政治・経済

20161115SBI_P01

初値が公開価格を大きく上回るケースが相次いでいるIPO市場。そこで重要なのが、主幹事証券会社。新規公開株の8割を引き受けるため、手に入れたければ、主幹事を通す以外の道は極めて困難だ。そこで最近、主幹事件数が伸びているSBI証券の髙村正人社長に話を聞いた。

リーマンショックで激変した主幹事証券

―― 今年のIPO市場はいかがでしたか。

髙村 IPO市場は以前に比べると東証の審査が厳格化されたこともあり、投資家にとって不透明感が軽減されました。特に新興市場におけるIPO株は、小粒でも成長性の期待できる銘柄が多いこともあり人気となっています。しかも全体の相場のダイナミズムが減退していることもあり、おのずとIPO株に注目が集まります。

 しかし公募・売出ボリュームが少なく、オーバーブックになるケースが多いため、初値が売り出し価格の2~3倍になるのも致し方ない状況です。

―― 11月1日時点で、今年IPOした企業数は64社。このままいけば90社前後となりそうです。この数についてはどうですか。

髙村 2000年頃には200社を超えていましたが、いたずらに数が多ければいいというものではありません。当時上場した企業が今どうなっているか。上場してからの企業の永続性を考えると、100社前後がほどよいのではないかと思います。

―― 活況を呈するIPO市場ですが、SBI証券は今年8社の主幹事証券を務め、過去最高に並びました。

髙村 承認済みを含めると現在9社で、記録を更新しました。年末までにはもう数社の上場がありそうですから、初の2桁が見えてきました。

 当社が主幹事証券業務に取り組み始めたのは05年からです。当時は年間1社か2社の主幹事を務めるのがせいぜいでしたが、12年から5社以上の主幹事となり、伸び続けています。

―― 主幹事証券ランキングでは、現在5位につけています。なぜ、主幹事件数が増えているのですか。

髙村 ひとつには、リーマンショック以降、IPO業務を縮小・撤退した証券会社が増えたことです。でもSBIグループには、「新産業クリエーターであれ」という理念があるため、撤退も縮小もせず、業務を続けてきました。そこで実績を重ねるにつれ、引き合いも増えてきました。

 もうひとつ大きいのは、SBI証券はネット証券の最大手で、個人投資家シェアは35・7%に達しています。IPO株の主たる市場であるマザーズやナスダックにおいては個人投資家の売買シェアが7割を超えています。ですから発行会社(IPOをする会社)にとっても、SBI証券の存在は無視できません。主幹事でなくても、セカンドオピニオンを求められることが増え、その結果、IPO引受関与率(主幹事および幹事)は92%と、圧倒的1位となっています。

 このようにIPO引受に関与していると、最初は主幹事ではなくても、途中で他社から切り替わることもあります。価格やスケジュールで発行会社と主幹事が折り合わないこともあるからです。当社はこれまで39社の主幹事を務めてきましたが、約半分が途中から主幹事を引き受けた案件です。

上場した会社が次の会社を紹介

―― 他の証券会社が上場は無理だと判断したものでも、SBI証券なら上場させてくれるということではないですか。

髙村 そういうことではありません。当然企業審査を厳格にやる前提ですが、IPOを引き受けるにはコストも掛かります。小型案件の場合、主幹事を務めても採算割れする場合もあります。その点、当社は低コスト体質ですから採算が合わせやすい。それが当社の強みです。

 ありがたいのは、実績が増えるにつれ、A社の主幹事を務めたあと、同業態のB社から声がかかるケースが増えていることです。当社が主幹事でIPOした会社が他社に紹介してくれる。もし当社の引受業務に不満があったら、リコメンドをしてくれることはないでしょうから、これは誇っていいと思います。

 さらに当社は、上場後のサポートにも力を入れています。専門部隊を設置し、資本政策を立案し、資金調達や東証一部への指定替えなどのサポートを行うことで、発行会社と関わっていく。指定替えのためには株主数を増やす必要がありますが、それには当社の持つ販売力や株式の販売動向に関するやビッグデータが力を発揮します。

―― 主幹事会社は他の引受会社に比べると、売り出し株の割り当てが圧倒的に多い。そうなるとIPO株に興味がある投資家は、必然的にSBI証券に口座を持つことになります。

