マネジメント

20170207OPTIM_P01

殺虫灯を牽引して飛ぶアグリドローン(Photo=提供:オプティム)

農業へのドローン活用は、農薬散布など既存のラジコンヘリの置き換えに加え、低価格化や小回り、IoT/AI(人工知能)との連携などドローンの特性を生かす形で進んでいく。オプティムは、ドローンを用いて高付加価値野菜の栽培方法の確立に取り組んでいる。

ドローンを活用し「スマートやさい」の生産・販売実現に取り組むオプティム

 オプティムは、佐賀県および佐賀大学との3者連携でITを駆使したスマート農業を展開している。3者連携では「楽しく、かっこよく、稼げる農業」の実現を目指しており、具体的には、高付加価値で商品単価の高い無農薬野菜および減農薬野菜を「スマートやさい」として生産・販売する計画を進めている。

 無農薬野菜および減農薬野菜の実現は農場における害虫の駆除が鍵となる。そのための有効な方法を検討する中で、ドローンを活用した害虫駆除の自動化を進めている。現在、佐賀県の農場関係試験場および佐賀大学付属農場の全10カ所の農場で実証実験を行っている。

 害虫駆除は、高圧電流による殺虫と農薬散布の2通りの方法で進めている。

 高圧電流による殺虫は、虫を光で集めて電気ショックを与えて殺虫する殺虫灯ユニットを吊るしたドローンが夜間に農場を飛び回って行う。ドローンは自律制御で飛んでいくが、害虫が補虫されたことを認識できるため、害虫がいる場所では待機して駆除してから、次のポイントに移動するようになっている。

 夜間に行う理由は、害虫は天敵の鳥が飛びまわる昼間は作物の葉の裏に隠れているからだという。それを無理やり農薬で殺虫しようとすると、大量の農薬を散布することになる。また、夜間の飛行も自律制御のドローンなら可能であるため、夜間に殺虫灯を用いた害虫駆除を行う取り組みを進めている。これが実現できれば、農薬を使わずにドローンと殺虫灯の電気代だけの低コスト・低労働で、無農薬の作物が生産できるようになる。

ドローン活用で害虫駆除を低コストに

 また、農薬散布については、一般的な農業ドローンで行われているような農場全面への大量散布ではなく、害虫がいる場所だけにピンポイントで農薬を散布する。

 まず農場にドローンを飛ばし、上空から農場を撮影し、その画像をAIで分析する。そして作物の葉の色から害虫の影響を把握することで、害虫の発生場所を特定し、そこにピンポイントで農薬を散布する。

 「害虫駆除をAIでやるのは、世界でもオプティムだけ」と菅谷俊二社長は語る。これまで農薬を全面に散布するのは、害虫がどこで発生しているか分からないからだが、ピンポイントで害虫を駆除することで使用する農薬を大幅に削減できるため、減農薬野菜の栽培が低コストで可能になる。

 こうした害虫駆除は地上で行おうとすると、作物によって畑のコンディションが異なるため、それぞれに応じた農業機械や農機具が必要になったり、作業手順も増えたりする。

 それらに比べて、ドローンを用いて空から行う手法は、地表面や作物の種別の影響を受けないため、汎用的に対応できる利点がある。ドローンを用いて、低コストに害虫駆除を行うことで、農家の収益向上に貢献する。

「スマートやさい」の出荷はいつ頃?

 オプティムでは、農業へのドローン活用にあたって、独自の機体「アグリドローン」を開発した。オプティム自体はIoTのプラットフォームやAIのサービスを提供する会社で、ハードにはこだわらず良いものがあれば使うというのが基本スタンス。「しかし農業用の良いハードがなかったことと、新しいことをやる際にはハード側にチューニングが必要になるため、自社でアグリドローンを開発した」(菅谷社長)という。

 具体的には、生育分析にはマルチスペクトル撮影が可能なカメラを搭載する必要があった。また、ピンポイントで農薬をまくために、通常よりも精度の高いGPSの仕組みや、農薬をまくノズルを搭載する必要があった。これらの機能の搭載と調整のために独自機体を開発した。

 また、現在は害虫駆除での実証だが、作物の味に影響を与える取り組みも広げていく。ドローンでマルチスペクトル撮影を行うことで、農場の窒素含有量やNDVI(正規化差植生指数)を分析できる。農場において作物の栄養分の過不足が把握できるため、それに応じて肥料の散布の量を調節できるようにもなり、作物の品質を向上できる。

 現在、オプティムでは28品目の野菜あるいは穀類に対して、実証実験を進めている。3者連携が16年度から18年度までの3カ年の計画を進めていることから、まずは最終年度の18年度にスマートやさいの出荷を目指している。

