政治・経済

20161206MUFG

しんきん信託を吸収・合併した三菱UFJ信託銀行(Photo=佐藤元樹)

三菱UFJ信託銀行がしんきん信託銀行を吸収合併する。2019年9月の統合実現で当事者間の準備が進展中だ。国内信託銀行の統合劇は12年4月の住友信託・三井信託の統合によるメガ信託誕生以降約7年ぶり。信託銀行業界で何が起こっているのか。文=ジャーナリスト/高山怜史

しんきん信託銀行から1.3兆円を承継

 しんきん信託銀行は、系統金融機関である信金業界の全国組織、信金中央金庫(信金中金)の100%子会社として1994年に設立され、以後、「信金業界の信託銀行」として事業展開してきた。2016年3月末における新たな財産額は約2.1兆円であり、このうち約1.3兆円は証券投資信託の受託財産が占めている。

 三菱UFJ信託銀行が吸収合併方式で事業を承継するのは、信託財産額の過半を占める証券投資信託受託業務だ。しんきん信託銀行が行ってきた同業務以外の事業は、既に信託銀行免許を取得している信金中金が承継し、しんきん信託は消滅する。

 いわば、今回の統合劇は、しんきん信託銀行の解体ということになる。

 三菱UFJ信託は、「資産管理業務のグローバル展開」を基本路線として、海外のファンド管理会社の買収などの布石を打ってきたが、今回はその一環として、国内における資産管理業務の基盤拡充に動いたと言える。金融業界では、この動きは必然的なものとして受け止められている。

 「資産管理業務は金融ビジネスの中では極めて地味な領域で話題性は高くはないが、今後、日本の信託銀行が生き残るための大きなポイントとなる」と、有力外資系金融会社の幹部が語るように、わが国独特ともいえる信託銀行モデルに大きな転機が訪れているからだ。

 そもそも、信託業務を営む銀行という信託銀行制度はわが国が復興経済から高度経済成長に向かう中で整備された歴史がある。

 当時、産業界は著しい資金不足に陥っており、都銀などの普通銀行だけでは産業界への資金供給が足りなかったからだ。したがって、信託銀行は「信託を兼営する銀行」として、企業向け融資業務を主軸に置く銀行として成長を果たした。ところが、成熟経済から低成長経済に移行していく過程で、産業界の資金需要は構造的に後退し、次第に信託銀行は「銀行を兼営する信託会社」への脱皮を迫られてきていたのが近年の状況だった。

 しかも、そこに加わったのがデフレ脱却のための超低金利政策の長期化であり、信託銀行に限らず、銀行の国内総資金利ザヤは致命的ともいえるほどに悪化してしまった。信託銀行はいよいよ、信託業務に本腰を入れざるを得ない環境に突入したわけだ。

 とはいえ、信託業務の主軸である資産管理業務、中でも、証券投資信託受託業務は極めて利益が乏しく、一方ではシステムコストなどを継続的に迫られる。よほどの受託資産規模を確保しない限り、安定収益基盤とはなり得ない。

マイナス金利の影響がここにも

 そんな収益構造面の問題が深刻化していたのがしんきん信託にほかならなかった。同信託が近年、2億円に達しない最終利益水準が次第に先細る事態に甘んじていたのは、信金業界の信託業務という限界性の中で管理信託業務における規模の利益を追求しにくい状態にあって、この先も打開策を見いだすことは期待しにくかったからだ。

 金融機能のフル装備を個別信金が実現することはコスト面で不可能である。そこで、上部団体がその機能を担うという独特のスタイルをとってきたのが信金業界だ。

 今回、この業界ワンセット主義の一端が崩れかねないが、「体面で物を言うじたい時代ではない」と、ある中堅信金の理事長は語っている。時代の変化の岐路に立っているのは、信託銀行モデルだけではなく、信金業界も同様ということになるだろう。

 一方、信託銀行業界では、三菱UFJ信託、三井住友信託、みずほ信託、りそな銀行の大手4社のほかに、資産管理型に特化した信託銀行が数十社ある。また、ニューヨーク・メロン、ステート・ストリートという有力外資系も国内で事業展開しており、「今後、資産管理型ビジネスの競争は激化せざるを得ない」(信託銀行関係者)情勢だ。

 今回の出来事を契機にして、投資信託管理業務など管理信託部門において、「規模の利益」追求の合従連衡劇が拡大することもあり得る。

 日銀のマイナス金利政策の導入以後、投資信託管理信託などの分野では、受託した資産のうち、キャッシュ部分の管理が実質的にコスト高となったものの、それを受託フィーの値上げで穴埋めし切れないという事態が信託銀行業界で起きていることも見逃せない。

 また、例えば、今回、三菱UFJ信託は1兆3千億円の受託資産を承継するが、その受託資産を構成するのは数多くの投信ファンドであり、それらの個別管理は極めて非効率的でコストを費やさざるを得ない面がある。これは、あまねく信託銀行、投信運用会社が抱え込んでいる「負の遺産」である。

 結局、この面でもシステム投資などの優位性で事業をより効率化できるプレーヤーが生き残るという方程式が一段と明瞭になっている。そうした中で、三菱UFJ信託の最大ライバル、三井住友信託がいかなる動きに出るのかが注目されよう。

 

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