政治・経済

東京電力福島第1原子力発電所の廃炉・賠償費用は誰が負担するのか。経産省としては東電存続、国民の一部負担というシナリオを描いているものの、検討するために集められた有識者会合の参加者が激怒するなど、混迷の度合いを深めている。文=ジャーナリスト/児玉雄二郎

経産省にかみついた三村日商会頭

 東京電力ホールディングス(HD)の経営改革や福島第1原子力発電所(1F)の廃炉・賠償費用の支援策などを検討する経済産業省の有識者会合「東京電力改革.1F問題委員会」が紛糾している。東電の事業分割、分社化や他社との事業統合など、有識者会合で議論がされていないことが、既定路線のように報道されたことに、会合出席の有識者が激怒した。

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三村明夫・日本商工会議所会頭(Photo=幸田 森)

 また、非公式な会合を数回開催していたにもかかわらず、世耕弘成経産相が会合自体を「存在しない」と会見で明言し、マスコミ各社との確執も生じた。

 経産省は、支援策を年内に取りまとめなくてはならず、その焦りが、失態につながった。有識者会合の結論は、東電HDと原子力損害賠償・廃炉等支援機構が来年1月に取りまとめる「新・総合特別事業計画」の抜本改定に反映させる予定だ。端的に言えば、東電をつぶさずに1Fの廃炉・賠償費用にめどをつける改革案をつくることだ。

 最初の問題が、会合の序盤で起きた。10月中旬の1回目の会合直後、「東電の原子力発電事業を分社化する」方針が複数の全国紙で報道されたためだ。1回目の会合は、経産省が会合の趣旨を説明するほか、参加有識者が基本的な考えを説明するだけ。そのため、具体的な議論はなされていない。

 その段階の報道だったことから、有識者から漏れたものではなく、経産省が複数の社の記者にリークし、それぞれに大きく記事を書かせることで、原発事業の分社化が有識者会合の基本的な考えであると既定路線を押しつけようとしたと考えられる。

 これにかみついたのが、有識者の1人、日本商工会議所の三村明夫会頭だ。10月下旬の2回目の会合では冒頭から、「なんで議論もしていないような話が出てくるんだ」と経産省側に詰め寄ったといわれている。既に経産省がつくったシナリオを後追いで認めさせるための会合なら「(会合自体を)つくる意味はない」と厳しく追及した。

 政府の各種会議に参加している三村氏だけに、役所がシナリオを用意していることは分かっているが、議論をしていないうちから、結論の“肝”が出てくることは許せなかったようだ。

 また、別の有識者は「三村さんが怒ったのは、廃炉費用をすべて東電に任せることはできず、国民負担が生じるセンシティブな内容。それだけに、慎重な議論が必要だと考えているからだ。国民が納得できる負担となるのか、説得できるのかなどを含めた総合的な判断が欠かせない中で、再編という結果だけの先行は許せないと考えたようだ」と解説する。その上で、「ほかのメンバーも同じ気持ちだ」と話す。

 こういった経過を受け、東電の経営効率化や廃炉費用の捻出のために経産省が考えているのは、「JERA型を軸とした再編だ」と、全国紙の経産省担当記者は指摘する。

開けなくなった非公式会合

 JERAとは、火力発電・燃料調達事業で包括提携した東京電力と中部電力の共同出資会社だ。この記者によると、JERA同様に、東電のさまざまな事業を分社化して、他の電力会社などと提携、合弁会社を設立することを加速させるのが狙いだという。事業を売却してしまうと、その後の東電の収益がなくなり、毎年の廃炉費用や賠償費用を稼ぐことができなくなるので、あくまでも、収益力があるかたちでの東電存続という形態を持たせるには、数少ない選択肢の中で、有力なものだ。

 その中で原発事業の再編がポイントになり、特に、柏崎刈羽原子力発電所を他の電力会社との合弁の形態にし、再稼働を早期化させようという狙いだ。同時に東日本、西日本で原発事業を統括する再編も想定しており、これとも組み合わせた策にしたいと考えているもようだ。

 こういった極めて難しい議論を進める中で、経産省としては通常の有識者会合とは別に、非公式の会合を開き、議論のペースを早めようとした。通常の有識者会合は経産省の会議室で開催されるが、非公式会合は、通常会合の翌日の早朝に都内のホテルなどで議論していた。

 なかば公然の会合であったが、先の東電の分社化・再編をめぐる報道で、リークされなかった報道機関などが問題視し、経産省の担当者を追及。さらに、10月下旬の閣議後会見では世耕経産相が、「会合は、すべてオープンにして、いつどこでやるか公表して開催されている。非公式な会合というのは私は聞いていないし、存在もしない」と全面否定する事態となった。

 この結果、非公式会合は開催されないことになり、十分な議論ができるか、不安視されている。ある有識者は「すべての会合を公式で実施する必要はない。非公式会合でも議論していることを説明しても何ら問題ない」と経産省の判断を疑問視する。

 ただ、こういった議論全般に対し、全国紙の電力業界担当記者は「経産省は、東電がパートナーを組んで、再生する路線を考えているが、実際にパートナーに手をあげる会社があるのかについては考えていない。有識者会合の取りまとめも机上の空論になる可能性が高い」と懸念を示している。

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