政治・経済

20161115DAIWA_P01

人気を集める新規公開株。一時は新規公開企業が年間20社を下回ることもあったが、最近では100社近くに回復した。この傾向は今後も続くのか。もし続くなら、どのような投資スタンスで臨めばいいのか。大和証券の松下健哉・公開引受部長に語ってもらった。

成長率が魅力のIPO企業

 今年の新規IPOは、11月1日までで64社を数えています。例年、11月、12月には数が増えるため、年間トータルでは90社前後になるとみています。昨年は92社。リーマンショック直後の2009年に19社にまで落ち込みましたが、ようやくここまで回復してきました。

 今年のIPO市場の特徴といえば、LINEやコメダホールディングス、富山第一銀行、そして10月のJR九州など、東証一部へ直接上場する大型株も一方ではあったものの、多くが、マザーズなど新興市場へ上場する調達額10億円前後のベンチャー企業だったことです。

 そして新興市場に上場した多くの株の初値パフォーマンスが非常に良かった。初値が公開価格の2~3倍を超えたケースも珍しくありません。今年、当社が主幹事証券を務めたところは現在まで14社ありますが、その中でもグローバルウェイが373%、アトラエが136%、初値が公開価格を上回るなど、高いパフォーマンスを示しています。日経平均株価は年初から2千円近く下げているなど既存市場は低調なだけに、IPOのパフォーマンスの良さが目立ちます。

 その要因は、第一に受給の逼迫です。新興市場でのIPOは中小型株が中心のため、そもそも売り出し株数が少ない。そこで人気が集中し、それが高い初値に結び付く。数年前には、初値が公開価格を下回ったり、上場後すぐに株価が大幅下落するケースもありましたが、今は当時に比べれば株式市場も良好で審査も厳しく、また主幹事会社も初値後のパフォーマンスを気にするようになっています。そのため最近IPOをした企業の成長性は押しなべて高い。インターネットを活用したビジネスを手掛ける会社が多いこともあり、経常利益の年率30%成長など当たり前です。この成長率が、IPO人気をさらに高いものにしています。

 これは、外国人投資家が新規上場株に入ってきていることからも裏付けられます。その意味で、IPO企業の株価は、適正な水準となってきていると言えるでしょう。

 IPO市場が活気づくと、市場全体が活気づきます。前述のように既存市場に勢いはありませんが、IPO企業のパフォーマンスが良ければ、それをもとに資金が次の新規上場株に向かうだけでなく、既存市場に流れる可能性もある。今の状況は歓迎すべきだと考えています。

活況は今後も続く

 企業数、人気ともに活況を呈しているIPOですが、この傾向は今後も続くと思います。IPO企業数も、来年は100社を超えると見ています。根拠として、われわれが主幹事証券会社となるために、IPOを考えている企業を訪問する件数が増えていることが挙げられます。さらには、実は昨年の今頃も、16年のIPO企業数は100社を超えるのではと言っていましたが、実際には90社前後。その差の10社が来年の予備軍となるため、100社を超える可能性はかなり高い。

 その先を見ても、IPOを目指す企業は増えることはあっても減ることはないような気がしています。SNSを見ると、ベンチャー企業を立ち上げたという若い人の投稿をよく目にします。大手企業を辞めて、自ら起業するケースも非常に多い。もはやベンチャーを起業することは、一過性のブームなどではなく、ひとつの選択肢として完全に日本に定着したと言っていいでしょう。ベンチャー企業の裾野が広がれば、それだけIPOできる企業も増えていきます。

 ではIPO株に投資する場合、どこに着目したらいいか。そして手に入れた株をいつ手放したらいいのか。公開価格で入手できれば言うことはありませんが、ベンチャー株は公開株数も少ないため、間違いなく抽選になります。その幸運を手にした場合、初値で売るべきか、それとも保有し続けるべきか。

 ネット証券の投資家の場合は、初値で売るケースが多いようですが、窓口で買われた投資家の中には持ち続ける人も珍しくないようです。企業が成長し株価も上がるという夢を買う投資家たちです。先ほど言ったように、最近は初値形成後も株価推移が堅調なIPO企業も増えていますし、配当や優待も期待できる。すぐに売るかどうかは投資家の判断次第です。

