政治・経済

関空・伊丹に仙台と、2016年は「空港民営化元年」であった。既に運営権を握った企業が新たな取り組みを始めている。今後も高松、福岡、北海道といった空港が民営化される予定だが、果たして期待される地方創生の起爆剤になれるのだろうか。文=本誌/古賀寛明

訪日客増加で空港が地域拠点に

 これまで日本の空港は、滑走路や駐機場を国が、ターミナルビルをビル会社が持つ形をとっていた。ビルの運営といった非航空系事業の収支はほとんどの空港が黒字を生んでいるが、国の管轄である航空系事業はそのほとんどが赤字だったため、海外のように運営主体をひとつにする形が模索されてきた。

 20161220AIRPORTそこで、国は土地の所有権を持ちつつも、民間事業者に運営権を売却する、いわゆるコンセッション方式で、関空と伊丹をオリックスとフランス企業のヴァンシ・エアポートに、仙台国際空港を東急電鉄などの企業連合に売却することで経営を一体化させた。なおかつ、民間の資金とアイデアで空港事業を活性化し、地方創生の拠点としての期待も担うことになった。

 ただ、一義的には国や自治体の空港負担の軽減が運営権売却の目的で、負債の返還や新たな設備への資金調達が裏にあった。例えば、関空と伊丹を経営していた新関西国際空港は、国が100%出資する会社であったが、1兆円を超える巨額の負債を年間490億円、44年間の総額2兆2千億円で売却することで返還するめどが立った。折からの訪日旅行客の急激な伸びも、オリックスやヴァンシ・エアポートが名乗りを挙げる上で後押しになった。

 一方、新たな滑走路の資金ねん出のために、19年に運営権売却を考えているのが福岡空港。市街地との距離も近いこともあり、空港の発着枠は既に飽和状態。この混雑解消のための新たな滑走路建設の資金調達が民営化の主な目的だ。

 訪日外国人観光客の増加が大都市だけでなく地方も潤しているため、空港に対して、いつのまにか地域を潤す拠点として期待が掛かるようになった。2016年7月から民営化された仙台国際空港も東北観光のゲートウエーとして期待されている。14年に323万人であった旅客数を20年には410万人、44年には550万人にまで増やす目論見だ。そのため、多くの国内、海外のLCCをはじめとする航空会社の誘致を行っている。

 もちろん旅客と同じく、貨物の増大も目指しているが、現状では地方創生の原動力は外国人旅客頼み。景気や為替の影響も関係するが、世界的に人の移動が活発化している現状を考えれば観光立国の道は間違いではない。ただ、東北地方の訪日客は震災以前から全国シェアで5%にも満たないため、伸び代が大きい半面、風評被害もあり苦戦は免れないだろう。

北海道7空港を一括で民営化

 地域戦略として拠点の役割を期待される空港民営化のうち、リスクは高いが成功すれば良いモデルになりそうなのが、20年に道内にある13の空港の内、7つの空港の一括民営化を目指す北海道だ。国が管理する新千歳、稚内、函館、釧路に市管理の旭川、帯広。それに道管理の女満別を加えた7つが該当する。

 北海道の国際旅客数は14年に187万人だったが、その8割ほどの155万人が新千歳空港を利用する。当然、人気のある時間帯は限られるため、就航を断念する機会損失も生まれていた。だが、7つの空港を一括して運営するのであれば、函館インの新千歳アウトといった別の空港を活用したスケジュールが計画できる。加えて、JR北海道の経営が厳しいことで道内交通網の維持に黄色信号がともっているが、その再構築につながるきっかけにもなるはずだ。

 もちろん課題も多い。例えば、税関、入国管理、検疫といったCIQの問題。毎日就航しておらず、就航しても1日1便といった数であれば、そこに常駐させる余裕はなく、現状は新千歳や国際港から出張するなどして対応している。しかし、冬は雪で移動が困難といった不測の事態も大いにあり得る。また、飛行機で北海道に到着したはいいが、2次交通の貧弱さも問題になっている。何より空港経営は、うまくいかないからといって、すぐに撤退できるわけでもない。

 しかし、それでも期待したくなるのは、日本で訪れたい地域の上位に必ず北海道という名前が挙がるその人気ゆえだ。

 道も50年時点の訪日外国人旅行者の目標値を1千万人、消費額を2兆5千億円にするほど鼻息が荒い。既に、日本のLCCでトップを快走するピーチ・アビエーションも17年に仙台、18年に新千歳の拠点化を発表。新千歳からは国際線だけでなく道内路線も就航を予定する。「欧米の30~40%、東南アジアの50%以上に比べ、日本のLCCシェアはまだ10%、まだまだ伸びる」と井上慎一社長は、日本の市場をフロンティアとみなす。

 11月中旬には、エアバスの新造機を13機、購入契約。将来的には100機体制を目指すピーチ・アビエーション。国際線の外国人乗客比率が7割を占めることを考えればアジア地域、特に東南アジアでの新規開拓をもくろんでいるのではないだろうか。人口が減少し、国内消費が減っていく中で、海外へ活路を求めなければ地域の未来はない。その玄関口である空港の魅力向上は言うまでもない。その担い手はどの企業となるのか。特に観光資源も多く、貨物にも期待が持てる北海道の空港民営化の行方に注目したい。

 

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