サムスン発火スマホ販売終了は日本企業に追い風となるか

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相次ぐ発火事故の原因を特定できず、韓国サムスン電子の最新スマートフォン「ギャラクシーノート7」の販売終了が決定した。今後はノート7の置き換え需要の行方に注目が集まる。サムスン以外のスマホの需要増加で、日本メーカーの状況好転が期待される。文=本誌/村田晋一郎

iPhone7に対抗する最高峰スマホで相次ぐ事故

 韓国サムスン電子は10月11日、発火事故が相次いだ新型スマートフォン「ギャラクシーノート7」の生産および販売終了を決めた。

 サムスンの「ノートシリーズ」は、「ファブレット」というカテゴリーを確立したハイエンド大型スマートフォン。ノート7は最新機種であり、8月19日に韓国や米国、中国など10カ国で販売を開始した。9月に発売した米アップルの最新スマホ「iPhone7/7プラス」を意識し、ノート7には虹彩認証技術や高速無線充電、防水防塵機能など最先端技術を投入。最高峰のアンドロイドベースのスマホになるはずだった。

 ところがノート7は発売直後から本体の発熱による発火事故が相次いだ。サムスン側では9月2日に全世界での出荷と販売を停止。日本では発売されていなかったが、海外で調達したSIMフリー端末が持ち込まれる可能性があり、使用が問題視された。

 当初サムスンは発火の原因は内蔵バッテリーにあるとの見解を発表。ノート7に搭載されているリチウムイオンバッテリーは、7割がサムスンの子会社のサムスンSDI製、3割はTDK子会社の中国アンペレックス・テクノロジー(ATL)製となっていた。発火事故がサムスンSDI製で相次いだことから、サムスンはATL製バッテリー搭載品に交換し、なおかつソフトウエアのアップデートなどの対策を講じた。

 9月中旬には交換プログラムが開始され、事態は収束するかに見えた。しかしその後、問題ないとされたATL製バッテリーを搭載し対策を施した製品でも発火事故が起こった。原因はいまだ明らかになっていないが、バッテリー以外の要因が浮上。さまざまな機能を詰め込み過ぎたためにバランスを欠いた設計上のミスが問題視されるようになってきた。

 原因が特定されないまま、その後も事故が続く状況に至って、サムスンはノート7の生産および販売の終了を決定。日本でもNTTドコモやKDDIが16年冬モデルの目玉として販売する予定だったが、サムスン側から販売見送りの通告があったという。こうして最高峰スマホは発売開始後わずか50日で市場から退場することになった。

液晶パネル需要増加でシャープやJDIに恩恵

 既にノート7は全世界で1200万台が発注済みといわれる。サムスンではノート7ユーザーに対して、返金または同社製品への交換を行う方針。今回の販売終了で、この1200万台の需要がどこに向かうかが注目されている。

 ノート7がハイエンドのファブレットであることを考えると、ユーザーはサムスン製品よりは他社製品に流れる動きが強いと考えられる。有力視されているのは、世界シェアでトップのサムスンに続くアップルと中国Huawei(ファーウェイ)、さらに今年に入ってシェアを急拡大している中国の新興メーカーOPPO(オッポ)とVivo(ビーボ)。台湾の調査会社トレンドフォースのスマホ出荷台数予想は、アップルを300万台、ファーウェイを400万台、それぞれ引き上げている。日本メーカーについては、世界市場に展開するグローバル端末はソニーの「エクスぺリア」ぐらいで、あまり恩恵はない。

 むしろ日本メーカーへの影響はディスプレー部材が大きい。近年のサムスン対アップルの競合状況で煽りを食っていたのが、液晶ディスプレーを供給するシャープとジャパンディスプレイ(JDI)だった。

 サムスンはノートシリーズや主力スマホ「Sシリーズ」のディスプレーに有機ELを採用。有機ELは低消費電力や高い動画表示性能などから次世代ディスプレーの本命と目されている。シャープやJDIでも開発を進めているが実用レベルに至らず、現在スマホ向けはサムスンがほぼ独占的に供給している。

 一方、アップルのiPhoneには液晶パネルが採用されているが、昨年発売した「iPhone6S」の需要低迷が、シャープやJDIの業績を悪化させていた。特にディスプレー専業で、アップル向けが売り上げの5割を占めるJDIの状況は深刻で、2016年3月期には2期連続の赤字を計上。資金繰りの危うさから、経営危機が囁かれていた。それが今回の発火事故を受けて、アップルおよび中国メーカーからの受注が急増し、増産体制に入るという。

 また、サムスンとしても事故の全容を解明できない限り、次期製品の開発を進められない。今後の対応に時間を要すると、有機EL対液晶の競合状況も変わってくる。英調査会社のIHSテクノロジーは事故発生前の7月、スマホ向けパネル出荷金額で有機ELが液晶を18年に上回る予測を立てていた。サムスンの開発ペースが鈍ることで液晶が延命し、この予測が後ろ倒しになる可能性が出てきた。

 シャープやJDIにとっては、液晶で時間稼ぎができるうちに、液晶工場の稼働率を上げて財務を回復させて、次の有機ELの開発を加速し、サムスンに追い付くチャンスがやってきた。今回のサムスンの失策は、一瞬だが神風になるかもしれない。

 
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