マネジメント

山村輝治・ダスキン社長プロフィール

20170110DUSKIN_P01

(やまむら・てるじ)1957年生まれ、大阪府出身。79年大阪体育大学卒業。小学校教諭を経て、82年ダスキン入社。2004年6月から取締役、09年4月に代表取締役社長に就任、現在に至る。

 

 ダスキンはレンタルモップなどのクリーン・ケアビジネスとミスタードーナツに代表されるフードビジネスを展開している。一見畑違いの2つのビジネスだが、共通しているのはフランチャイズで、各加盟店がその地域のつながりに基づくサービスを提供していることだ。同社のビジネスの現状について、山村輝治社長に話を聞いた。聞き手=本誌/村田晋一郎 写真=宇野良匠

 

ミスタードーナツで改革を進めた山村輝治・ダスキン社長

 

―― 現在の事業環境をどのように見ていますか。

山村 フードビジネスについては、ドーナツはスイーツ関連に入り、いろんなものが世の中にあふれてきているので、お客さまの取捨選択が進み、競争が激しくなっている感じはあります。

 クリーン・ケアビジネスのほうは逆に、お掃除代行の需要が順調に伸びてきています。これから高齢化社会になってきて、また働く女性が増えるほど、もともとご自身がされていた作業を当社に依頼して、自分の時間を買うという流れはあると思います。

 ですからクリーン・ケアビジネスはわずかではありますが、全体としてはプラス成長、フードビジネスは非常に厳しい1年だったと思います。

―― 現在3カ年の中期経営計画の2年目ですが、今後の見通しは。

山村 ミスタードーナツがこの2年間で店舗数が約120店舗減少したことによって収益が下がり、2期連続で落ち込み、当初の計画とのズレが生じました。

 そこで2016年11月8日に大きな改革を発表しました。例えば、横浜の三ツ境駅(相模鉄道)で開店した「Mister Donut to go(ミスタードーナツ トゥゴー)」は、テイクアウト専門の店舗です。これは、働く女性が増えたことから、そうした方々が通勤途中に買えるような場所に出店するという新しいタイプの店舗で、今後増やしていこうと考えています。

―― 具体的に回復できるプランやスケジュールがあるということですか。

山村 基本的には新しい場所への出店ではなく、今ある店舗を積極的に改装していきます。その改装・閉店期間が2カ月ぐらいかかります。ですから改装をどんどん進めている時期は、閉店期間があるため、いったんは減収となるかもしれませんが、中長期的には必ずプラスになっていくプランで進めています。

―― では、将来的には回復していくと。

山村 そうですね。そういう意味では、フードビジネスの向こう10年ぐらいの計があるイメージを持っています。これまで続いたミスタードーナツの落ち込みをいったんリセットして、そしてさらに飛躍していくように持っていきます。

 

ダスキンのフランチャイズ政策に表れる「祈りの経営」とは

 

―― フードビジネス全体で競争が激しい状況で、今後反転していく戦略は。

山村 ミスタードーナツについては、これまで頑なに守ってきた、店舗内でつくることだけでなく、お客さまの行動やシーンに合わせて出店や改装をします。とかくフランチャイズというと、「同じパッケージで同じ建物で同じ商品で」ということがありますが、そこを少し離れて、今回のトゥゴーのような駅チカで出せるようなタイプ、また郊外では、ゆったりとくつろげるスペースがある店舗といったかたちで、そこに住んでいる方や行動される方に合わせた店のあり方、商品のあり方に変えていきます。地域独自性を追求することで、当社の優位性を明確にできると考えます。

 しかし、それを実行するためには、長年培ってきた当社の単一化や標準化を変えなければいけません。一番のライバルは、自社で培ったノウハウであり、それをいったん崩すことです。したがって、他社がどうとかではなく、ミスタードーナツそのもののブランドをミスタードーナツ自らがいったんゼロにして、今の市場に合わせたかたちで出せるかがキーだと考えます。