 銘柄選定にあたっては、過去の成長力と今後の成長力を見極めることが必要ですが、トレンドの業界かどうかも大きなファクターになります。今ならAI関係や、フィンテックなど〇〇テックと呼ばれるもので、今後の成長も期待できます。同時に営業利益率の高い企業も魅力的です。IT系のベンチャー企業の中には、利益率が30%を超えるところもありますが、そういう会社は独自のテクノロジーを持っているところが多いように思います。

 経営者を見て判断すべき、と言いますが、個人投資家が経営者に面談するのは簡単ではありません。しかし最近では、個人投資家を対象にIR説明会を開く企業も増えてきています。そうした機会を利用すれば、経営者の考えを直接聞くことができますから、投資判断の参考にしたらいかがでしょうか。(談)

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

不動産のノウハウや技術を生かしサステナブルインフラへ―いちご

現存の不動産に新しい価値を創造する「心築(しんちく)事業」とJ‐REIT運用、太陽光などのクリーンエネルギー事業が主力。社名の「いちご」は一期一会に由来しており、サステナブルインフラを通じて日本の社会を豊かにすることを目指している。文=榎本正義(『経済界』2019年9月号より転載) 長谷川拓…

次世代車向け先進技術を応用する日本発プラットフォーマー ―イーソル

社員に奨学金を提供―ミツバファクトリーが実践する中小企業が勝つための福利厚生とは

新社長登場

一覧へ

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

アサヒグループ食品の副社長から、この3月にアサヒビールの社長に就任した塩澤賢一氏。長年、ビール営業畑を歩み、マーケティングを兼ねた繁華街歩きを趣味にしている。街の変化から世の中の流れを読む塩澤新社長が挑むのは低迷するビール市場の活性化。若者需要を伸ばしつつ、スポーツイベントを商機として攻勢をかけていく。聞き手…

「事業部門の連携を活性化させ営業利益100億円を目指す」 内藤宏治(ウシオ電機社長 )

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

イノベーターズ

一覧へ

シリコンバレーへの挑戦が生んだ「起業家と投資家が待ち望んだサービス」― 戸村光・ハックジャパンCEO

起業家のスタンスとして、画期的な技術やビジネスモデルを社会で活かすことを目的としたイノベーション先行型もあれば、社会課題解決を最優先とし、そこに必要な技術やノウハウを当てはめていくやり方もある。ハックジャパンCEOの戸村光氏の場合は後者。対象となる課題は「身の周りの気付いたことすべて」だ。(取材・文=吉田浩)…

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年9月号
[特集] 東京五輪以降──ニッポンの未来
  • ・2度目の東京五輪 今度はどんなレガシーが生まれるのか
  • ・高岡浩三 ネスレ日本社長兼CEO
  • ・脱CO2の切り札となる水素活用のスマートシティ
  • ・五輪契機にテレワーク普及へ「柔軟な働き方でハッピーに」
  • ・ワーケーション=仕事×余暇 地域とつながる新しい働き方
  • ・「ピッ」と一瞬で決済完了! QRしのぐタッチ決済の潜在力
  • ・東京五輪で懸念される調達リスク
  • ・フェアウッド100%使用にこだわる佐藤岳利(ワイス・ワイス社長)の挑戦
[Special Interview]

 原田義昭(環境大臣・内閣府特命担当大臣)

 世界の脱炭素化、SDGs「環境」が社会を牽引する

[NEWS REPORT]

◆フェイスブックの「リブラ」で仮想通貨も「GAFA」が支配

◆脱炭素社会へ 鉄リサイクルという光明

◆PBの扱いを巡り業界二分 ビール商戦「夏の陣」に異変あり

◆中国の次は日本に矛先? トランプに脅える自動車業界の前途

[特集2]

 北の大地の幕開け 北海道新時代

・ 鈴木直道(北海道知事)

・ 岩田圭剛(北海道商工会議所連合会会頭)

・ 安田光春(北洋銀行頭取)

・ 笹原晶博(北海道銀行頭取)

・ 佐々木康行(北海道コカ・コーラボトリング社長)

・ 會澤祥弘(會澤高圧コンクリート社長)

・ 佐藤仁志(北海道共伸特機社長)

・ 内間木義勝(ムラタ社長)

ページ上部へ戻る