 
経済界 電子雑誌版のご購入はこちら!
雑誌の紙面がそのままタブレットやスマートフォンで読める!
電子雑誌版は毎月25日発売です
Amazon Kindleストア
楽天kobo
honto
MAGASTORE
ebookjapan
 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

銀行交渉術の裏ワザ

一覧へ

融資における金利固定化(金利スワップ)の方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

銀行交渉術の裏ワザ

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)

定期的に銀行と接触を持つ方法 ~円滑な融資のために~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)

メインバンクとの付き合い方

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)

銀行融資の裏側 ~金利引き上げの口実とその対処法~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)

融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける

元榮太一郎の企業法務教室

一覧へ

社内メールの管理方法

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

企業法務教室

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)

タカタ事件とダスキン事件に学ぶ 不祥事対応の原則

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)

ブラック企業と労災認定

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)

電話等のコミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)

女性の出産と雇用の問題

本郷孔洋の税務・会計心得帳

一覧へ

税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」

[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

税務・会計心得帳

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)

グループ法人税制の勘どころ

[連載] 税務・会計心得帳(第17回)

自己信託のススメ

[連載] 税務・会計心得帳(第16回)

税務の心得 ~所得税の節税ポイント~

[連載] 税務・会計心得帳(第15回)

税務の心得 ~固定資産税の取り戻し方~

子育てに学ぶ人材育成

一覧へ

意欲不足が気になる社員の指導法

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

子どもに学ぶ人材マネジメント

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)

子育てで重要な「言葉」とは?

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)

女性社員を上手く育成することで企業を強くする

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)

人材育成のコツ ~部下の感情とどうつきあうか~

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)

人材育成 ~“将来有望”な社員の育て方~

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次なるステージを駆け上がる日本電子「70年目の転進」–日本電子

 最先端の分析機器・理科学機器の製造・販売・開発研究等を手掛ける日本電子(JEOL)は、ノーベル賞受賞者を含むトップサイエンティストや研究機関を顧客に、世界の科学技術振興を支えてきた。足元の業績は2019年3月期で連結営業利益、同経常利益、同最終利益がいずれも過去最高を更新。かつては技術偏重による「儲からない…

独自開発のホテル基幹システムで業務効率化と顧客満足度を向上–ネットシスジャパン

逆転の発想で歴史に残る食パンを 生活に新しい食文化をもたらす–乃が美ホールディングス

新社長登場

一覧へ

森島寛晃・セレッソ大阪社長が目指すクラブ経営とは

前身のヤンマーディーゼルサッカー部を経て1993年に創設されたセレッソ大阪。その25周年にあたる2018年12月に社長に就任した森島寛晃氏は、ヤンマー時代も含めて通算28年間セレッソ一筋、「ミスターセレッソ」の愛称を持つ。今も多くのファンに愛される新社長が目指すクラブ経営とは。聞き手=島本哲平 Photo=藤…

森島寛晃・セレッソ大阪社長

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

イノベーターズ

一覧へ

非大卒就職マーケットの変革に挑む元教師の挑戦―永田謙介(スパーク社長)

日本企業の年功序列と終身雇用が崩壊に向かう中、制度を支えてきた大学生の新卒一括採用の是非もようやく議論されるようになってきた。一方、高校卒業後に就職する学生のための制度は旧態依然とし、変化の兆しがほとんど見えない。こうした現状を打ち破るべく、非大卒就職マーケットの改革に挑戦しているのがSpark(スパーク)社…

起業家にとって「志」が綺麗ごとではなく重要な理由―坂本憲彦(一般財団法人立志財団理事長)

勉強ノウハウと法律知識で企業の「働き方改革」を促進する―鬼頭政人(サイトビジット社長)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2020年5月号
[特集] 巻き込む力
  • ・高岡浩三(ネスレ日本社長兼CEO)
  • ・唐池恒二(九州旅客鉄道会長)
  • ・河野 仁(防衛大学校教授)
  • ・入山章栄(早稲田大学大学院・ビジネススクール教授)
  • ・出口治明(立命館アジア太平洋大学学長)
  • ・中竹竜二(日本ラグビーフットボール協会理事)
  • ・時代も国境も超えた普遍のリーダーシップを学べるベストブックス
[Special Interview]

 小林喜光(三菱ケミカルホールディングス会長)

 イノベーションを起こすために「人間とは何か」を問う

[NEWS REPORT]

◆零細企業でも活用できるインターネットM&A最前線

◆業界再編はあるのか 日本製鉄、巻き返しへの一手

◆技術研究所を解体してホンダは何を目指すのか

◆新型コロナウイルス治療薬 なぜ日本企業は創れないのか

[特集2]

 経営者に贈る「イロとカネの危機管理」

ページ上部へ戻る