政治・経済

20170207DAIEI_P01

「ダイエー」といえばかつての小売業の雄だが、今ではその名を冠した店舗は数えるほどとなった。旗艦店だった碑文谷店などかつての店舗の多くがイオンに生まれ変わったが、なかなか結果が出せなかった。しかしここにきてようやく道筋が見えてきた。文=本誌/関 慎夫

業績の底を打った旧ダイエー店舗

 長い間、赤字を垂れ流し続けてきた旧ダイエーに、ようやく、光が見えてきた。

 1月11日にイオンが発表した2017年2月期第3四半期(3Q)決算によると、9カ月の累計連結決算は、営業収益が前年同期比1.1%増の6兆998億円、営業利益は同5.6%増の853億円。最終損益こそ、熊本地震による損失や、店舗の減損が響き172億円の赤字だが、営業成績は好調だったといっていい。

 特に好調だったのが、ドラッグストアや金融部門だが、懸案のGMS部門も、経費削減効果や店舗活性化などの施策が奏功し採算は改善した。しかしいまだにお荷物状態が続いているのがダイエーから引き継いだ店舗。完全子会社化からまる2年が過ぎたが、一向に赤字から脱却できない。

 中内功氏が創業し、一時は日本最大の小売業として覇権を握ったダイエーだが、無謀とも言える拡大策は、バブル崩壊後、完全に裏目に出る。部門の切り売りなどで生き残りをはかったが、「安いかもしれないが欲しいものが何もない」と消費者からそっぽを向かれ、業績は悪化する一方。結局、主力銀行のひとつであるUFJの業績悪化もあり、04年に再生機構の支援を仰ぎ、丸紅とイオンがスポンサーとなり再生を目指してきた。

 イオンにしてみれば、過去にヤオハンとマイカルの2つのチェーンストアの再建を手掛けたこともあり、その延長線上でイオン流を持ち込むことで再生は可能と考えていた。しかし長年の経営の停滞による、店舗の老朽化とそれに伴う顧客離れは深刻で、思ったような結果が得られなかった。

 そこで、イオンが全力を挙げて再生することを内外に示すため、15年1月1日をもって完全子会社化し、抜本的改革を行うことになった。

 そのダイエー再建スキームは、①完全子会社化②北海道、九州などの店舗をイオンに移管③本州の大型店をイオンスタイルに業態変更④ダイエーは食品スーパーに特化――というもので、「18年にはダイエーという屋号もなくなる」(岡田元也・イオン社長)。ダイエーの完全消滅計画といっていい。

 15年9月には北海道と九州の店舗などを先行移管(イオン北海道とイオンストア九州に変更)。そして16年3月には本州の29店舗をイオンに移管、看板を掛けかえるだけでなく、レジやシステムなどイオンの手法を取り入れ、店舗を活性化させることで、売り上げ拡大を目指した。

 ダイエーからイオンへの移管は、「移管期」「整備期」「改善期」の3つのステージからなる。「改善期」では看板の付け替え、制服の変更、システム移管、WAONカードなどの新販促の導入等を行い、「整備期」では売り場の改装やマーチャンダイジング改革など。そして「改善期」で回収をしていく。

 昨年3月に移管した29店舗は昨年11月に整備期を終え、現在改善期を迎えている。また一足早く移管したイオン北海道等は、昨年5月から改善期にある。つまりそろそろ利益改善しなければならない時期を迎えているのだが、先日発表した3Q決算には、その兆しが表れた。「旧ダイエーからイオンに移管してから1年以上がたった店舗は売上高が前年比100%を超えた」(近澤靖英・ダイエー社長)。

 例えばイオン北海道(8店舗)の売上高は、2Qが前年対比99.1%だったが、3Qには110.9%と大きく改善した。またイオンストア九州(24店舗)も、98.0%から104.4%へと改善した。

ダイエー旗艦店もイオンスタイルへ

 イオンでは当初、半年ほどで移管効果が出るとみていた。しかしダイエーの負のイメージは大きく、イオンに変わったといっても「では利用しよう」とはならなかった。それでも、時間とともに抵抗感が薄れ、そこに店舗改装などの活性化策が加わったことで、客足が増えてきた。

 そのひとつに旧ダイエー碑文谷店がある。東急東横線、学芸大学駅と都立大学駅の中間地点にあるこの店は、ダイエーの旗艦店として知られていた。ダイエーが新しい取り組みをする時に、ここの店頭で中内氏がハッピを着て気勢を上げていたのを覚えている人も多いに違いない。

 この旧ダイエーの「本丸」は昨年5月に閉店し、12月16日、イオンスタイル碑文谷店としてオープンした。現在は1~4階の部分営業にとどまっている、にもかかわらず、開業からの半月間の売り上げは、前年同期の113%を記録した。全館オープンは3月31日を予定しており、さらなる売り上げ拡大が期待されている。

 また、現在もダイエーの名を冠しているスーパーマーケットについても、粗利益率が改善するなど、3Qベースでみると、前期比6億円収益が改善した。消費不況の中でも食品スーパーの売り上げは好調であり、ここに力を注ぐことで、業績への寄与を狙っている。

 ダイエーの負の遺産の処理がようやく終わろうとしている。その先のイオンの戦略が見ものである。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次世代の医療現場を支える病院経営の効率化を推進――保木潤一(ホギメディカル社長)

1964年にメッキンバッグを販売して以来、医療用不織布などの、医療現場の安全性を向上する製品の普及を担ってきた。国は医療費を抑える診断群分類別包括評価(DPC制度)の導入や、効率的な医療を行うため病院のさらなる機能分化を実施する方針を掲げており、病院経営も難しい時代に入っている。ホギメディカルは手術室の改善か…

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

ペット仏具の先駆企業が「ペットロスカフェ」で目指す癒しの空間づくり

家族のように接していたペットを亡くし、飼い主が大きな喪失感に襲われる「ペットロス」。このペットロスとなってしまった人々が交流し、お互いを癒し合うカフェが、東京都渋谷区にオープンした。「ディアペット」を運営するインラビングメモリー社の仁部武士社長に、ペット仏具の世界とペットロスカフェをつくった目的について聞いた…

元引きこもり青年が「cluster」で創造する新たなVRビジネスとエンターテインメント(加藤直人・クラスターCEO)

日本人の英語学習の課題解決に向け、学習者目線のアプリを開発―― 山口隼也(ポリグロッツ社長)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年3月号
[特集]
環境が経済を動かす

  • ・総論 災い転じて福となせるか 持続可能な社会の成長戦略
  • ・越智 仁(三菱ケミカルホールディングス社長)
  • ・100年後を考える 世界最大級の年金基金「GPIF」
  • ・金融業界はこう動く
  • ・脱炭素化の遅れがはらむ「座礁資産」の危険性
  • ・脱炭素化で移行する「地域循環共生圏」とはどういう社会なのか!?

[Special Interview]

 中田誠司(大和証券グループ本社社長)

 「SDGsを経営戦略の根幹に据えることで企業は成長する」

[NEWS REPORT]

◆稲盛哲学を学ぶ盛和塾解散を塾生たちはどう聞いたか

◆米中経済戦争の象徴となった「ファーウェイ」強さの秘密

◆EV時代にあえてガソリンエンジンにこだわるマツダのプライドと勝算

◆それは自由か幸福か——「信用スコア」で個人の信用が数値化された世界

[特集2]関西 飛躍への序章

 大阪万博開催で始まる関西経済の成長路線

ページ上部へ戻る