―― 地域の独自性は加盟店の意見が反映されるのですか。

山村 トゥゴーの場合は本部からでしたが、当社の場合、加盟店会があり、その加盟店会と本部が頻繁に議論しています。

 またミスタードーナツに限れば、毎月1回各都道府県単位で、お客さま約60人と私が直接対話する「ミスド ファンミーティング」を開催しています。お客さまの声を直接私が聞き、それを事業に反映しています。社長が最終ユーザーから直接お声をうかがう機会はなかなかありませんので、このファンミーティングは非常に意義があると思います。

―― フランチャイズにおける本部と加盟店との関係は。

山村 当社の創業者が各事業を立ち上げた時に、加盟店と本部は車の両輪だと語っていました。本部は商品やシステムを開発するが、最終的に販売・接客するのは加盟店なのだから、どちらが良くても、どちらが悪くても、車はまっすぐ走らない。だから開発する本部と販売する加盟店は運命共同体だということをしきりに言っていました。

 契約書ではなく夫婦間のように婚姻届みたいなかたちで、もちろんたまには議論もしくは喧嘩もするだろう、でも一緒に助けあって将来的には良き家庭を築いていこう、良きダスキンブランド、良きミスタードーナツブランドを築いていこうという目指すところは一緒なんだと。これが当社の一番の特徴で、「祈りの経営」に表されている部分です。ですから、加盟店から契約内容と違うというような訴訟問題は今のところないですね。

 今は加盟店も2代目、3代目に変わっていますが、加盟契約時に「お金儲けだけが目的であれば、加盟しないでください」とお話しています。過去からずっと事業説明会をやってきていて、恐らく何万人という人が説明会を聞いたと思いますが、それでも「やってみようかな」と思った方々が今の加盟店オーナーなので、そういう意味では、同じ共通認識があると思います。

 

ダスキンのモップを他の掃除用具とどう差別化して行くか

 

―― クリーン・ケアビジネスの展開は。

山村 クリーン・ケアビジネスは家庭用と事業所用に分かれています。

 事業所用は今までのように単にマットやモップを届けるのではなく、トータルで衛生管理を提案していきます。例えば、検査キットを使って飲食店などの細菌の状況や量を調べ、それで当社の商品を置いて、細菌が減ったかどうかまで見える化する。そうしていかないと、お客さまは納得されません。今後は衛生管理のアドバイザーとして進めています。

 家庭用のほうは創業期に比べて圧倒的に留守宅が増えました。これは当社だけでなく、訪問活動をされている企業はみんな同じ状況だと思います。ですから、その課題を克服するために、人の集まるところ、例えば事業所用のお客さま先で家庭用の商品をお知らせしたりしています。またレンタル商品は自宅のポストで受け取って郵便ポストに返却してもらう仕組みを増やしています。

 お客さまの在宅率が低いなりの商品の提案とお届けの仕方、そしてカード決済を取り入れることでカバーしていきます。それでも都市部のタワーマンションなどは営業すらできない、チラシすら入れられないことが多いので、そこはテレビCMなどを活用しながら、ネットでの注文を促しています。

―― ダスキンのモップは特別な商品というイメージがあり、その一方で、今は掃除用具が安く簡単に手に入るようになってきています。そこでの差別化はどう考えていますか。

山村 お客さま数で言うと、今、家庭用で全国520万軒ぐらい4週間に1回商品を交換させていただいていますので、他の掃除用品との差別化は十分できていると思います。

 ただし、ダスキンはリサイクルで交換され、使い捨てではないので環境にやさしいということと、ダスキンのモップの特長や性能の良さを私たちのほうからお客さまに説明し、認知を高めていきます。ダスキンを使うのとほかの掃除道具を使う場合の違いも説明していきます。

 

超アナログの接点を強化するダスキンの狙い

 

―― 長期的な展望については。

山村 訪問営業が主であるクリーン・ケアビジネスは、お客さまとの接点が超アナログのビジネスです。世の中の少子高齢化が進むほど、ダスキンの組織と高齢者の方々との接点は深くなっていくと思うので、この接点をこれからも強化していきます。世の中でIT化やロボット化が進めば進むほど、人と人との関わりを多く提供できる企業体になり続けたいと考えます。