髙村 おっしゃるとおりで、主幹事会社への割当比率は一般的に80~85%になります。ですから主幹事証券会社以外から新規公開株を公開価格で買うことは非常に難しい。そして主幹事の件数が増えるにつれ、当社の口座数も増えています。それによって当社の存在感が増し、主幹事を引き受けやすくなる。その好循環が起きています。

―― 今後も幹事証券数を伸ばしていく方針ですか。

髙村 そのつもりです。今年2桁を達成のめどが立ったので、次は15社です。主幹事ランキングで3位以内を目指していきますし、そのくらいの引き合いは出てきています。

 

【SBI】関連記事一覧はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

不動産のノウハウや技術を生かしサステナブルインフラへ―いちご

現存の不動産に新しい価値を創造する「心築(しんちく)事業」とJ‐REIT運用、太陽光などのクリーンエネルギー事業が主力。社名の「いちご」は一期一会に由来しており、サステナブルインフラを通じて日本の社会を豊かにすることを目指している。文=榎本正義(『経済界』2019年9月号より転載) 長谷川拓…

次世代車向け先進技術を応用する日本発プラットフォーマー ―イーソル

社員に奨学金を提供―ミツバファクトリーが実践する中小企業が勝つための福利厚生とは

新社長登場

一覧へ

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

アサヒグループ食品の副社長から、この3月にアサヒビールの社長に就任した塩澤賢一氏。長年、ビール営業畑を歩み、マーケティングを兼ねた繁華街歩きを趣味にしている。街の変化から世の中の流れを読む塩澤新社長が挑むのは低迷するビール市場の活性化。若者需要を伸ばしつつ、スポーツイベントを商機として攻勢をかけていく。聞き手…

「事業部門の連携を活性化させ営業利益100億円を目指す」 内藤宏治(ウシオ電機社長 )

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

イノベーターズ

一覧へ

シリコンバレーへの挑戦が生んだ「起業家と投資家が待ち望んだサービス」― 戸村光・ハックジャパンCEO

起業家のスタンスとして、画期的な技術やビジネスモデルを社会で活かすことを目的としたイノベーション先行型もあれば、社会課題解決を最優先とし、そこに必要な技術やノウハウを当てはめていくやり方もある。ハックジャパンCEOの戸村光氏の場合は後者。対象となる課題は「身の周りの気付いたことすべて」だ。(取材・文=吉田浩)…

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年9月号
[特集] 東京五輪以降──ニッポンの未来
  • ・2度目の東京五輪 今度はどんなレガシーが生まれるのか
  • ・高岡浩三 ネスレ日本社長兼CEO
  • ・脱CO2の切り札となる水素活用のスマートシティ
  • ・五輪契機にテレワーク普及へ「柔軟な働き方でハッピーに」
  • ・ワーケーション=仕事×余暇 地域とつながる新しい働き方
  • ・「ピッ」と一瞬で決済完了! QRしのぐタッチ決済の潜在力
  • ・東京五輪で懸念される調達リスク
  • ・フェアウッド100%使用にこだわる佐藤岳利(ワイス・ワイス社長)の挑戦
[Special Interview]

 原田義昭(環境大臣・内閣府特命担当大臣)

 世界の脱炭素化、SDGs「環境」が社会を牽引する

[NEWS REPORT]

◆フェイスブックの「リブラ」で仮想通貨も「GAFA」が支配

◆脱炭素社会へ 鉄リサイクルという光明

◆PBの扱いを巡り業界二分 ビール商戦「夏の陣」に異変あり

◆中国の次は日本に矛先? トランプに脅える自動車業界の前途

[特集2]

 北の大地の幕開け 北海道新時代

・ 鈴木直道(北海道知事)

・ 岩田圭剛(北海道商工会議所連合会会頭)

・ 安田光春(北洋銀行頭取)

・ 笹原晶博(北海道銀行頭取)

・ 佐々木康行(北海道コカ・コーラボトリング社長)

・ 會澤祥弘(會澤高圧コンクリート社長)

・ 佐藤仁志(北海道共伸特機社長)

・ 内間木義勝(ムラタ社長)

ページ上部へ戻る