政治・経済

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ツイッターのフォロワー数はオバマを超える

 次期大統領に決定した後は、発言に責任を持つかと思えば、ツイッターにおいて、特定の個人や機関を非難し、虚偽のつぶやきを続けている。

 「ニュース専門局CNNは、ヒラリー・クリントン民主党候補を全面的に(100%)支持したが、彼女が大敗し、恥ずかしくて何をしていいか分からなくなっている」(11月28日)

 「バージニア、ニューハンプシャー、カリフォルニア州で、深刻な不正投票があった。なぜ、メディアは報道しないのか? ひどい偏向だ、深刻な問題だ!」(11月27日、当局が不正投票はなかったと再確認したため虚偽のツイート)

 「ぶざまだ。ドナルド・トランプが、不正投票に苦しまなかったとでも思っているのか。恥を知れ、ひどい記者だ」(11月28日、記者個人のアカウントを同時にツイートして)

 だが、一見するとこれは「面白おかしい」と思われて、目を引く。実際に彼の1回のツイートは、1万~3万回もリツイートされている。ツイッターの効果を考えると、何百万、何千万人が、彼のツイートを目にしていることになる。彼のフェイスブックも同様の反応がある。

 トランプ氏は、ソーシャルメディアを、報道機関のフィルターを通さず、有権者に直接自分の主張を伝える強力な「武器」として、選挙戦中に使い、これは、大統領になっても続く見込みだ。

 彼のツイッターのフォロワー数は16年春以降、毎月ほぼ100万人という驚くべき割合で急速に増えた。10月初旬の投開票まで1カ月と迫った時点で、その数は1220万人に達し、それまで政治家として最もフォロワーが多かったオバマ大統領(米大統領アカウントで1070万フォロワー)を初めてしのいだ。ちなみに、この時点で、クリントン氏のフォロワーは949万人だった。12月初旬現在、トランプ氏のそれは、1680万とさらに増え続けている。

 日本のメディアが信頼を置く有力紙ニューヨーク・タイムズは、発行部数が200万部前後と考えると、単純な比較は難しいが、トランプ氏のフォロワー数がいかに大きな数字であるか分かる。また、日本と異なり、米国成人、イコール有権者の半分以上が、ニュースをツイッター、フェイスブックなどソーシャルメディアで入手している。投票日後の調査結果では、ソーシャルメディアを利用している率が高い州ほど、トランプ氏の得票が多かったことも判明している。

思考が変わらない「赤い州」の人々

 ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポスト、そしてテレビの夕方ニュースなどが、トランプ氏の人物としての問題や、税金を公表しないなどビジネスの不適切さを報道しても、有権者にはうまく伝わらなかった。主要報道機関の選挙報道が、有権者が優先して見る情報源ではなかったという大統領選挙は、初めてだろう。メディア業界にとっては大きな課題を残した形だ。

 また、トランプ氏は、クリントン氏に比べて多くの選挙集会をこなした。選挙の終盤は、激戦州のフロリダ州などで、1日に5~7回の集会を開いた。これに対し、クリントン氏は数日に1回程度の集会で、夫ビル、娘チェルシー、オバマ大統領夫妻などが、その間を埋めて激戦州を周った。しかも、テレビ討論会の前は、1週間を準備に費やし、集会は開かなかった。今さらながら、選挙の基本だが、どれほど有権者に会うかというのが、票につながるというのをトランプ氏の勝利は裏付けた。

 第2に、サイレントマジョリティーのインパクトだ。

 そもそも、ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事(ブッシュ大統領の弟)など本流の政治家を退けて、トランプ氏がなぜ予備選挙に勝利し、共和党候補になったのか。筆者は、その背景を探るため、2回に分けて、中西部と南西部を旅した。一部を除いて、住民のほとんどが保守的な白人で、共和党の党色「赤」から取って「レッドステート(赤い州)」と呼ばれる地域だ。中には、浮動票が多く、選挙で両党が熾烈な戦いを繰り広げる「激戦州」も含まれている。都市ではない地方に住む人が多く、年齢は高め、教育レベル・所得レベルがともに低いという共通点がある。賃金も上がらず、生活が向上しないことに、長年「怒り」を蓄積させてきた人々でもある。

 彼らに会って、日々、「赤い州の人たちの考え方は、体に流れる血液のように変わらない」ということを認識した。

情報入手にも経済格差の影響

 具体的には、「地球温暖化は科学的な証拠がない」「世界はキリスト教の神が作った」「人工中絶は殺人で、胎児の墓を作るべきだ」といったことを信じているのが理解できたからだ。

 差別意識も強い。黒人・アジア人・ヒスパニックに対してだけでなく、過激になると「イスラム教徒はキリスト教徒を滅ぼす」と考えている。また「移民・難民が、米国を攻撃するため難病を広めている」と信じている。トランプ氏が女性を「デブ」「ブス」と呼んだという性差別に対しても、女性支持者は「気にしていない。男性ならそれぐらいのことは言う」という反応だった。

 そして、何よりもトランプ支持者の心に響いたのは「移民問題」だ。安い賃金で働く不法移民が、自分らの雇用を奪っている。しかも、公共交通機関や行政・福祉サービスを受けている。不法移民の子どもが、自分たちの税金を使った公教育を自分たちの子どもと同等に受けているという事実に、憤慨している。

 このため、トランプ氏がメキシコ移民を「強姦魔」と呼んだ人種差別発言や、イスラム教徒の入国を全面禁止するという要請を、支持者の多くが溜飲を下げて歓迎した。

 景気がダラダラと遅いペースで拡大している中、選挙戦の焦点は「経済」ではないとされていた。しかし、蓋を開けてみれば、「経済」に不満を持ったこれらのサイレントマジョリティーが、大統領として不適切であっても、トランプ氏に将来を託してみようとした、というのが「事実」であり「真実」だ。

 ソーシャルメディアや、オルタナティブ右翼と呼ばれるサイトからの選挙情報を頼りにしていた背景も分かる。これらは、ニューヨーク・タイムズの購読料や、ケーブルテレビを契約しないと見られないテレビニュースに比べたら、「無料」だからだ。つまり、情報の入手方法からして、経済格差が影響していた。

 トランプ氏は17年1月20日、ワシントンにおける就任式で、第45代大統領となり、超大国のリーダー、つまり世界で最も影響力がある首脳となる。

 ところが、前述した2つの理由で、前例のない大統領選を展開し、勝利した。一方で、その型破りな手法が、中間・低所得層にいかに浸透したかを支配層やメディアは、予想できなかった。トランプ氏がホワイトハウス入りしても、同様に「海図なき航海」が、支配層やメディアにとって続くのだろう。今回の選挙で浮き彫りになった米国の「真実」を把握しない限りは、不透明な将来が続くのは間違いない。

文=津山恵子(ジャーナリスト)

(つやま・けいこ)ニューヨーク在住ジャーナリスト。日本外国人特派員協会正会員。ウォール・ストリート・ジャーナル日本版コラムニスト。米国社会・経済について幅広く取材し、過去にYouTube創設者スティーブ・チェン、Facebook創設者マーク・ザッカーバーグなどをインタビュー。著書に『モバイルシフト「スマホ×ソーシャル」ビジネス新戦略』など。

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