字化を達成

 関西国際空港や成田空港の第3ターミナルに行くと、多くのLCCがアジア各地から到着し、また出発していく。ロビーを見渡しても、バックパッカーや若い女性のグループが目につく。そうした光景を見るたびに、LCCの登場が、国際線の旅を身近なものにしたのだという感慨が湧いてくる。

 今年、2千万人を突破することが確実視されている訪日外国人観光客の拡大をけん引したのは、ビザの緩和や円安といった面もあるが、LCCの貢献も忘れてはならない。日本はLCC後進国といわれるが、アジア地域、特に東南アジアでは航空需要の6割近くを占める。また、多くの海外LCCが就航先に関西空港を選ぶのもLCCならではの理由が関係している。

 客単価が低いLCCは、できるだけ多くの乗客を乗せねばならず、その結果、シート間隔は狭くなる。こうした理由から一般的に飛行時間は4時間以内が限度といわれる。関空が成田よりも人気という裏には、単純にアジアとの距離が近いといった地理的優位性もあるのだ。クルーズ船が博多港に集中するのも同じような理由からだ。

 日本にLCCが誕生したのは、2012年のこと。あれから4年、ようやく日系主要3社のLCCがすべて黒字化した。既に13年から黒字化したピーチ・アビエーション(以下、ピーチ)は16年3月期に営業利益を過去最高の61億円にまで伸ばしている。ANAホールディングスの100%子会社であるバニラ・エアも15年3月期から黒字化を果たし、今期も15億円弱の営業利益を達成した。

 15年6月期は79億円の営業損失を出していたジェットスター・ジャパン(以下、ジェットスター)も、92億円もの改善に成功。1年前倒しで黒字化を達成し、13億円の営業利益を出した。主要3社がすべて黒字化したのは初めてのこととなる。さらに、日本の航空需要に対しLCCの割合はまだ1割程度と諸外国に比べても低いため、まだまだ伸び代はあると考えられており、今後の成長曲線も描きやすい。

 とはいえピーチは、3年連続の黒字で累積損失を解消したが、バニラ・エアとジェットスターには累損があるなど、財務基盤はまだ脆弱。さらに言えば、昨年来の原油安の影響で航空燃料も格段に安い、それが決算に好影響を与えていることは否めない。さらに国際的な視野でみれば、雨後の筍のように乱立していたLCCも競争激化で、淘汰の波が押し寄せているのだ。

国際間の競争激化で相次ぐ撤退・再編

 9月末、くまモンにそっくりなキャラクターを全面に出し、かわいいLCCと評判だった台湾の会社、Vエアが運航を停止した。羽田をはじめ、関空、セントレアなど日本路線を主な戦場としてきたが、日系LCCやシンガポールのスクートといったライバルとの競争に敗れた形だ。「フルサービスキャリアの親会社であるトランスアジア社の機材を利用するなど、LCCの基本である効率的な運航ができなかったのでは」(航空関係者)といった声も上がるなど、戦略的な失敗もあったのだろうが、突然の発表には驚かされた。

 Vエアに限らず、最近、アジア地域で撤退や再編といったニュースをよく耳にする。日本は、アジアの中で少し離れた位置にあることで、まだ本格的な競争には巻き込まれてはいないが、いずれ、その争いが始まるとみられている。主役となりそうなのが、マレーシアのエアアジアグループと、カンタス航空傘下のジェットスターグループだが、日本のジェットスターは黒字化したばかりだし、楽天が出資したことで話題になったエアアジア・ジャパンの再出発のめどはまだ立っていない。そうした意味では、競争はもう少し先なのかもしれない。ただ、そのときに備え、日本勢もそれぞれの成長戦略を取り始めている。

 ジェットスターは、グループメリットを生かしながら、今後は中国本土などアウトバウンド、インバウンド両方が見込める海外の都市を中心に就航する成長戦略を打ち出している。

 バニラ・エアも9月に成田空港とフィリピンのセブ、台北経由のホーチミンなどに就航するなど、国際線への新規就航が目立つ。また、この5月にはLCCでは初のアライアンスに参加。シンガポール航空傘下のスクートやタイガーエアといったLCCと共同戦線を張るなど、攻めと同様守りにも手を打っている。両社に共通するのは、現在の収益の柱である国際線を成長につなげていこうという考えだ。

 一方のピーチは地方創生の切り札としても期待されている。先日も、18年度中に北海道の新千歳空港を関西、那覇、仙台に続く4つ目の拠点にすると発表。道内他地域を新千歳空港や本州の空港と結ぶ予定だ。また、機内食に「近大マグロ」ならぬウナギ味の「近大ナマズ」を出すなど、豊富なアイデアで、価格だけに頼っていない。これが経営の安定化につながっている。

 ただ、LCCの損益分岐点は搭乗率80%前後といわれる。今後、航空燃料の上昇や新たなライバルの登場などを考えれば、黒字達成くらいではとても浮かれてはいられないようだ。

 

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