 ダスキンの場合は商品を届ける際に交換する作業が入り、対話が生じます。そのときに何か会話をしたり、様子をうかがったりすることで、「遠くの親戚よりも近い関係」になっていく。また、当社がフランチャイズ展開しているメリットは、その地域で生まれ育った人が活動していることです。地域の会社が地域のお客さまに地域に根ざしたより良いサービスを提供する。そして最終的にお客さまからすると、「何か困ったら、とにかくダスキンに言えば何とかしてくれる」という関係をつくっていきたいと思います。

関連記事

好評連載

銀行交渉術の裏ワザ

一覧へ

融資における金利固定化(金利スワップ)の方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

銀行交渉術の裏ワザ

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)

定期的に銀行と接触を持つ方法 ~円滑な融資のために~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)

メインバンクとの付き合い方

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)

銀行融資の裏側 ~金利引き上げの口実とその対処法~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)

融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける

元榮太一郎の企業法務教室

一覧へ

社内メールの管理方法

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

企業法務教室

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)

タカタ事件とダスキン事件に学ぶ 不祥事対応の原則

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)

ブラック企業と労災認定

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)

電話等のコミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)

女性の出産と雇用の問題

本郷孔洋の税務・会計心得帳

一覧へ

税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」

[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

税務・会計心得帳

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)

グループ法人税制の勘どころ

[連載] 税務・会計心得帳(第17回)

自己信託のススメ

[連載] 税務・会計心得帳(第16回)

税務の心得 ~所得税の節税ポイント~

[連載] 税務・会計心得帳(第15回)

税務の心得 ~固定資産税の取り戻し方~

子育てに学ぶ人材育成

一覧へ

意欲不足が気になる社員の指導法

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

子どもに学ぶ人材マネジメント

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)

子育てで重要な「言葉」とは?

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)

女性社員を上手く育成することで企業を強くする

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)

人材育成のコツ ~部下の感情とどうつきあうか~

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)

人材育成 ~“将来有望”な社員の育て方~

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次世代の医療現場を支える病院経営の効率化を推進――保木潤一(ホギメディカル社長)

1964年にメッキンバッグを販売して以来、医療用不織布などの、医療現場の安全性を向上する製品の普及を担ってきた。国は医療費を抑える診断群分類別包括評価(DPC制度)の導入や、効率的な医療を行うため病院のさらなる機能分化を実施する方針を掲げており、病院経営も難しい時代に入っている。ホギメディカルは手術室の改善か…

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

ペット仏具の先駆企業が「ペットロスカフェ」で目指す癒しの空間づくり

家族のように接していたペットを亡くし、飼い主が大きな喪失感に襲われる「ペットロス」。このペットロスとなってしまった人々が交流し、お互いを癒し合うカフェが、東京都渋谷区にオープンした。「ディアペット」を運営するインラビングメモリー社の仁部武士社長に、ペット仏具の世界とペットロスカフェをつくった目的について聞いた…

元引きこもり青年が「cluster」で創造する新たなVRビジネスとエンターテインメント(加藤直人・クラスターCEO)

日本人の英語学習の課題解決に向け、学習者目線のアプリを開発―― 山口隼也(ポリグロッツ社長)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年3月号
[特集]
環境が経済を動かす

  • ・総論 災い転じて福となせるか 持続可能な社会の成長戦略
  • ・越智 仁(三菱ケミカルホールディングス社長)
  • ・100年後を考える 世界最大級の年金基金「GPIF」
  • ・金融業界はこう動く
  • ・脱炭素化の遅れがはらむ「座礁資産」の危険性
  • ・脱炭素化で移行する「地域循環共生圏」とはどういう社会なのか!?

[Special Interview]

 中田誠司(大和証券グループ本社社長)

 「SDGsを経営戦略の根幹に据えることで企業は成長する」

[NEWS REPORT]

◆稲盛哲学を学ぶ盛和塾解散を塾生たちはどう聞いたか

◆米中経済戦争の象徴となった「ファーウェイ」強さの秘密

◆EV時代にあえてガソリンエンジンにこだわるマツダのプライドと勝算

◆それは自由か幸福か——「信用スコア」で個人の信用が数値化された世界

[特集2]関西 飛躍への序章

 大阪万博開催で始まる関西経済の成長路線

ページ上部へ戻る